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Wednesday, October 27, 2021

七五三はいつ、どこで、服装は? しきたり知ってトラブル回避 - 読売新聞

子どもの成長を祝い、健康長寿を願う「七五三」。知名度の高い行事ですが、いざ我が子のために執り行おうとすると、迷うことも多いかもしれません。「着物の準備は誰がする?」「参拝するのはお寺、それとも神社?」などの疑問やしきたりについて、和文化研究家の三浦康子さんに聞きました。

七五三は、平安時代には「髪置かみおき」(3歳)、「袴着はかまぎ」(5歳)、「帯解おびとき」(7歳)という別々の儀式で、時代や階級・階層によって、年齢、日取りなどは様々な形で行われていました。日取りが11月15日になったのは、江戸時代の将軍、徳川綱吉の息子が非常に病弱で、彼が無事3歳になったお祝いを11月15日に行ったからだと言われています。明治時代に現在のような「七五三」の形式になり、戦後に全国的に広まりました。

昔は子どもが乳幼児のうちに亡くなることも多く、「七つ前は神のうち」という考え方がありました。7歳までは何をしても罰は当たらないけれど、この世に魂が定まっていないのでいつ亡くなってもおかしくないと考えられていたのです。7歳まで無事に成長させるのは大変難しかったので、3歳、5歳、7歳の節目に神様に感謝をし、健やかな成長を祈願するようになったのが「七五三」の始まりです。

7歳の「帯解き」は、帯を締めない幼児の着物から、帯を締める着物に変わる儀式で、帯を締めることには、魂をこの世にしっかりとどめる意味も込められているそうです。男の子は5歳の「袴着」のときに、帯を締めます。

覚えておきたいしきたり

一般的な行事になったとはいえ、大人になると自分がどのように七五三を行ったか、忘れてしまう人がほとんどでしょう。現在、主流になっている日取りやしきたりを紹介します。

<日取り>
本来は11月15日ですが、平日であることも多く、都合がつかなかったり、参拝する場所や写真館も混雑が予想されたりするので、前後1か月の間に参拝できればよいでしょう。最近では七五三詣での期間がかなり長い神社もあるようです。

<場所>
本来は、その地域に住む人々を守ってくれる「氏神様」をまつった神社に参拝します。今まで子の成長を見守ってくれた御礼と、今後も健やかな成長を見守っていただけるようにお参りをします。また、神仏習合(神道と仏教を融合調和すること)という文化から、お寺に行く人もいます。最近は、好きな社寺に行く人も増えています。

<着る物>
昔は、女の子であれば母親側の祖父母、男の子であれば父親側の祖父母が着物を用意する場合が多かったようですが、近年は折半やレンタルという場合も。地域や家庭の考え方によって違ってくるので、まずはそれぞれの祖父母に聞き、誰が用意するのか夫婦で意見をすり合わせておくと後々トラブルになりにくいでしょう。

七五三は、和装の一つひとつに意味があるので、できれば着物がよいでしょう。お宮参りで使用した着物を仕立て直し、七五三で着ることもできます。

五つの疑問

七五三の歴史的背景と大まかな考え方を踏まえた上で、よく寄せられる五つの疑問に答えます。

千歳飴と笑顔の子ども
写真はイメージです

疑問1 七五三は、満年齢、それとも数え年でやるもの?
生まれた時を1歳とし、元日を迎えるごとに1つ年を取る年齢の数え方を「数え年」といいます。本来は「数え年」で七五三を行いますが、「数え年」だと子どもの体力的に負担になることがあるので、現在は「満年齢」で七五三をお祝いする人が多いようです。この年代の「1歳」は成長に差があるので、臨機応変に行ってかまいません。きょうだいがいる場合は、上の子は「数え年」、下の子は「満年齢」というように、一緒に行ってもよいでしょう。

疑問2 男の子の「七五三」は何歳のとき?
男の子の七五三は、3歳と5歳の時ですが、近年は、男の子は5歳だけという地域が多いです。昔は、衛生面から男女ともに3歳までは髪をる習慣がありました。3歳の「髪置」は、幼児が髪を伸ばし始める男女共通の儀式で、長寿を願い、白髪になぞらえた白糸や綿を束ねたものを頭上に載せて祝っていました。5歳の「袴着」は、初めて袴を着用する儀式で、「四方を制するように」と碁盤の上で着付けをしたり、四方を拝んでから飛び降りたりする習わしがあります。
 
疑問3 身内からお祝いをもらったらお返しは? 
七五三は身内のお祝い事なので、基本的にお返しをする必要はありません。参拝後の祝い膳の席に招くことがお返しになります。遠方などで、祝い膳にお招きできない場合は、「内祝い」を子どもの名前で贈るとよいでしょう。お礼状に写真などを添えると喜ばれます。祝い膳は、社寺への参拝とは別の日にしてもかまいませんが、七五三のような通過儀礼は、祝い膳を食べてお祝いするところまでが行事だと考えられています。

疑問4 母親、父親の服は何を着ればいい?
子どもが晴れ着なので、保護者もフォーマルに。洋装なら、父親はブラックスーツかダークスーツ、母親はスーツ、またはワンピースがよいでしょう。和装であれば、訪問着や付け下げ、色無地などです。もし和装と洋装で迷ったら、せっかくの機会なので、着物を着てみてください。心残りがないように、納得して行うことが大切です。

疑問5 千歳あめを食べるのに折ってもいい?
子どもが長生きできるよう、あめを長く伸ばしたのが「千歳飴」の始まりです。長寿を願って食べるのに、折ったり砕いたりしたら縁起が悪いと不安になる人もいるかもしれませんが、食べ方に決まりはないので、千歳飴の意味を知り、家族で分け合って食べればよいでしょう。

七五三は、その子にとっておのおの一生に一度しかない行事です。「こうしなければならない」と堅苦しく考えず、子どもの成長を願う親心を大事にして、やりたいこと・できることはやっておいてください。子どもが成長して大人になったとき、こうした親心にしみじみ感謝する日が来ると思います。

(聞き手・読売新聞メディア局 渡辺友理)

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三浦康子
三浦 康子(みうら・やすこ)
和文化研究家

 いにしえをひも解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、「行事育」提唱者としても注目されている。連載、レギュラー多数。私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭もとっている。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、監修書『おうち歳時記』(朝日新聞出版)ほか多数。

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