金正恩は祖父や父以上に「党細胞」を重視している(提供:KNS//KCNA/AFP/アフロ)
北朝鮮では、どうやって人々の不満や要望を吸収しているのであろうか。北朝鮮はトップダウンの圧政というイメージが強い。しかし、圧政ばかりでは、これほど長い間、政権を維持することは難しいはずである。実際には、北朝鮮は1948年の建国以来、朝鮮労働党が政権を維持している。人々の不満や要望を吸収するボトムアップのシステムが存在するから、これほどの長期政権が可能になっていると考えたほうがよいであろう。
「金正恩(キム・ジョンウン)は大統領になるのか?!」の回で論じたように、北朝鮮には自由選挙がない。最高人民会議代議員を選ぶ北朝鮮の選挙制度では1つの選挙区に1人しか候補者がいない。このため、1人の候補者を信任するか信任しないかの選択肢しかない信任投票になる。これが朝鮮労働党の一党独裁を支える制度になっている。この選挙制度では、人々が不満や要望を表明することは極めて困難である。
北朝鮮では、選挙制度で人々の不満や要望を吸収するのではなく、別の制度で人々の不満や要望を吸収している。その1つが朝鮮労働党のシステムだ。それを垣間見ることができるのが、全国にある朝鮮労働党の党細胞の責任者である党細胞書記を選抜して集めた党細胞書記大会である。4月6~8日に第6回「党細胞書記大会」を開催した。
人口に比して非常に多い朝鮮労働党員
党細胞の説明をする前に、朝鮮労働党員であることが北朝鮮の社会においてどういう意味があるのかを説明したい。朝鮮労働党が一党独裁で統治する北朝鮮では、党員でなくては社会の上部層に入れない。党員だからといって必ずしも良い生活ができるわけではないが、少なくとも党員でなくては社会の上部層に上ることは、ほぼ不可能である。
ただし、朝鮮労働党の党員数は人口に比べて非常に多い。同党は、第4回党大会で1961年8月1日時点の党員数を133万1563人と発表して以来、正確な党員数を発表しておらず、現在の党員数は分からない。だが、1960年末の人口を約1078万9000人と発表しているので、当時でも人口の約12%が党員であったことが分かる。
現在の党員数は発表されていない。だが、人口の約25%が党員と推定することができる。2021年1月に開催された第8回党大会では党員1300人当たり1人の代表者を選出するとしており、実際に選出したのは4750人であった。よって、現在の党員数は約617万5000人という計算になる。現在の北朝鮮の人口が約2500万人であることを考え合わせると、党員の割合は約25%となる。
実際には、党員数はもっと少ないと想定されるが、人口に比して党員数が非常に多いことは間違いないであろう。それだけ、多くの人に社会の上部層に上る機会が与えられていることになる。
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