JR東海や東京メトロが新たに自動運転の開発を発表する中、開発を始めてから7年目に入るJR九州は、運転士の乗務を前提にした自動列車運転“支援”装置の走行試験を新たに始めた。運転士ではない係員が乗ることを前提にしていた当初の目標からは後退したように見える。
この3月、鉄道各社が相次いで自動運転への取り組みを発表した。JR東海は東海道新幹線で2028年をめどに自動運転を始める。引き続き運転士は乗務するが、運転操作の負担が軽減されるという。これを受け、今から約10年後の完了を見込む全駅のホームドア整備を待って、車掌業務の一部を運転士に肩代わりさせる方針だ。ホーム上の安全確認やドアの開閉を運転士が行い、車掌は車内の巡回や乗客に対する案内に徹することが想定される。
東京メトロは25年度から、丸ノ内線で営業運転終了後に自動運転の実証実験を始める。丸ノ内線ではすでに車掌がいないワンマン運転を行っているが、自動運転の実現で、列車の先頭に運転士ではなく車掌を乗せることを目指すという。
自動車の自動運転に「レベル0」から「レベル5」までの6段階の基準があるように、鉄道の自動運転にも「GoA(Grade of Automation)」という国際的なレベル分けがある。最も自動化が進んだレベルは「GoA4」で、係員が乗っていない無人運転を指す。日本では1981年に神戸市で開業した新交通システム「ポートライナー」で実用化され、大阪市の「ニュートラム」、東京都の「ゆりかもめ」など新交通システムでは一般的になっている。
JR東海の取り組みは「GoA2」に当たる。運転士が残るため「半自動運転」という位置づけだ。では運転士ではなく車掌が運転台に乗る東京メトロの目標はどうか。レベルでは「GoA2.5」という中途半端な名称になる。国際的に事例がないため、旅客案内の添乗員だけが客室に乗る「GoA3」との中間として便宜的に名付けられた。
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