「はやぶさ2」と比べると…
米国版「はやぶさ」というと失礼かもしれませんが、NASA(米航空宇宙局)の探査機「オシリス・レックス」がさる10月21日午前7時10分過ぎ(日本時間)、地球から3億キロ以上離(はな)れた小惑星(しょうわくせい)「ベンヌ」への着陸を試み、成功しました(図1)。
「オシリス・レックス」は21日午前2時半すぎに、「ベンヌ」の上空770メートルから降下を始めて着陸。ロボットアームの先に取り付けた装置(TAGSAM)が地面に接触(せっしょく)し、先端(せんたん)から窒素(ちっそ)ガスを噴射(ふんしゃ)、舞(ま)い上(あ)がった表面の石や砂などを採取しました。
小惑星からの試料の採取成功は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「はやぶさ」「はやぶさ2」に続いて3例目となりました。予定される2023年9月に地球に帰還(きかん)すれば、そのサンプルの分析(ぶんせき)を通じて、太陽系の進化や生命の起源などについて極めて貴重な情報をもたらすことでしょう。
「オシリス・レックス」は、16年に打ち上げられました。「はやぶさ2」が約600キロなのに対して約2トンと3倍以上あります。探査機本体のサイズも、「はやぶさ2」が縦1.6メートル、横1メートル、高さ1.25メートルなのに対して、「オシリス・レックス」は縦2.4メートル、横2.4メートル、高さ3.1メートルと大型になっています。
「はやぶさ2」がターゲットにしたリュウグウと「オシリス・レックス」が訪れたベンヌは、どちらも地球と火星の間の軌道(きどう)を回っている小惑星です。「リュウグウ」は直径がおよそ900メートルで、炭素が比較的(ひかくてき)多い隕石(いんせき)に似た特徴(とくちょう)をもっているC型小惑星なのに対し、「オシリス・レックス」が着陸した「ベンヌ」は直径がおよそ500メートル。C型小惑星に似ているものの、構成する成分が少し異なると考えられるB型小惑星に分類されています。
リュウグウとベンヌを比較(ひかく)してみましょう(表、図2、図3)。
どちらもそろばん玉のような形をしていて、生命にとって必要な水や有機物を含(ふく)んでいます。二つの小惑星を比較することで、地球生命を生んだ水や有機物の起源の解明につながるため、JAXAとNASAとは、さまざまな協力の態勢をとり、それぞれが持ち帰ったサンプルの一部を交換(こうかん)する約束をしています。
「はやぶさ2」は12月6日に地球に帰還する予定で、現在帰路を急いでいます。「オシリス・レックス」ともども帰還に成功して、早く連携(れんけい)した分析が開始されるといいですね。今からとても楽しみです。
的川泰宣(まとがわやすのり)さん
長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍(かつやく)してきた「宇宙博士」。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉(めいよ)教授。1942年生まれ。
日本宇宙少年団(YAC)
年齢・性別問わず、宇宙に興味があればだれでも団員になれます。 http://www.yac−j.or.jp
「的川博士の銀河教室」は、宇宙開発の歴史や宇宙に関する最新ニュースについて、的川泰宣(まとがわやすのり)さんが解説するコーナー。毎日小学生新聞で2008年10月から連載(れんさい)開始。カットのイラストは漫画家(まんがか)の松本零士(まつもとれいじ)さん。
2020-10-30 21:00:18Z
https://news.google.com/__i/rss/rd/articles/CBMiOWh0dHBzOi8vbWFpbmljaGkuanAvYXJ0aWNsZXMvMjAyMDEwMzEvZGJnLzA0OC8wNDAvMDAyMDAwY9IBAA?oc=5
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