世界で唯一、北海道・帯広市で開催されているばんえい競馬。レース開催を支える馬場管理という仕事を知っていますか?
今回は、ばんえい競馬で馬場管理の仕事をされている山岸さんにお話を伺いました。事務から現場整備まで多岐にわたるという馬場管理の仕事とは。
山岸央(やまぎし・ひろむ)。1990年生まれ。北海道帯広市出身。十勝管内のJA(農業協同組合)に勤務後、2018年から現職。
新鮮な気持ちで長く続けられる仕事
北海道Likersライターたてかわ:馬場管理とはどのような仕事なのでしょうか。
山岸さん:馬場管理という名前ではありますが、庶務課をイメージするとわかりやすいかもしれません。コース整備や馬の個体照会、記録など、現場から事務まで幅広い業務を担当しています。車の整備が得意なら走路整備に使うトラクターを点検する係、体力に自身があるなら馬の後ろをついてレース状況を記録する係(走路監視)、事務が得意ならば馬の入退厩日数の記録係といった具合に、何かしら得意なこと、好きなことがあればフィットする仕事がきっとあると思います。何年いても色々なポジションをこなすことで、新しい気持ちで楽しく仕事ができるのは馬場管理の面白いところです。
北海道Likersライターたてかわ:山岸さんは、現在どのような仕事をされているのでしょうか。
山岸さん:私はどちらかというと馬に直接関わる仕事が多いです。開催日の土、日、月曜日には、馬が出走前に準備する待機場所である装鞍所(そうあんじょ)の責任者をしています。馬は自己紹介をすることができないので、旋毛(せんもう)というつむじのようなものや、顔の白斑の形などの特徴を書いたカードを基にして、獣医さんと一緒にその馬がレースに登録された馬と同一の馬であるか一頭一頭検査(個体照会)します。確認が取れたら馬体重を測定し、馬具の装備を許可した後、馬体重を公表します。
パドックでの号令も行い「この周回が終わったら本馬場入場ですよ」といったことを伝えています。騎手の落馬や放馬*など、パドックで事故が起こったときには私たちが対処しなければなりません。レース後、馬のドーピング検査のため尿を取るので、採尿所での事務作業や検体の採取も行っています。他にも、トラクターでコースを整備したり、走路監視のフォローもしています。
開催日以外は、練習用走路の整備や開催日に向けた事務作業を行います。
*競走馬が騎手を振り落として逃げたり、コース外に逃げたりすること
経験に基づく膨大なデータ
北海道Likersライターたてかわ:一頭ずつ個体照会するとのことですが、似ている馬もいるなか識別するのは大変なのではないでしょうか。
山岸さん:今は約700頭が所属していますが、ばんえい競馬のレースは毎回ほとんど同じメンバーで出走するので、大体覚えてしまうんですよね。この2頭は似ているけれども、この馬はここに特徴があるといった感じです。経験がものをいう仕事であって、経験していないと任せられない仕事でもあります。それでも年間1,500レースくらいあって、1レースあたり10頭出走すると、とんでもない数のデータが頭の中に刷り込まれていくので意外と覚えられるものです。
北海道Likersライターたてかわ:馬場管理の仕事をしていて、大変だなと思うことはありますか。
山岸さん:馬と間近で接するので常に緊張感を持つようにしています。ばん馬は温厚といわれているとはいえ競走馬。噛みつきにくる馬もいれば、前脚で蹴ろうとしてくる馬、人間の足を踏もうとする馬もいますから注意しなければいけません。慣れてきたからといっておざなりにすると、怪我を招き、主催者や調教師さん、厩務員さん、そして何より馬と良い関係を築くことができなくなってしまいます。そういった面で気配りが大変かなと思います。
いつでも頼ってもらえる存在に
北海道Likersライターたてかわ:どんなことにやりがいを感じますか。
山岸さん:何もないことが一番ではあるのですがトラブルをうまく対処できたときや、円滑にレースが進んで1日が無事に終わるとホッとします。その瞬間がやりがいを感じるときなのかもしれません。
北海道Likersライターたてかわ:仕事をするうえで心がけていることはありますか。
山岸さん:厩舎の方々とのコミュニケーションを大切にしています。普段から会話をして、何かあったら私たちを頼ってくれるような関係を築きたいです。常々感じるのは、厩舎の方々は馬のことをよくわかっているということ。この馬は噛むからね、脚出してくるから気をつけてねと教えてくださいます。我々は馬と常に接しているわけではないので性格のことまではわからない。一頭一頭性格を捉えている厩舎の方々はすごいなあと思います。
北海道Likersライターたてかわ:最後に、ばんえい競馬やばんえい競馬に関わる仕事に興味を持っている方たちにメッセージをいただけますか。
山岸さん:私自身はもともとばんえい競馬に詳しかったわけではなく、転職を機に偶然この仕事に就くことになりました。帯広出身ですが、実は帯広競馬場に来たことさえなかったんです。でも、働くうちにばん馬たちのダイナミックな迫力やドラマティックなレース展開に心をつかまれるようになりました。主催者側、厩舎側という垣根を超えて、関わる人全員でばんえい競馬を良いもの、魅力的なものにしようと日々同じ方向を向き歩んでいます。ともにばんえい競馬をより良いものにしていきたいと思う人がいたら、ぜひばんえい競馬に関わる仕事に携わってもらえたら嬉しいです。
ーーー馬場管理の仕事は想像していた以上に幅広く、馬場管理の方々がいなければレースは成り立たないと強く感じました。ばんえい競馬を観戦するときは、馬場管理の方々にも注目です。
連載「ばんえい競馬ではたらく人」では、ばんえい競馬を支える仕事に就くさまざまな人の魅力に迫ります。連載記事一覧はこちらから。
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