夏のこの時期、米国北部とカナダ南部全域に生息するビリーチャツグミたちは、交尾とヒナたちのふ化をほぼ終えている。まもなく、褐色の羽と白いおなかをしたこの鳥たちは、壮大な旅に出る。何千キロもの距離を南下し、メキシコ湾とカリブ海を越えて、南米を目指すのだ。
体重が30グラムほどしかない小さな鳥にとって、それは危険な旅であり、もし移動中をハリケーンに襲われれば、そこで力尽きてしまうものもいるだろう。
しかし研究によると、ビリーチャツグミは地球の気候サイクルをよく知っており、その年のハリケーンシーズンがどの程度危険なものになるかを予知できるという。
2018年7月2日付けで学術誌「Scientific Reports」に発表されたある研究では、米国東部デラウェア州から南米に向かうビリーチャツグミの渡りのパターンが、20年間にわたり、大西洋のハリケーンシーズンの激しさを正確に予知していたことが示されている。天候が悪い年には、ビリーチャツグミは繁殖シーズンを早じまいしていつもより早めに南米へ向かい、天候が穏やかな年には、北米東部にいつもより長くとどまっていた。
「ハリケーンが発生するのは、ビリーチャツグミの渡りと同じ時期です。繁殖シーズンを早めに終えれば、チャツグミは早い時期に南へ向かうことができます。彼らが何らかの方法で天候を予知していると考えると、つじつまが合うのです」と、同研究を主導した米デラウェア州立大学の生態学者クリストファー・ヘクシャー氏は言う。
2023年のハリケーンシーズンについて、ビリーチャツグミがどのような予知をしているのかを判断するのはまだ早いとしつつも、ヘクシャー氏は、最近のハリケーンシーズン4回のうち3回において、この鳥たちは気象モデルと同程度、1回は気象モデル以上に正確に予知したと述べている。
「ビリーチャツグミはどこかからヒントを得ているはずでが、それはまだわれわれが発見していない何かなのかもしれません」とヘクシャー氏は言う。
ほかの渡り鳥にも似たようなパターンが見られるかどうかについてはまだ調べていないものの、おそらく存在するだろうと氏は考えている。
メキシコ湾のような、渡り鳥が羽を休める場所では、すでに多くの調査が行われている。「その調査データの中から、ハリケーンの予知に利用されているシグナルを探せば、おそらく見つけられるだろうと考えています」と氏は言う。
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からの記事と詳細 ( ハリケーンの活動を予知できる渡り鳥、どうやって? 研究 - ナショナル ジオグラフィック日本版 )
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