安倍氏の真意は
菅義偉首相の自民党総裁任期が折り返し点を過ぎ、残り半年となった。菅氏は「安倍政治の継承」を掲げて昨年9月の総裁選に圧勝。内閣支持率7割の好スタートを切ったものの、新型コロナウイルス対策にてこずり、安定軌道に乗り切れていない。総裁再選戦略は手探りを強いられ、これと密接に絡む衆院解散・総選挙の判断も迫る。「仕事をしたい」と実績作りを急ぐ菅氏が、その裏付けとなる2021年度予算を仕上げた後、真っ先に訪ねた実力者が安倍晋三前首相だった。(政治部長・松山隆)
場所は、衆院第1議員会館12階の安倍氏の事務所。3月29日午前11時前、首相官邸から道路を挟んですぐ隣にある議員会館に専用車で乗り付けると、さしの会談は約50分間に及んだ。
「先週予算が成立し、4月には訪米しますので、8年間にわたり政権を担われた安倍前総理にお会いして、内政また外交について意見交換をしました」。会談を終え、まっすぐ官邸に戻った菅氏は記者団にこう説明した。「非常に有意義だったと思います」とも語った。
菅氏が二人きりで安倍氏と会うのは就任後2度目。前回は就任から間もない昨年10月1日で、やはり同じ議員会館の安倍氏事務所だった。この時も初外遊として東南アジア2カ国歴訪を控えた時期で、外交を得意とする安倍氏に助言を請うのが目的と受け取られた。だが今回、菅氏には気になる動きがあった。
21年度予算が成立した3月26日。昨年9月の総裁選で菅氏と争った岸田文雄前政調会長が、ツイッターで「安全保障上の喫緊の課題について」と題する提言を発表していた。中国や北朝鮮のミサイルを「直接的かつ喫緊の脅威」と指摘し、「敵のミサイル発射能力そのものを直接打撃し、減衰させる能力を保有することが必要だ」と、いわゆる敵基地攻撃能力の保有を訴えた。
敵基地攻撃能力について、岸田氏は「ハト派リベラル」を旗印とする宏池会(岸田派)会長として臨んだ前回総裁選では「さまざまな複雑な議論がある」と慎重論を唱えていた。無役ながら「ポスト菅」を諦めていない岸田氏は安倍氏を頼りにしており、そのにわかな右旋回に、党内では「安倍氏がやらせたのではないか」と臆測が広がった。
最大派閥細田派の実質的オーナーと目される安倍氏は昨年8月、健康上の理由で退陣を決断した際、菅氏を後継に指名したものの、もともと「意中の人」は岸田氏だった。発信力に乏しく世論の支持が広がらない岸田氏を見放す形での菅氏支持だったが、この期に及んで安倍氏はまだ「岸田カード」を捨てていなかったのか。菅氏が訪米にかこつけて、安倍氏の真意に自ら探りを入れたとしても不思議はない。
からの記事と詳細 ( 解散・総選挙いつ決断 再選戦略、コロナ禍で手探り【政界Web】:時事ドットコム - 時事通信 )
https://ift.tt/3fAkv4U
No comments:
Post a Comment