Windows 10のサポートが、2025年10月に終了する。使っているパソコンがハードウェアやファームウェアの要件さえ満たしていれば、Windows 11への無償アップグレードが可能だ。Windows 11へのアップグレードにはどのようなメリット・デメリットがあるのか。この記事ではセキュリティの観点から移行のポイント、注意点を解説する。
Windows 11へのアップグレードは必要か
Windows 10のメジャーアップグレードのOSと位置付けられるWindows 11が、2021年10月5日に正式にリリースされてから約1年半が経過。Windows 11は原則として、Windows 10をインストールしているパソコンで、ハードウェア、ファームウェアが基準のスペックに該当しているものであれば、無償でアップグレードできる。
しかし、OSのシェアなどを確認できるStatCounterの統計によれば、2023年3月末時点では、最新OSであるWindows 11のシェアは約20%と少しずつ増えているが、今なおWindows 10が約73%と多勢を占める。この値はStatCounter以外の調査においても同様の傾向を示しており、Windows 10が現在も優勢という認識でほぼ間違いないはずだ。
Windows 10は2015年にリリースされた当時、「最後のバージョン」と言われてきた。というのも、「Windows as a Service」というコンセプトが設定され、Windows 10では年に2回の大型アップデートに加え、毎月の品質向上のアップデート、そして随時行われるセキュリティアップデートで定期的な改善が見込まれていたためだ。
しかし、マイクロソフト社はWindows 11をリリースするという判断に至った。リリースと同時に、Windows 10のサポートは2025年10月14日に終了する予定とした。そのため、Windowsユーザーは、サポート終了のタイミングまでにはパソコンのOSをWindows 11にアップグレードすることが求められる。
しかし、今なおWindows 11へのアップグレードに対して、不安を抱えているユーザーは少なくないだろう。あるいは、アップグレードする必要性を感じていないユーザーも多いのではないだろうか。
Windows 11もリリースから1年超が経過。メジャーアップデートによってバージョンも2H22(2023年3月末時点)となっており、安定的に利用できるよう改善が進んでいる。また、パフォーマンスの改善や新機能追加などといったメリットも少なくない。
Windows 11へアップデートするメリット
Windows 10から11にアップデートすると、以下のようなメリットがある。
1)パフォーマンスの改善
Windows 11ではこれまでの端末を利用する場合でも、高速かつスムーズな動作が期待できる。より効率的に端末のリソースを利用することで、Windows 10よりも高速に動作することを目指しているのだ。ただし、ソフトウェアやネットワークなどの環境に左右される部分も少なくないため、アップデート時には、実際に主目的とする利用用途で高速化されるのかを事前に調査、確認しておくようにしたい。
2)新機能の追加
Windows 11における主な新しい機能として、タスクバーの改善、仮想デスクトップの強化、そしてMicrosoft Teamsの統合などが挙げられる。
3)セキュリティの強化
セキュリティ上の強化もWindows 11の大きなポイントだ。主に以下のような点でセキュリティが強化されている。
- TPM(Trusted Platform Module)2.0サポートによるデバイス内機密データの暗号化
- セキュアブートを用いた、悪意あるプログラムによるシステムの侵害防止
- Windows Hello生体認証機能の改良
加えて、Windows 11では自動更新プログラムの強化、セキュリティ設定のシンプル化、およびリスクを最小限に抑えるためのセキュリティポリシー改善といったセキュリティ強化機能も提供されている。また、最新版アップデートの「22H2」版では、悪意のあるアプリや信頼されていないアプリをブロックする新しいセキュリティ機能、スマートアプリコントロールという機能も追加されている。
Windows 11アップグレード時のチェックポイント
先述のとおり、Windows 10をインストールしている端末で、Windows 11に必要なスペックを満たしているものであれば、無償でアップグレードが可能だ。最低限必要なスペックはメモリー4GB以上、ストレージが64GB以上で一定の空き領域が確保されているものとなる。
CPUについては、マイクロソフト社のWindows 11のシステム要件を記載しているページにおいて「1 ギガヘルツ(GHz)以上で 2 コア以上の64 ビット互換プロセッサ」と表記されている。インテル製では第7世代(KabyLake)以上、AMD製ではZen2以降のCPUが要件となるが、トラブルを招かないためにも、アップグレード前にマイクロソフト社が提供している「PC正常性チェックアプリ」にてチェックするとよいだろう。
また、セキュリティ強化のためとして、Windows 11へのアップグレードではTPM2.0対応が条件となっている。ほかにも、グラフィックカードやシステムファームウェアでも必要な要件が決まっているため、注意が必要だ。
Windows 11へのアップグレード前に検討すべき事項
アップグレードを行う前に、以下のようなデメリットとも捉えられかねない点を検討しておきたい。
アプリや周辺機器が動かなくなる可能性
報告数は多くないものの、ゲーム関連の一部アプリなどで不具合が報告されているものがある。また、互換モードでの動作を余儀なくされる場合もあるため、利用頻度が高いアプリなどでは、事前にそのアプリのサポートページなどを確認しておくと良いだろう。
UIの大幅変更
Windowsのアップグレード時、ユーザーインターフェース(UI)の変更に戸惑うユーザーは少なくないはずだ。過去に、Windows 8へのアップグレードの際は、大きく刷新したUIに多くの不満や戸惑いの声が集まった。
今回のWindows 11のUIは、Windows 10をベースに合理化、効率化されたという声が散見される。しかし、使いやすさについては主観的な判断が伴うため、事前に新しいUIを調べておくと良いだろう。なお、Windows 11にアップグレード後、10日間のみWindows 10へのロールバックが可能となっている。
ロック画面の簡易ステータス
Windows 10では、ロック画面にアプリの情報を表示できる簡易ステータス機能があった。このエリアでは天気やカレンダーなどに関する通知の確認が可能となっていたが、Windows 11ではこの機能が廃止された。
機能の削除
Windows 10で使い慣れた、見慣れた機能で、一部削除されているものもある。例えば、タスクバーは画面下部から変更できない。また、「Wallet」、「数式入力パネル」などがなくなっている。タブレットモードがなくなったことも大きな変更点だろう。ほかにも、タスクビューに対応アプリの作業履歴を表示する「タイムライン」も廃止された。
Cortana
Windows 10のデフォルトではCortanaがタスクバーに常駐していた。Windows 11では「全てのアプリ」から呼び出して使うように変更されている。
アップグレードとセキュリティ
セキュリティ上、アップグレードが必要な理由は、サポートが終了したOSを使用することが大きなリスクを伴うためだ。セキュリティパッチやアップデートが提供されなくなれば、脆弱性が解消されなくなる恐れがある。
昨今、ゼロクリック攻撃のような、被害者が特別な操作を行わなくても、悪意のあるコードを自動的に実行する攻撃手法なども流行している。これは、ユーザー側の操作を必要とせず悪意のあるファイルを送信することでシステム侵害やデータ窃取を試みる攻撃手法だが、こうした攻撃を成立させるために脆弱性が悪用される。
つまり、サポートが終了してこれらの脆弱性が解消されなくなった場合、OSやアプリがセキュリティ上のリスクとなるのだ。その結果、攻撃者は脆弱性を突いてシステムへ不正侵入し、データの盗難や改ざんといった行為を働くことができるようになってしまう。
Windows 10においても、サポート終了後に利用し続けることがリスクとなる時期が迫りつつある。アップグレード可能な要件を満たしていればアップグレードを、そうでない場合は2025年10月までには買い替えておく必要がある。なお、Windows 10から11への乗り換えに関して、無償期間がいつまで続くのかをマイクロソフト社は明言していない。業務のタイミングを見計らいながら、なるべく早めにアップグレードを完了させるのが望ましいだろう。
からの記事と詳細 ( Windows 10のサポート終了はいつ?Win11へのアップグレードで ... - ESET )
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