インフルエンザの検査で、のどの画像などを人工知能(AI)が解析して判定する機器が登場しました。従来の方法より患者の負担が軽く済むメリットから、新たな選択肢になりそうです。こうした医師の診断を助ける様々な機器の開発が進み、医療現場で活用されています。(竹井陽平)
画像手がかりに
現在インフルエンザの検査で主流なのは、綿棒で鼻の奥をこすって粘液から検体を採取する抗原検査です。痛みを伴ううえ、刺激でくしゃみをして感染が広がるリスクもありました。
昨年12月、AIを搭載した診断支援機器「ノドカ」が発売されました。患者ののどを撮影した写真約50万枚を基に開発されました。インフルエンザウイルスに感染すると、のどに特有の赤いできものが現れます。AIはこのできものの有無を判定の手がかりにします。画像情報に加え、患者の体温や脈拍、せきやのどの痛みなど問診で得られた情報も読み込ませ、インフルエンザの可能性が高いかどうかを総合的に判定します。判定にかかる時間は10秒ほど。臨床試験で高い精度が確認されました。
ただし、のどの撮影で専用のカメラを口に入れるため、不快に感じる人もいます。6歳未満の子どもへの使用は勧められていません。
大阪府吹田市の小児科医、市森裕章さんは今年1月中旬、市内の小学4年生の女子児童(10)をこの機器を使って診察しました。のどにできものがあり、インフルエンザと判定され、市森さんは治療薬を処方しました。女子児童は「鼻の奥をぐりぐりされるのは痛くて苦手だけど、今回の検査は苦しくなかった」と話しました。
活用範囲拡大へ
開発した医療機器ベンチャー「アイリス」(東京)は今後、ほかの感染症の診断支援や生活習慣病の兆候把握など活用範囲の拡大に向けて、さらに研究を進めるとしています。
ノドカのようなAIを活用した診断支援機器が近年、相次いで実用化されています。内視鏡の画像から大腸ポリープの悪性と良性を見分けるシステムや、脳の断面画像から動脈 瘤 の可能性が高い場所を見つけ出す装置が代表的です。
こうした機器やアプリを活用した治療法などをまとめて「プログラム医療機器(SaMD)」と呼びます。経済産業省によると、SaMDの世界の市場規模は、2027年に865億ドル(約11・3兆円)まで成長すると見込まれています。
しかし、海外と比較すると日本の開発状況は後れを取っているのが現状です。内閣府によると、21年5月時点のSaMD開発に向けた臨床試験の登録件数は、米国で日本の290倍、欧州で110倍、中国で33倍でした。
国も開発の支援や普及に動き出しました。実用化には医薬品医療機器法に基づく厳格な審査が必要です。この審査の簡略化や、判定精度の高い機器を医療機関が導入した場合、診療報酬の引き上げを検討しています。SaMDを開発する企業でつくる「AI医療機器協議会」会長で医師の多田智裕さんは「医師とAIが補い合うことで、より質の高い医療を提供でき、医師の働き方改革にもつながります」と話しています。
からの記事と詳細 ( AIでインフルエンザを判定する機器が登場 どうやって検査するの? - 読売新聞オンライン )
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