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Friday, February 28, 2020

新型コロナウイルスはなぜ発生したのか、いつ収まるのか『感染症の世界史』著者、石弘之さんインタビュー(Book Bang) - Yahoo!ニュース

2019 年末に初めて確認された新型コロナウイルスの感染者が、増加の一途をたどっています。医学が発達し、衛生面でも格段に向上した現代社会でなぜ、これほどまでに拡大するのでしょうか。『感染症の世界史』の著者、石弘之さんに緊急でお話をうかがいました。

■風邪の原因でもある実は身近なコロナウイルス

――最初に石さんの紹介をしたいと思います。新型コロナウイルスのニュースが増えていますが、石さんと感染症のかかわりは深いものがあります。『感染症の世界史』のあとがきを読んだときの衝撃は忘れられません。

 人間ドックで書類をわたされて、検診の前にさまざまな質問の回答を記入せよという。面倒な書類なのでいい加減に欄を埋めて提出したら、若い看護師さんから「既往歴をしっかり記入してください」とたしなめられた。
 しかたがないので「マラリア四回、コレラ、デング熱、アメーバ赤痢(せきり)、リーシマニア症、ダニ発疹熱各一回、原因不明の高熱と下痢数回……」と記入して提出したら、「忙しいんですからふざけないでください」と、また叱られた。(『感染症の世界史』のあとがきより)

石:ははは。アフリカやアマゾン、中国、ボルネオ島などで長く働いていたので、さまざまな熱帯病や感染症の洗礼を受けました。

 私はもともと環境が専門です。「なぜ環境史研究者が感染症の本を書いたの?」と聞かれることがよくありますが、感染症は環境の変化から流行するというのが持論です。西アフリカのエボラ出血熱の大流行は熱帯林の破壊が原因であり、マラリアやデング熱などの熱帯病は温暖化で広がっています。

 今回の新型コロナウイルスに関していえば、人間がこれほどの過密社会をつくらなければ、彼らも流行を広げられなかったでしょうね。

――その新型コロナウイルスですが、感染経路が不明の感染者が日本国内でも確認されました。

石:感染症は、動物の体内にいたウイルスが一番初めにうつった「ゼロ号患者」から家族や職場や医師などの周辺者、さらに通勤電車や病院内などでの偶発的な感染者を経て、市中感染、アウトブレイク(感染爆発)へと発展していきます。

 今は市中感染がはじまった段階ではないでしょうか( 2 月中旬)。ということは、無症状の感染者やインフルエンザなどと混同された人が、感染を広げている可能性は高いと思います。

――そもそも「コロナウイルス」とはどういったものですか。

石:コロナウイルスはごくありふれたウイルスです。風邪の原因ウイルスは数種類ありますが、私たちが日常的にかかる風邪の 10 ~ 15 %は、コロナウイルスによって引き起こされています。

 コロナウイルスが最初に発見されたのは 60 年ほど前のことです。風邪の患者の鼻から見つかりました。ただコロナウイルスの歴史は非常に長く、遺伝子の変異から先祖を探ると、共通祖先は紀元前 8000 年ごろに出現していたようです。以来、姿を変えてコウモリや鳥などさまざまな動物の体に潜りこんで、子孫を残してきました。

――風邪を引き起こすほど身近なのに、命を奪うほど凶暴なものもいるとは……。

石:コロナウイルスの仲間による感染症は、ヒトに感染してカゼの症状を引き起こす 4 種類と、新型コロナウイルスのように動物を経由して重症肺炎の原因になる 2 種類の計 6 種が知られています。

 感染者を死に至らしめる可能性のあるコロナウイルスはこれまでに 3 回出現し、パンデミック(世界的流行)引き起こしています。最初は 2003 年のSARS(重症急性呼吸器症候群)、次が 2012 年のMERS(中東呼吸器症候群)、そして今回です。ウイルスが世代交代を繰り返しているうちに、突然変異が蓄積して重篤な症状を起こすように変異したのでしょう。

■ヒトは微生物に 1 勝 9 敗

――石さんはご著書『感染症の世界史』のなかで次のように警告していました。

 人間の社会の変化のすきをついて侵入してくる病原体は、それぞれ異なった場所や時期に根を下ろし、その後は人間同士の接触を通じて新たな地域に広がっていく。もしかしたら、第二、第三のSARSや西ナイル熱がすでに忍び寄って、人に侵入しようと変異を繰り返しているかもしれない。(『感染症の世界史』より)

石:ウイルスの唯一の目的は「子孫を残すこと」につきます。地上最強の地位に上り詰めた人類にとって、唯一の天敵が病原性の微生物です。約 20 万年前にアフリカで誕生した私たちの祖先は、数多くの病原体と戦いながら地球のすみずみに広がっていきましたが、とくにウイルスは強敵でした。知られないままに、多くの地域集団が全滅させられたことでしょう。人類の歴史は 20 万年ですが、微生物は 40 億年を生き抜いてきた強者です。

――うーん、ウイルスが強敵といわれても想像がつきません。

石:これまで  1勝 9 敗ぐらいでヒト側の負けが込んでいるのですよ。勝ったのは 1977 年以来発病者が出ていない天然痘と、ほぼ根絶寸前まで追い込んだポリオぐらいでしょう。

 たとえば、1918 ~ 19 年の「スペインかぜ」の世界的流行では 3000 万~ 4000 万人が亡くなりました。近年の再検討では、8000 万人以上ともいわれています。以前も述べたと思いますが( https://ift.tt/2TuSUFI )、とくに第 1 次世界大戦の戦場になった欧州の流行は激烈をきわめ、大戦の終結が早まったほどです。

 その後も、1957 年の「アジアかぜ」、1968 ~ 69 年の「香港かぜ」、どちらも 100 万人以上が亡くなっています。

 アメリカでは現在、インフルエンザが大流行していて、アメリカ疾病対策センターは、少なく見積もっても 2600 万人が感染し、死者は少なくとも 1 万 4000 人と発表しています。( 2 月 19 日CNNニュース)。日本でもインフルエンザで、毎年、数千人が命を落としていますし、はしかや風しんの流行も止められません。

――ウイルスに意識を向けたことがないので気付きませんでした。

石:ヒトと微生物の戦いは、まさに「軍拡競争」です。ヒト側がワクチン、新薬などを繰り出せばウイルス側は変幻自在に変異して、せっかく獲得したヒトの免疫をかいくぐり、薬剤に耐性をもつウイルスで攻めてきます。

 現在、世界中でウイルスの検査法の開発やワクチンづくりが行われていますが、できあがったころには、ウイルスの方はさらに進化して、ワクチンが効かなくなっているかもしれません。

――今後も、今回の新型コロナウイルスのような新型の感染症は登場しますか。

石:ヒトと微生物の戦いは未来永劫つづくものだということは、『感染症の世界史』をお読みいただければ、その理由がわかると思います。

 私たちは、過去に繰り返されてきた感染症の大流行から生き残った「幸運な先祖」をもつ子孫であり、その上、上下水道の整備、医学の発達、医療施設や制度の普及、栄養の向上など、さまざまな対抗手段によって感染症と戦ってきました。それでも感染症がなくなることはありません。

 私たちが忘れていたのは、ウイルスも 40 億年前からずっと途切れずにつづいてきた「幸運な先祖」の子孫ということです。しぶとく生き残ってきたヤツらなのです。

■ウイルスは普段、どこにいるの? 

――ところで 40 億年も生き抜いてきたウイルスたちは、普段はどこにいるのですか。

石:多くのウイルスは、野生動物、家畜、そして人の体の中に潜んでいます。たとえばオオコウモリからは 58 種類のウイルスが発見されていて、「病原体製造器」といわれています。

 全体の数は明らかになっていませんが、既知の脊椎動物 6 万 2000 種がこれぐらいのウイルスをもっていると仮定すると、少なくとも 360 万種ものウイルスがいることになります。

 ウイルスは、ありとあらゆる生き物に入り込んでいます。近年、ほかのウイルスに感染するウイルスも見つかっています。むろん、人間に悪さをするのはごく一部ですが。

――では、新型コロナウイルスは、どこにいたのでしょうか。

石:キクガシラコウモリが持っていたウイルスの疑いが強いです。このコウモリは日本にも生息しています。それがほかの動物を経由して人に感染しました。ゲッシ類、タヌキ、ヘビ、アカゲザル、犬猫などからも同じウイルスが分離されており、仲介役はまだわかりません。

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