「『止まれ』の文字がかすれて危ない」。声を上げたのは、この春に横浜市立東市ケ尾小学校を卒業した饗場(あいば)浩太君(12)。青葉区市ケ尾で生まれ育ち、「この街が好きで、誰も事故に遭うことのない、安全な街にしたい」と願いを込めた提案文が、「追う! マイ・カナガワ」取材班に届いた。読者からも同様の声があり、地域の思いに後押しされた記者は調査に乗り出した。
かすれた止まれの標示があるのは、青葉区市ケ尾の同学校近くの市道交差点。饗場君と担任の猪爪朋子先生と、卒業前のある日の夕方に訪れた。「この道は裏道として使われていて、細い割に交通量が多く、速度も出ている」と猪爪先生が話せば、饗場君も「車からは見えにくいし、危険を感じていた」と訴える。
同区内で児童合唱団の顧問を務める行政書士の小竹一臣さんからは、同区桜台の横断歩道の補修を県警にお願いしてから実施されるまで約2年かかったという話も舞い込んでいた。雨が降った日にはほぼ見えなくなっていて、「かなり危険だった」という。
人通りや危険性考慮
まずは、担当エリアの県警青葉署に聞いてみた。「遅くとも6月末までに補修が予定されている」ということだった。続いて、補修されるまでの経緯をかつて補修を担当していた県警の男性に尋ねてみると、「交通規制に関する標示などは各警察署から上申を受けた本部が優先順位を付けて計上し、県議会の承認を経て発注する」という。
どうして補修に時間がかかるのだろうか。「交通規制担当者が交通総務係に属していることが挙げられる」と男性は話す。免許申請の対応などの仕事もこなす必要があり、補修などに手が回らないという。加えて、交通規制担当者が大規模の警察署以外では、ほとんど1人体制という。
補修では、誤発注や不適切な規制を作ったり維持したりすることを防ぐために各警察署で現地調査を実施する。男性は「時間がかかる現地調査も2人いれば効率よくこなせるはず」という。
県警交通規制課に取材すると、こうした現場の多忙解消と、県民からの要望の多さを踏まえ、道路標示の補修の予算はこの10年で増加傾向。また、かすれ具合などの現地調査を業者に委託もしているという。調査をもとに同課が通学路であるかどうかや人通りの多さ、事故の危険性などを考慮し、補修の優先順位を決める。
白線プロジェクト
また、黒岩祐治知事は県内全部の道路のデータをもとにして、カメラを搭載した車を走らせ、人工知能(AI)を使いどの白線が消えかかっているかリアルタイムで把握し、きめ細かく対応していくという「白線プロジェクト」実現を、知事選の公約に掲げた。県警も「県側と連携を深めていきたいと話している」とし、期待感は高まる。
都内はどうだろう。担当していた県警男性から「東京側はきれいに白く塗られている標示が多い印象だ」という話を聞き、体制が違うのかもしれないと考え、警視庁に取材した。
警視庁によると、止まれや横断歩道などの標示については交通課交通規制係が是非の判断や必要な手続きをし、業務量に応じて3~7人程度が配属されているという。神奈川県警と違い、体制が充実していた。
さらに取材を進める中で記者が驚いたのは、看板などの標識は法律上設置が定められているが、道路上に記された止まれの文字については注意喚起などを目的とし、法定外表示ということだった。そのため、県外の寒冷地などではスリップしやすいなどの理由で道路に標示しないケースもあるという。しかし、事故を未然に防ぐことや注意喚起のためにも、道路標示は基本的に必要なはず。今後も補修のスピードがもっと上がることを、饗場君ら地域住民と願っている。(伝 就介)
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