合法に違法行為が行なわれたら、当事者はいったいどうすればいいのでしょうか…。
西オーストラリア州の文化的に重要な遺跡が5月、鉱山の拡張工事中に破壊されました。ビックリするのは、この破壊行為は州の許可を得て行なわれたんですよ。オーストラリアの遺産保護法が荒唐無稽だってことを露呈してしまいました。
一体何が起こった?
爆発によって破壊されてしまったのは、西オーストラリア州のピルバラ地域にある第1ジュカンと第2ジュカンの岩窟住居で、4万6000年以上前に先住民が暮らしていた、オーストラリア最古の遺産のひとつ。こんなのもう、ニュース自体が壊滅的です。この遺跡の伝統的な所有者であるプウトゥ・クンティ・クラマ族とピニクラ族(PKKP)や、これまで十分な調査を行なっていなかった考古学者にとっては、大きな文化的損失になってしまいました。
鉱山を運営するリオ・ティントは、ジュカン渓谷に隣接する第4ブロックマン鉄鉱石鉱山を拡張するために、鉱区を破壊したそうです。この話でイラッとするのは、リオ・ティントが2013年にオーストラリアのアボリジニ遺産法の第18条に基づいて大臣の承認を得ていたため、採掘が合法だったという点です。
発掘作業によって、重要なモノが発見されていたのに…
リオティント社は2014年、重要な考古学的物質を岩盤シェルターから回収するための調査に資金を提供しましたが、現地紙WAtodayによれば、その発掘作業で予想以上に重要なものが発見されたとのこと。これらの発見物には、古代の杵打ちや砥石、約2万8000年前にカンガルーの骨から作られた道具や、4,000年前に人間の髪の毛から作られたベルトなどが含まれていたそうです。ベルトから検出されたDNAによって、PKKPの伝統的な所有者とのつながりが確認されています。
調査結果の詳細を記した報告書は今年後半に発表される予定で、今回爆破された岩窟住居の重要性を強調するとともに、他の遺跡のさらなる調査がいかに重要かを訴えるものになるだろう、とWA Todayは報じています
PKKP土地委員会のジョン・アシュバートン委員長は声明の中でこう述べています。
ここはピルバラ高地にある遺跡の中では、最古の遺跡のひとつであり、詳細な調査が行なわれてこなかった地域の豊かな風景の一部です。オーストラリアには、ここまで古いアボリジニの遺跡は数えるほどしかありません。考古学的な研究からも、ハマーズリー高原西部だけでなく、ピルバラや国内のあらゆる地域の中で、最も早くから人が住んでいた場所のひとつであることがわかっています。その重要性を過小評価することはできません。
こういった最近の調査結果にもかかわらず、国の許可を得たうえで予定どおり爆破を行なったリオ・ティントは、PKKPの人々を大いに落胆させてしまいました。
「私たち一族は、岩窟住居が破壊されたことに困惑と悲しみを感じています。また、土地だけでなく、私たちの祖先とのつながりを失ったことを嘆いています」とアシュバートン氏。
ディーキン大学のサマンサ・ヘップバーン法学部教授は、The Conversationの中で、ジュカンの岩窟住居は、オーストラリア内陸部において最終氷期の人間活動を記録した唯一の遺跡であると述べています。
ヘップバーン氏はこう書いています。
コミュニティ生活と文化的アイデンティティは、アボリジニの文化遺産で基本的な部分を担っています。それは世界的にも重要な意味を持っていて、すべてのオーストラリア人の遺産にとって重要な構成要素になっています。しかし、文化的に重要なアボリジニの遺跡の破壊は、特異な出来事ではありません。リオ・ティントは法律の範囲内で行動していたんです。
そのうえで、彼女は次のように付け加えています。
アボリジニの聖地を軽視していることは、保護措置を適切な時期に講じなかったことからも明らかです。
リオ・ティント広報担当者のコメント
この破壊的な事件の後に発表された声明の中で、環境破壊を行なって非難を受けることが珍しくもないリオ・ティントは、この件について後悔や遺憾の意は一切表明していません。
リオ・ティントの広報担当者はAFP通信にこう語っています。
リオティントは、PKKPの人々との協力の下で様々な遺産問題について建設的に取り組み、可能な限り遺産への影響を回避して、PKKPにとって文化的に重要な場所を保護するために事業活動を見直してきました。
同社は5月15日に予定されていた爆破について地元のアボリジニ土地委員会に警告していましたが、同委員会は「爆破を止めるために鉱山会社と交渉しようとしたが失敗した」とAFP通信に述べています。
法律は「時代遅れで、非効率的で、効果がない」
ヘップバーン氏によると、アボリジニの遺跡を保護するうえでの問題のひとつとして、多くの古代先住民の遺跡が国家遺産として正式にリストアップされていないことを挙げています。もっと端的に言うと、同氏はこの問題を時代遅れも甚だしいオーストラリアの法律のせいだと主張しています。
アボリジニ遺産法のある条項では、現在、大臣の同意なしにアボリジニの遺跡を破壊することは違法とされているのですが、別の条項では、土地所有者が遺跡を破壊することを認めています。しかし、さらに別の条項では、土地所有者がこういった制限を覆すための同意を申請できるようになっていて、今回はリオ・ティントがそれを利用しました。さらに、ヘップバーン氏によると、この法律は伝統的な所有者や人類学者との協議を必要条件にしていないのだそうです。つまり、現時点での土地所有者がやりたい放題できちゃうってこと。法に抜け穴があるどころか、法が丸ごと穴なんじゃ…。
NITVの報道によると、アボリジニ担当大臣であるベン・ワイアット氏は、この法律を「時代遅れで、非効率的で、効果がない」と評しています。
アボリジニ遺産法は現在見直し中ですが、第1ジュカンと第2ジュカンの岩窟住居がなくなってしまったPKKPの人たちにとっては、なんの慰めにもなりません。願わくば、この悲しい出来事が痛ましい時代遅れの法律を改正し、将来的にさらなる文化的・考古学的犯罪を防ぐための警鐘となることを願っています。
2020-07-05 14:00:54Z
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