新型コロナウイルスの感染拡大から約2年。この間、テレワークは普及し、本社を首都圏から地方に移転する「脱首都圏」の動きも進んだ。東京近郊に住んで満員電車で毎日通勤する必要は必ずしもなくなり、働き方は多様になった。政府もコロナ禍を一つの契機ととらえ、税制面から企業の地方移転などを後押しして地方創生に取り組もうとしている。
もっとも、最近はオフィスへの出社率が上昇傾向。地方に本社機能を移せる企業はある程度移転し終わったという指摘もある。長期化するコロナ禍から「アフターコロナ」へ、新しい働き方をめぐる模索はこれからも続きそうだ。(時事通信経済部 金澤俊子)
「脱首都圏」過去最多に
帝国データバンクによると、2021年に本社または本社機能を首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉)から地方へ移転した企業は351社となり、過去最多を更新した。首都圏で企業が転出超過となるのは11年ぶり。テレワークやオンライン会議の普及に伴い、地価の高い首都圏にオフィスを維持する必要性が薄れ、大規模災害時の事業継続の観点からも本社を地方に移転する利点が再確認されたことが背景にあるという。
政府も、コロナ禍前から税制優遇措置を講じるなど、企業の地方移転を後押しする。22年度の税制改正では、企業が本社機能を地方に移転したり、地方拠点を整備したりする際に法人税を減税する「地方拠点強化税制」について、適用要件を緩和して使い勝手をよくした。
テレワークの普及に加え、災害に備えて都内の本社機能を補完する地方拠点の整備が重要だとの判断がある。内閣府の担当者は「税制措置の拡充が、企業の行動をもう一段後押しするインセンティブになればいい」と期待を寄せる。
コロナ禍が後押し
日本ミシュランタイヤ(東京都新宿区)は21年12月、本社を群馬県太田市に移転すると発表した。23年8月までに新宿のオフィスを縮小し、研究開発部門などを置く群馬県太田市のオフィスを拡充する。
コロナ禍前から検討していたが、「コロナが移転を後押しする一つの要素になった」(三輪唆矢佳広報部長)。デジタル化の進展で在宅勤務がしやすくなり、顧客とのミーティングもオンラインでできるようになったことが大きいという。
現在は、社員それぞれがどういう働き方をするのか、上司や同僚らと議論を重ねている段階。テレワーク中心の働き方をしつつ、必要に応じて群馬県の本社オフィスに通勤するようなケースが出てくるかもしれない。
三輪氏は「会社の利益とワークライフバランスを追求し、子育てや介護など、個人の事情に配慮した柔軟な働き方を目指していきたい」と話す。
「100%在宅」は非現実的
果たして、こうした企業の「脱首都圏」のトレンドは今後も続くのか。
帝国データバンク情報統括部の飯島大介副主任は「中小企業を中心に、これまでで本社の地方移転の傾向はある程度出尽くしている」と分析。今後は「大企業・中堅企業の動きが鍵になる」と指摘する。
例えば、コロナ禍の初期に比べ最近は出社率も上昇傾向で、大企業や中堅企業でテレワークがどの程度浸透しているか不透明。このため、企業の「脱首都圏」の先行きは見通せないという。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの大塚敬上席主任研究員は、「コロナ禍の2年でテレワークは相当程度定着した」と指摘する。その一方で、「ほとんどの企業にとって100%在宅勤務というのは非現実的。社員が集まりやすい場所である1都3県の東京圏にオフィスが必要だという状況に変わりはない」との認識を示す。
実際、国土交通省によると、本社機能の地方移転への関心はコロナ禍の影響もあり高まっているが、移転先の候補地は東京23区や一都三県が大半。つまり、「近距離移転」が目立つという。
働く場所は自分で選ぶ
ヤフー(東京都千代田区)は、東京都内に居住する従業員も多く、一部には「オフィスの方が働きやすい」という声もあるため、本社の地方移転については考えていないという。その一方で、22年4月に導入するのが、社員は日本国内のどこにでも居住することができる新制度だ。自宅だけでなく、全国各地で契約するサテライトオフィスなど働く場所を自由に選ぶことができる。
この制度は、柔軟な働き方を実現するために模索し続けてきた取り組みの一つの集大成でもある。14年には、社員が働く場所を自由に選べる「どこでもオフィス」制度を導入。当初は月2回だった制度の利用上限も徐々に緩和し、コロナ禍の20年には利用制限を撤廃した。22年4月からの新制度では、「社員の居住地は午前11時までに出社できる範囲」という制約もなくす。
川辺健太郎社長はこうした取り組みについて「最も生産性の上がる場所で仕事をしてほしいという従来の目的は達成され、感染対策の効果も出た」と手応えをかみしめる。これからも都内に本社オフィスは残しつつ、コロナ収束後をにらみ現在のテレワークを中心とした柔軟な働き方を継続する方針だ。
(2022年3月16日掲載)
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