宇宙に無数に存在する銀河の多くには、その中心部分に太陽の100万倍以上の質量の超巨大ブラックホールがあることが知られています。超巨大ブラックホールは、強い重力によって周囲のガスを集めることで質量を獲得し成長します。そのガスの分布や速度の情報は、超巨大ブラックホールの成長過程を理解する上で非常に重要であるにも関わらず、未解明な点が多く議論が盛んな分野です。
名越俊平 理学研究科日本学術振興会特別研究員(PD)らの研究グループは、超巨大ブラックホール周辺に分布するプラズマガスに、これまで知られていなかった構造を発見しました。本研究では、観測史上最大規模の明るさの変動を示した天体SDSS J125809.31+351943.0の多波長時系列データを使用して、明るさの変動に伴う周囲のガスへの影響を調べました。その結果、超巨大ブラックホール周辺のガスの構造を従来よりも詳細に推定することに成功し、高速で運動している中心部分のプラズマガスが二つの半径が異なるリング状に分布し、性質も異なることを観測的に明らかにしました。この成果は、超巨大ブラックホールの質量測定や宇宙の膨張速度測定の精度向上につながる、宇宙の歴史を知る上で重要な結果です。
本研究成果は、2024年3月4日に、国際学術誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「この研究は、状態遷移という現象を解明することで活動銀河核の内部構造に迫る試みでした。状態遷移とは、天体の見た目が変わる不思議な現象で、その背後にあるメカニズムはまだはっきりとした定説が確立されていない段階です。私たちは、可視光から赤外線、X線に至るまでの幅広い波長のカメラを使って何度もこの現象を撮影しました。その研究過程はまるで手品のトリックを暴くかのような高揚感があり、楽しみながら研究を進めることができました。」(名越俊平)
2024-03-04 05:42:45Z
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