懸念された閣僚の「辞任ドミノ」が現実になり、安倍晋三首相は事態の収拾に追われた。政府・与党内には、閣僚が不祥事で次々と辞任し、退陣にまで追い込まれた第1次政権の「悪夢」の再来への危機感がじわりと広がる。5年前の内閣改造でも就任間もない経済産業相と法相が同時に辞任し、盤石だった政権基盤が揺らいだ。首相は令和3年に訪れる自民党総裁の任期満了と憲法改正のスケジュールを見据え、政権の立て直しを急ぐ考えだ。
「国民の信頼を回復して、しっかりと行政を前に進めていくことで責任を果たしていきたい」
首相は31日午前、河井克行前法相の辞表を受理した後、官邸で記者団の取材に応じ、こう強調した。だが、6日前の10月25日に菅原一秀前経済産業相が香典配布問題で辞任したばかりで、政権は1週間で2人の閣僚が辞任する異常事態に陥っている。自民党の閣僚経験者は「第1次政権のような、『嫌な感じ』になってきた」と話した。
平成18年9月に発足した第1次政権では閣僚の不祥事が次々と発覚し、佐田玄一郎行政改革担当相が事務所費問題で辞任したのを皮切りに、松岡利勝農林水産相の自殺を含め次々と閣僚が交代した。産経新聞とフジニュースネットワーク(FNN)の合同世論調査で、発足当初63・9%だった内閣支持率は急落の一途をたどり、自民党は19年7月の参院選で惨敗した。
首相は参院選後に内閣改造に踏み切ったが、不祥事で閣僚が辞任に追い込まれる流れは止まらず、19年9月、体調不良を理由に退陣した。
辞任ドミノを招いたとはいえ、当時とは状況が大きく異なる。厚生労働省でずさんな年金記録が判明した「消えた年金」などで政府を追及していた旧民主党への政権交代を期待する世論があったが、今の野党にそこまでの勢いはない。
24年12月の第2次政権発足以降、辞任した閣僚は河井氏で10人目だ。26年10月には小渕優子経産相と松島みどり法相がそろって辞任した。今回のケースと同様に内閣改造1カ月半後で、ポストも同じだ。第2次政権発足後、最大の危機といえたが、首相は翌11月に衆院解散を断行し、自民党は291議席を得て圧勝した。今回の辞任ドミノも政権運営への影響を見極め、衆院解散のタイミングを練り直すとみられる。(沢田大典)
2019-10-31 10:59:00Z
https://www.sankei.com/politics/news/191031/plt1910310062-n1.html
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