緊張が続くウクライナ情勢をめぐり、米政府が大使館職員の家族にウクライナから退避するよう命じた。ロシアが軍事侵攻にいつでも踏み切れると警戒しての判断だが、ウクライナ政府や欧州連合(EU)の現状認識とは温度差もある。
23日に記者会見した米国務省高官は、退避命令を出した理由について、バイデン大統領の発言を引用するかたちで「ロシアの軍事行動はいつ起きてもおかしくない」と説明。「特にウクライナの国境沿いにおいては、短期間で治安状況が悪化する可能性がある」と述べた。ロシアのプーチン大統領が軍事侵攻の決断を固めているかは不明だとしつつ、「彼が国境沿いに軍事力を増強し、いつでもその選択肢を使えるようにしているのは明らかだ」とした。
昨年8月、アフガニスタンからの米軍撤退の際には、米政府は大使館職員や現地通訳らの退避開始が遅れたとして大きな批判を浴びた。当時は、退避が早すぎるとアフガン政府の崩壊を招く誤ったメッセージにつながるとの懸念が判断を遅らせる要因となった。
米国が警戒を強めるのは、外交協議に応じつつもロシアが軍事圧力を弱めないためだ。ウクライナ国境に結集させた10万人規模のロシア軍に撤収の動きはなく、新たにウクライナと隣接するベラルーシでの合同軍事演習を発表し、同国にも部隊を送り込んだ。
欧米側は、ロシアが軍事侵攻に出れば厳しい経済制裁で対抗すると牽制(けんせい)するが、本当に経済制裁でロシアを抑止できるのか疑問視する声もある。米国は有事に備え、軍事面での抑止力も強めたい考えだ。
昨年12月には、ウクライナへの2億ドル(約227億円)の軍事支援を承認し、今月22日から防衛軍備品が空路で現地に到着し始めた。また米メディアによると、米国務省の承認を得て、バルト3国は対戦車ミサイルや地対空ミサイル「スティンガー」など米国製の軍備品をウクライナに供与するという。
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