開志国際(新潟)が悲願の初優勝を飾った。「SoftBankウインターカップ第75回バスケットボール全国高校選手権」(日刊スポーツ新聞社特別協力)男子決勝で、福岡第一に88-71で快勝。5点ビハインドで迎えた第2クオーター(Q)に、1年生PG平良宗龍の4本を含む5連続3点シュートなどで一気に逆転。今夏の高校総体決勝で1点差で敗れた相手にリベンジを果たした。富樫英樹監督(60)は、指揮官9年目で、新潟県に初の冬タイトルをもたらした。

    ◇    ◇    ◇

コートで抱き合い、喜びを爆発させる選手たちを見ながら、富樫監督は小さく右拳を握った。終了2分前から、すでに目は潤んでいた。76-77で逆転負けした夏の悔しさを晴らす17点差の快勝。「どうやって福岡第一に勝とうかと考えてきた。今日はそれが体現できた」とうなずいた。スタンドでは長男で東京五輪代表PG富樫勇樹(29=千葉)が観戦。1回戦負けした昨年は「弱えぇなぁ」と言って帰ったのを人づてに聞いていた。今年はそんなひと言にも“雪辱”する強さを披露。「辛口だから優勝しなかったら、何を言われるか分からない」と笑った。

相手の気持ちを折るような、怒濤(どとう)の連続加点をみせた。22-27で迎えた第2Q。PG平良が“スリーポイント花火”を連続で打ち上げた。2連続で3点シュートを決めると、PG沢田の1本を挟んで再び2連続。富樫監督は最下級生の強心臓ぶりに「頼もしい1年生」とたたえた。

冬を制するまで9年を費やした。中学教員時代は新発田市の本丸中を08、10年と日本一に導いた。開志国際では18年に高校総体を制した。しかし当初は、中学と高校の強化サイクルの違いに対応できなかった。中学では夏の全中でピークを作り、その後は1、2年生の新チームに切り替わる。一方高校では、夏の総体後もウインターカップが控える。「俺が冬に弱かった。高校でも夏以降は新チームのことが頭にあった。ここからどうする? と」。

今年は春先のコロナ禍でチームの熟成が遅れたが、夏準Vの悔しさを糧に選手たちが結束。この日は介川、武藤の3年生コンビも後輩に負けじと計50点をマークした。上級生と下級生がしっかりかみ合い、ついに冬の頂点に立った。

ユニホームの胸に記してあるのは校名ではなく、愛称の「RED TIGERS」。富樫監督が62年の寅(とら)年生まれ。学校創立の14年に1期生として入学してきた生徒の干支(えと)も、大半が98年の寅年生まれ。そしてくしくも今年の干支は寅。赤いトラたちは、冬の決勝のコートで牙をむいた。【涌井幹雄】

▽開志国際・平良(第2Qの自身4連続3点シュートを含め14得点)「先輩たちは失敗しても『打ち続けろ』と声をかけてくれる。このメンバーで優勝したのはうれしい」

▽開志国際・介川(30得点8リバウンド4アシストでチームをけん引)「インターハイで悔しい思いをして、頑張って練習して、高校のバスケットを気持ちよく終えられた」

◆開志国際 2014年(平26)4月開校の共学校。医学科進学、国際進学、国際アスリート、アスリートの4コースがある。主なOBはスノーボードの平野歩夢・海祝兄弟、冨田せな・るき姉妹、プロゴルファーの高橋彩華ら。所在地は新潟県胎内市長橋上439の1。工藤彰範校長