名古屋大学や東京大学などの国際研究チームは、米航空宇宙局(NASA)の磁気圏編隊観測衛星(Magnetospheric Multiscale:MMS)編隊の観測データから、宇宙空間において、電子が「ホイッスラーモード波動(電磁波に分類されるプラズマ波動の一種)」にエネルギーを受け渡していることを示す物理量を観測。電子から波動へのエネルギー輸送率を直接計測し、波動の成長率を観測に基づいて導出することに成功した。
研究チームは、2016年12月25日に高度約5万4000キロメートルで起こった磁気リコネクション付近におけるプラズマ波動に対する、MMS編隊によるエネルギー電子計測装置と電子ドリフト計測器の計測データを解析した。電子の観測データを極限(200マイクロ秒)まで分解する工夫をし、その観測データと電磁場の観測データに対し、「波動粒子相互作用直接解析」の手法を適用。その結果、数100電子ボルトのエネルギーを持った電子の一部に、特徴的な不均一(ジャイロ非等方)が生じていることを検出した。
ジャイロ非等方はサイクロトロン共鳴速度付近に限定して見られ、研究チームによると、サイクロトロン共鳴過程で粒子が失った分のエネルギーがプラズマ波動に供給されていることを示すものだという。同チームはさらに、観測結果が、「非線形成長」と呼ばれる効率的な波動成長が起こっていることと整合していることを示した。
ジャイロ非等方を生成しやすい条件は非線形理論で示されているが、発生する非等方性の程度については予測が困難とされている。今回の研究で、観測可能な程度に顕著なジャイロ非等方が生じることが初めて観測で実証された。
研究論文は2022年10月28日付けで、科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)にオンライン掲載された。
(中條)
2022-11-02 20:55:51Z
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