アフリカや中東、アジアなどから、欧州連合(EU)圏を目指して過酷な旅をする人びとの流れが止まらない。しかし、彼らを待ち受けているのはEUによる移民抑止政策の包囲網だ。
地中海で遭難したり、危険な状況にあったりする人びとの救助を続けてきた国境なき医師団(MSF)インターナショナルの会長クリストス・クリストゥは、EUの指導者たちに問いかける。
「一体いつになれば、人道が尊重されるのか」と。
2024年4月10日 欧州議会はEUの新たな移民政策を承認
この政策は、移民・難民の受け入れを厳格化する。これにより、安全を求めてEUを目指す人びとを国境で押し返し、NGOの援助活動を違法化し、国境の管理を危険な国に肩代わりさせることになる。EUに難民申請を行い保護を求める権利は事実上、奪われることになる。
予想される結末は、更なる死と絶望と困窮だ。
リビア、バルカン半島、地中海、ポーランド、ギリシャ、イタリアなど、ますます有害な政策や慣行の実験場となりつつある地域で、MSFは医療活動を展開している。
MSFは欧州をはじめ世界各地で援助活動を続けながら、制約性の高い移民・難民政策と現場慣行が人びとの健康、福祉、尊厳に大きな問題をもたらしていることと、その人的な犠牲を目の当たりにしてきた。
さらに、小舟でリビアから地中海を超えようとする人びとを探して命を救おうとするNGOは、イタリア当局などに救助活動を妨害されてきた。
戦争、迫害、暴力、自然災害、気候変動による緊急事態、極度に拡大する貧富の差や不平等、より良い生活の見込みといった要因が、人びとに故郷を捨てさせている。
EUの対応は、その門前で人びとを苦しめるだけであり、EUに保護を求めようとするアフリカ、アジア、中東の人びとの命が使い捨てにされることを意味している。
暴力的な慣行が、EUの移民政策の根幹に埋め込まれようとしている。EUは、この暴力が根差す避難民と非EU圏からの移民に対する人間性のはく奪と人種差別に、立ち向かう必要がある。
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