東京の名所となった東京スカイツリーは2012年5月に開業、2024年5月には12周年を迎えた。
2023年9月末までに来訪者の総数は4550万人、東京の新名所として定着した。そのタワーはどうやって建てられたか、技術的な工夫、アイディアを当時の現場責任者に聞いた貴重な証言、記録が残っている。
J-CASTニュース内で過去に連載した「J-CASTスカイツリーウォッチ」のうち、スカイツリー建設に携わる人々にプロジェクトの舞台裏を聞く連載企画を再掲載します。
(註)インタビューした方々の年齢、肩書きは、開業当時のままを掲載させていただきます。
【東京スカイツリー建設の技術】第5回:工法で高所作業をなくす、高さの恐怖心をなくす、万が一の安全設備も備える
東京スカイツリーの建設にあたり、もっとも留意することは「高さ」である。300mを越える建物は、日本ではこれまでに経験がない。高い場所での工事は危険をともなうことであるから、どういう注意が必要かなどあらゆる角度から検討を重ねてきた。
「安全に未知の高さのタワーをつくる」を大命題に、高さへの対策は工法計画にも盛り込まれた。たとえば、出来るだけ安全な地上での作業を増やして、地上で組めるものは全て地上で組んでから高所で取り付ける。
足場もユニット化したものを地上で鉄骨に取り付けて引き上げ、作業終了後はタワークレーンで取り外すというやり方をしている。地上でなら気象条件に左右されることもなく、安全に部材を組み上げることが可能だ。これにより、気象条件に影響されず、品質の向上も図れる。
また、ゲイン塔と呼ばれるタワー最先端のアンテナ用鉄塔は、タワー本体鉄骨工事と並行して、タワーのシャフト内部の空洞を利用して地上部で組み立てていく工法をとった。
最上部となる部分から組み立て始め、出来た部分をワイヤーで吊り上げながらその下に鉄骨を継ぎ足していく作業を地上で行い、組み立てが完了した後最先端まで一気に引き上げる方法(リフトアップ工法)で作業を行った。ゲイン塔をリフトアップさせる方法は、品質面・安全面を確保し、かつ並行作業が可能となり工期的に短縮できる。
高さに対する恐怖心も注意しなければならない。恐怖心はよい意味に働くと慎重に行動することにつながるが、一方で体が縮こまってしまうという両面をもっている。
この恐怖心をどうやったら軽減できるか。高所での工事はできるだけ少なくすることと同時に、この「高さ対策」も重要課題であった。
地上から徐々に50m、100m、200m、300mと高さが上がって行くと、人間の体は徐々に高さに慣れてくる。そこで、高さが低い時から作業メンバーを固定し、突然、500mや600mでの作業をするのではなく、同じ作業内容を繰り返すようにした。
その中で、作業手順はより洗練されることとなり、安全性が増していく。同じメンバーで徐々に上がって行くので、恐怖心の軽減につながり、コミュニケーションもとれ、チームワークよく作業を続けることができた。
かつて、作業員はヘルメットこそかぶっているが、安全帯もせず、セーフティーネットも張らないという時代があった。現在は、足場等の安全設備、安全帯の使用に加え、万が一のためにセーフティーネットを張って、作業することを守っている。どのようなことがあっても、カバーできる状況のなかで作業をするというのが重要だ。この数十年で、安全管理の認識はかなり進化している。(続く)
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