日本では驚くほど多種多様なお祭りが行われていますが、「喧嘩祭り」と呼ばれるものがあることをご存じでしょうか。お祭りの時に、2基あるいはそれ以上の山車(だし)や曳山(ひきやま)、神輿を壊れるくらいに激しくぶつけ合う場面があり、まるで「喧嘩をしているように見える」ためそう呼ばれています。
なかでも特に、歴史の古さや規模の大きさ、ユネスコの文化遺産登録や国の重要文化財登録などの重要度が高いとされるお祭りは「日本三大喧嘩祭り」に数えられています。
◎角館のお祭り(角館祭りのやま行事)/秋田県仙北市
◎飯坂けんか祭り/福島県福島市
◎伏木曳山祭(けんか山)/富山県高岡市
喧嘩祭りとされるお祭りは数多くあり、そのうちのどれを「三大」と称するかには諸説ありますが、上記の3つが一般的に「日本三大喧嘩祭り」としてよく名前があがります。
そこでこの記事では、上記3つの祭りがそれぞれどんなお祭りか、最新の開催情報もあわせてご紹介しましょう。
角館のお祭り(角館祭りのやま行事)/秋田県仙北市
毎年9月7・8・9日に、秋田県仙北市角館(かくのだて)町で行われる角館のお祭りは、「角館祭りのやま行事」として国の重要無形民俗文化財に指定され、ユネスコ無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」の一つとしても登録されています。
角館は約400年前に開かれ、京都出身の佐竹北家によって長く統治され「みちのくの小京都」の異名を持ち、現在も桜の名所として往時の雰囲気を残す武家屋敷街が有名です。お祭りの始まりもその頃にさかのぼり、神明社と薬師堂の祭りが一緒になったもので、地域の繁栄や家族の無病息災などを祈願して行われます。
18の丁内(町内)から、豪華な武者人形や歌舞伎人形をのせた山車(やま)が若者たちによって曳き廻され、7日は神明社へ参拝。8日には武家屋敷街を通って佐竹北家当主への上覧に向かい、8日と9日には薬師堂に上がります。曳山の上では笛、太鼓、鉦などが「飾山囃子(おやまばやし)」を奏し、女性たちが艶やかな踊りで魅了します。
そして最大の見所は何といっても「やまぶっつけ」でしょう。曳山同士が出会ったとき、どちらが先行するのか話し合う「交渉」が行われますが、交渉が決裂すると実力行使!力の限り曳山をぶつけ合い、祭りのクライマックスにふさわしく曳き手もお囃子も最高潮に達します。角館のお祭りは、華麗な人形飾りや優美な踊りという美しさと、曳山同士の激突による勇壮さをあわせもつお祭りです。
◎2022年は開催される?
新型コロナウイルス感染症の影響により2020年、2021年と実施が見送られていましたが、今年度は事前に策定した感染防止、熱中症防止などのガイドラインに沿って、可能な限り例年通りのかたちで行うことが決定しました。主なスケジュールは下記のように発表されています。
■9/7(水)
10:00〜 神明社例大祭
16:00〜 神明社参拝
18:00〜 神明社例大祭宵宮
■9/8(木)
8:00〜 神明社神輿渡御
10:00〜17:30 佐竹北家上覧
15:00〜 成就院薬師堂祭典開白法要
16:30〜 成就院薬師堂参拝
18:00〜 観光やまぶっつけ(詳細は下記参照)
■9/9(金)
7:10〜 成就院薬師堂御輿巡行
10:00〜 成就院薬師堂参拝
10:00〜 曳山曳きまわし
交渉が決裂した場合に起こる「やまぶっつけ」ですが、観光用に必ず見られる機会が用意されています。今年は以下の時間と場所で予定されています。
【観光やまぶっつけ】激突予定時間(9月8日)
(1)18:00 北部−岩瀬(角館樺細工伝承館前)
(2)19:00 本町通り−菅沢(角館樺細工センター「たてつ」付近)
(3)19:00 横町−西部(横町十字路)
(4)19:00 大塚−東部(旧市役所角館庁舎跡地前)
(5)19:30 駅前−川原町(ファミリーマート角館川原町店付近)
(6)19:30 西勝楽町−中央通り(土間人付近)
(7)21:00 七日町−桜美町(秋田銀行前)
※その他の詳細や最新情報は、田沢湖・角館観光協会公式サイトなどからご確認ください。
飯坂けんか祭り/福島県福島市
福島市郊外北西の飯坂町に位置し、宮城県の鳴子温泉、秋保温泉とともに「奥州三名湯」に数えられる飯坂温泉。ヤマトタケル伝説にも登場し、2世紀頃からの歴史を有する古湯です。そんな飯坂温泉の総鎮守である八幡神社の例大祭が「飯坂けんか祭り」で、五穀豊穣を神に感謝するため、例年10月の第1土曜日を中心に三日間開催されます。
このお祭りは12世紀後半に行われた祭りが起源とされ、江戸時代後期に上町地区や横町地区が屋台(山車の一種)を出して太鼓を打ち鳴らし、神輿と一緒に練り歩いたのが今の祭りの原型になったと伝わっています。
大正末期から昭和初期には他の地区も参加し、屋台のぶつけ合いが始まったのは昭和8年から。祭りの宮入りの際「神社に神輿が納まってしまえば祭りは終わる」という寂しさから、それを防ごうとする2つの屋台がぶつかったことがきっかけなのだとか。
祭礼1日目は、八幡神社で五穀豊穣への感謝と氏子の安寧を祈願する式典が行われます。本祭りは2日目で、神輿が町内を巡幸したのち、夜になると大勢の若衆に担がれた6台の屋台が神輿と共に御旅所を出発。神社の境内に入ると屋台同士は激しくぶつかり合い、打ち鳴らす太鼓の音は絶えることなく轟き、提灯が燃えたり屋台が壊れたりしながらも激突が続く様はひたすら圧巻です。
◎2022年は開催される?
八幡神社のホームページによると、「日程は10月の第1土曜日を中心とした3日間」という記載があるものの、今年、令和4年は1日目の式典を除き、2日目の本祭り、3日目の後鎮祭まですべて未定となっています。また、2日目のメインイベントである宮入り(屋台のぶつけ合い)についても「未定で観覧はできません」となっていますのでご注意ください。
※詳細や最新情報などは八幡神社ホームページの案内などからご確認ください。
伏木曳山祭(けんか山)/富山県高岡市
富山湾に面した高岡市伏木地区。例年5月15日に行われてきた伏木神社の春季祭礼が「伏木曳山祭」です。海上の安全を祈願するこのお祭りは、その名もズバリ「けんか山」の異名を持ち、高岡市の無形民俗文化財に指定されています。
日中は、7つの町内から美しい花傘を広げた花山車(はなやま)が出て、町内を優雅に練り歩きます。それが、夜になると約360個もの提灯を身にまとった提灯山(ちょうちんやま)の姿に変身。
山鹿流出陣太鼓のお囃子とともに、地鳴りを立てながら山車と山車がぶつかり合う「かっちゃ」が始まります。昼間の美しい姿とはまったく違う、勇壮で猛々しい圧巻の光景が最大の見所です。
◎2022年の開催は?
今年、2022年からは担い手の負担を軽くする目的で、2日間に分けて開催されました。日程も5月の第3金、土曜に変更となり、5月20日に神輿渡御と小学生による母衣武者(ほろむしゃ)行列や花山車のライトアップ、21日は神事の後、花山車の巡行とかっちゃが繰り広げられました。
来年の詳細は未発表ですが、2023年5月にはぜひ現地で大迫力の「けんか山」を味わってみてはいかがでしょう。
※詳細や最新情報などは伏木神社例大祭「けんか山」公式サイトまたは伏木神社ホームページなどでご確認ください。
おわりに
勇猛で圧巻の「喧嘩祭り」。なかでも「日本三大喧嘩祭り」とされる3つのお祭りをご紹介しました。
一生に一度くらいは現地でその迫力を体感し、独特の興奮に包まれてみたいものですね。
他にも異説として名前の挙がるお祭りには、
◎灘のけんかまつり(松原八幡神社秋季例大祭)/兵庫県姫路市
…毎年10月14・15日開催。2022年は3年ぶりに通常開催予定。
◎伊万里トンテントン祭り/佐賀県伊万里市
…毎年10月下旬に開催。2022年は10月19日~23日で、本祭は22日(土)~23日(日)の予定。
などがあります。9月~10月に行われる喧嘩祭りが多いので、ぜひお住まいの近くでやっているか確認して、出かけてみてはいかがでしょうか。
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