10月1日、中国は建国70周年を記念した軍事パレードを天安門広場で行いました。幾つかの新兵器が初登場しましたが、最も注目すべきは世界で初めて公開された極超音速滑空ミサイル「DF-17(東風-17)」です。ロシアの極超音速滑空ミサイル「アヴァンガールト」は存在は公表されましたが滑空翼体の製造過程の部品の一部しか動画に映っておらず、実戦兵器の完成品を公開したのは中国のDF-17が先になります。パレードには16両ものDF-17の移動発射機が登場し、既に実戦配備されていると思われます。
DF-17の弾頭である滑空翼体は胴体それ自体で揚力を生み出すリフティングボディと呼ばれる形状で、大気の上層部を滑空しながら飛行していきます。
参考比較として、今日の軍事パレードで公開されたDF-17極超音速滑空ミサイルと以前の軍事パレードに登場したDF-16短距離弾道ミサイルを比べて見ます。両者はほぼ同じ大きさで、DF-16を元にして弾頭部を滑空翼体にしたDF-17を開発したと推定できます。極超音速滑空ミサイルは上昇までは弾道ミサイルと全く同じで、降下した後に機首を引き起こして滑空に入ります。そのため「極超音速ブーストグライド兵器」とも言います。
DF-17はミサイルが剥き出しですが、DF-16は分割式のミサイルカバーが装着されているので、DF-17も実戦仕様は同様のカバーを装着するかもしれません。その場合、DF-16とDF-17の識別が困難になります。またDF-16は最大射程1000kmと推定されています。DF-17についてはこれまでの予想では射程1800~2500kmという推定もありますが、大きさがほぼ同じであることを考えるとそれより射程は短いかもしれません。
同じくらいの大きさの弾道ミサイルと滑空ミサイルを比べた場合、最小エネルギー軌道(通常の軌道)で弾道飛行する弾道ミサイルの方が射程が長くなります。ディプレスト軌道(低い弾道)の弾道ミサイルと滑空ミサイルを比べた場合は滑空ミサイルの方が射程は長くなりますが、滑空して飛距離を稼げるといっても大気圏上層での空気抵抗の影響が大きいので限界があります。また弾道ミサイルには出来ない利点である旋回による変針を繰り返すことは遠回りするという意味でもあり、旋回は運動エネルギーも余計に消費するので、滑空ミサイルの有効射程は更に短いものとなります。
DF-17極超音速滑空ミサイルはブースター部分がDF-16短距離弾道ミサイルのロケット推進部分と共通の大きさと考えられるので、実用射程は1000km以下、長くても1000km台前半程度ではないかと推定します。但しこの推定値については今後の研究でまた変わってくるかもしれません。
2019-10-01 08:06:00Z
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20191001-00144955/
No comments:
Post a Comment