任天堂が株主総会の質疑応答を公開。次世代機への移行はニンテンドーアカウントを活用する方針、3DSソフトを遊べるサービスについては「現時点でお話しできることはない」 - 電ファミニコゲーマー
任天堂は玩具・コンピュータゲームの開発や製造、販売をおこなっている、日本の企業である。1889年の創業以来、花札やトランプの製造で高い知名度を獲得したほか、1983年には家庭用ゲーム機「ファミリーコンピュータ」を発売。家庭用ゲーム機やソフト開発でも世界的に有名な企業となった。
先の6月21日には同社が展開する最新型の家庭用ゲーム機Nintendo Switchで販売予定のソフトを紹介する「Nintendo Direct」を公開し、大きな話題を呼んだ。
今回の発表では、2017年の発売から今年で7年目となるNintendo Switchの次世代機への移行に関する質問や、大阪に存在するテーマパークであるユニバーサルスタジオジャパン(USJ)内で展開中のエリア「スーパー・ニンテンドー・ワールド」の拡大に関する質問など、様々な質問と任天堂側からの回答が公開された。
──Wii UからNintendo Switchに移行した時のようにソフトの引き継ぎができないと不便なので、Nintendo Switchで購入したダウンロードソフトを将来のゲーム機で引き継いで遊べるようにしてもらいたいと思うが、考えを聞かせてほしい。
代表取締役社⻑ 古川俊太郎氏(以下、古川氏):
当社は、将来のハードウェアの仕様について、常にさまざまな検討を行っていますが、この場において将来のハードウェアに関する具体的なコメントは控えさせていただきます。
Nintendo Switchソフトウェアの販売形態には、店頭でゲームカードを買っていただくパッケージソフトのほか、ゲーム機にソフトウェアをダウンロードしていただくパッケージ併売ダウンロードソフトやダウンロード専売ソフトなどがあります。多くのお客様がNintendo Switchにおいて、ダウンロードソフトやダウンロード専売ソフトで遊んでいただいており、これまでのゲーム機と比べてもデジタル売上高比率が上昇しています。当社としては今後も引き続きハード・ソフト一体型のゲーム専用機によるユニークな遊びを提案していきたいと考えていますので、ご期待いただければと存じます。
──「Nintendo Direct 2023.6.21」でファミコン40周年のキャンペーンの発表があった。(私の)父はファミコンで遊んでいたが、息子の私もNintendo Switchをプレイしている。世代や国境を超えて愛される任天堂の強みについて考えを聞かせてほしい。
古川氏:
ファミコンは今年で発売から40周年を迎えます。思い起こせばファミコンが発売された当時、私は小学校の6年生でした。そうした時代の流れの中で、親の世代や祖父⺟の世代の方々が、お子さんやお孫さんと3世代にわたって、当社のゲーム機で楽しまれている様子を世界中で見ることができるようになりました。
このことが、⻑年ゲーム専用機のビジネスを続けてきた当社の⼤きな強みとなっているように認識しています。
そして、多くのお客様に当社のゲームを⻑く遊んでいただく中で、たくさんのキャラクターなどの任天堂IPを育んでいただいたことが、現在の任天堂のブランドの価値につながっていると考えています。引き続き、お客様にユニークな提案を続けていくことで、世界中のお客様に末永く当社のゲーム機で遊んでいただけるように努めてまいります。
──Wii では発売後約6年で後継のWii Uが発売され、ファミコンも約7年で後継のスーパーファミコンが発売された。Nintendo Switchは今年で7年目に入り、終盤の局面に入ってきていると思うが、次世代機への移行に関して具体的な施策があればおしえてほしい。
古川氏:
Nintendo Switchは累計1億2000万台以上販売しています。当社のゲーム専用機のビジネスの歴史の中においても、7年目となる当期(2024 年3月期)に1500万台のハードウェア、1億8000万本のソフトウェア販売を見込んでいる例はなく、未知の領域に入ったと捉えています。
今後はハードウェアを過去数年のようなペースで販売することは容易ではないと考えていますが、ソフトウェアに関しては、多くの普及台数を活かしたビジネスができる機会があると考えています。
昨年の『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』や、今年の『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のように、Nintendo Switchには発売3日間で1000万本以上の販売となったタイトルがありますが、当社の過去のハードウェアではソフトウェアがこれほどのペースで売れた例はありませんでした。
また、引き続き新作タイトルを発売していくことに加え、発売済みのタイトルについても、追加コンテンツを配信するなどによって、お客様に⻑く遊んでいただきたいと考えています。
次世代機への移行に関しては、以前はハードウェアだけが当社がお客様とつながる手段であり、ハードウェアが新しくなるとお客様との関係を再構築していく必要がありました。一方、NintendoSwitch に関しては、ニンテンドーアカウントを介してさまざまなお客様と直接つながることができています。
ニンテンドーアカウントは、ゲーム専用機由来だけではなくモバイルアプリ由来も含めて、世界中で多くの方に作成いただき、アカウント数は2億9000万以上となっています。
Nintendo Switchから次世代機への移行においては、ニンテンドーアカウントを活用しながら、お客様にうまく移行していただけるように努めていきたいと考えております。
──今年5月に株式会社ポケモンによって開催された『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の公式⼤会でシステムトラブルがあった。こうした経験を踏まえ、今後のeスポーツへの取り組みについておしえてほしい。
古川氏:
ご指摘のシステムトラブルについては承知しております。ポケモン全般のイベントを含むブランドマネジメントに関しては、当社の持分法適用会社である株式会社ポケモンが担っており、今後も両社で協力してポケモンの世界を広げていきたいと考えています。
(当社はeスポーツと呼称していませんが)ゲーム⼤会というのは、ゲームの楽しさや面白さを、多くの方に共有していただいて、同時に盛り上がることができる魅力あるゲームの楽しみ方の一つだと考えています。当社では以前より、「スプラトゥーン甲子園」など、さまざまなゲーム⼤会を、ゲームを継続して遊んでいただくきっかけや、ゲームをお持ちでないお客様に関心を持っていただくきっかけになればと考えて開催しています。
そのため、当社主催のゲーム⼤会では、年齢やこれまでのゲームプレイ経験を問わずに、幅広く多くの方にご参加いただけることを重視しています。昨年、日本で開催した当社主催のイベントである「Nintendo Live 2022」においてもさまざまなゲーム⼤会を実施しており、今年はアメリカでも初めて「Nintendo Live 2023Seattle」を開催し、ゲーム⼤会を含めて実施する予定です。
──任天堂は花札やトランプの製造販売をルーツとする会社だが、トレーディングカードの分野においては、2022年でサポートが終了した『TCG ファイアーエムブレム0(サイファ)』以降、新作が出ていない。今後のカードゲームの展開についての考えを教えてほしい。
古川氏:
カードゲームに関して現時点で何か具体的にお話しできることはありませんが、例えば、(ゲーム機にタッチして連動させるとさまざまな遊びへとつながる)「amiibo」ではフィギュア型の製品だけでなく、『どうぶつの森 amiiboカード』などのカード型の製品も展開しています。当社は娯楽を提供する会社ですので、お客様に面白いと思っていただけるアイデアが生まれれば、ゲーム専用機以外の分野においても積極的に挑戦していきたいと考えています。
──2023年1月20日に発売された『ファイアーエムブレム エンゲージ』について、前作『ファイアーエムブレム 風花雪月』に比べて販売本数が海外を中心に減少している印象がある。前作の場合、以前販売していたカードゲーム『TCG ファイアーエムブレム 0(サイファ)』や関連イベントによって盛り上がりが維持されていたという側面があったと思うが、『ファイアーエムブレム エンゲージ』においてはそのような施策が不足していたので、今後は積極的に検討してはどうか。
古川氏:
個別のタイトルに限ったお話ではございませんが、お客様にゲームのキャラクターなどのIPへの愛着を末永く持っていただくために、ゲームの中で新しい提案をしていくことはもちろんのこと、ゲーム以外の場でアピールをしていくことも重要だと考えています。
例えば、キャラクターグッズを直営のオフィシャルストアで販売したり、パートナー企業様にライセンス商品を販売いただいたりするなど、さまざまな場で当社のキャラクターやゲームの世界に触れていただけるように取り組んでいます。こうした取り組みを通じて、今後も当社IPに触れる人口の拡⼤を目指していきたいと考えています。
「ファイアーエムブレム」シリーズに関連した施策に関しては、貴重なご意見として承らせていただきます。
──先日、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンにある「スーパー・ニンテンドー・ワールド」に行ってきた。非常に楽しかったが、少し狭く感じた。任天堂は、自社のキャラクターで勝負できる力を持っている会社だと思うので、今後もう少しテーマパークを広い地域に展開していったらどうか。
古川氏:
ユニバーサル・スタジオ・ジャパン様が現在展開している「スーパー・ニンテンドー・ワールド」については今後拡張の予定があり、「ドンキーコング」をテーマにした新しいエリアが2024年に開業する予定です。
また、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンでは、「スーパー・ニンテンドー・ワールド」のエリア外においても、3 月から開始した「NO LIMIT!パレード」にマリオカートのフロートが参加しており、夏には水かけ祭り「スーパーマリオ・パワーアップ・サマー」も予定されています。
また、「スーパー・ニンテンドー・ワールド」は⼤阪に続いて、今年、米国のハリウッドでもオープンしました。今後、米国オーランドやシンガポールでもオープンしますので、世界中のより多くのお客様に当社キャラクターに触れていただければと考えています。
代表取締役 フェロー 宮本茂氏:
家族みんなで遊べる場所(を提供できる)というのが、任天堂の魅力だと認識しています。任天堂のキャラクターやゲームを 3 世代にわたって楽しんでいただいていること、そしてそのような方々が世界中にいらっしゃることは、当社の強みであり、特別なことでもあります。
モバイルアプリや映画の制作に取り組んだことにより、当社の IP をご存じの方が世界中で増えてきたと実感しています。映画に関しては、ご家族みんなで映画館に行って一緒に楽しまれたという声も多くお聞きしています。
テーマパークビジネスに関しては、これからも、ユニバーサル・ディスティネーションズ&エクスペリエンシズ様と密接に連携して展開していきたいと思います。詳しくはユニバーサル・ディスティネーションズ&エクスペリエンシズ様からの発表をお待ちください。
映像も複数の展開をしていきたいと思います。こうした取り組みを通して当社のIPを世界中のあらゆる世代の方々に知っていただき、ご家族で安心して楽しんでいただけるブランドをつくっていけたらと思います。今後も応援をよろしくお願いいたします。
──「スプラトゥーン」シリーズに登場していた「ボーイ」というキャラクターについて、シリーズ最新作の『スプラトゥーン 3』では見た目が選択できるようになったが、「ボーイ」風のデザインの紹介が不十分だったように思う。「スプラトゥーン」シリーズの「ボーイ」には多くのファンがいると思うので、より露出の機会を拡⼤してほしい。
古川氏:
ゲームの仕様はさまざまな要素を総合的に勘案して決定しており、必ずしもご要望にお応えできるわけではありませんが、貴重なご意見として承らせていただきます。
──今後、「NINTENDO 64 Nintendo Switch Online」のようにニンテンドー3DSのソフトウェアをNintendo Switchで遊べるサービスは考えていないか。
古川氏:
Nintendo Switch 上で、ファミリーコンピュータやスーパーファミコン、ゲームボーイの一部のタイトルはNintendo Switch Onlineにご加入のお客様に、NINTENDO 64、ゲームボーイアドバンスの一部のタイトルはNintendo Switch Online +追加パックにご加入のお客様に、それぞれ遊んでいただけるようになっています。それ以外のプラットフォームで発売したタイトルにつきましては、ご意見として承りますが、現時点で具体的にお話しできることはございません。
──任天堂は昨年、株式を10分割したが、まだ100株で60万円以上する。さらに2分割か3分割すれば若い人でも買いやすくなり、任天堂の株主になれば任天堂のゲームやグッズを買って応援してくれると思う。株式分割に対する考えを聞かせてほしい。
古川氏:
当社は、株式分割による投資単位の引下げが、投資家層の拡⼤並びに株式の流動性をさらに高めるための有効な策の一つであると理解し、その実施を慎重に検討してきました。昨年、東京証券取引所の市場再編が完了し、当社がプライム市場に上場したことなどを契機として、株式市場の動向や分割前の当社株式の株価水準、また流動性などを総合的に勘案した結果、10分割の株式分割の実施を決定しました。
具体的には、昨年の9月30日を基準日、10月1日を効力発生日として当社普通株式を1株につき10株の割合をもって分割をいたしました。
株式分割後、投資単位の引下げにより、個人株主様を中心に株主数が増加しており、総株主数は分割前の昨年3月末には4万8329名でしたが、分割後の本年3月末には18万7023名となっています。また個人株主様の持株比率の上昇も見られており、投資家層の拡⼤に一定の効果があったと捉えています。
──Nintendo Switchで、ゲームキューブやWii U向けに発売されたソフトウェアを遊べるようにならないのか。
古川氏:
ゲームキューブ向けに発売したタイトルの中で、直近において『ピクミン 1』、『ピクミン 2』(ダウンロード版)のHDバージョンを2023年6月22日よりNintendo Switchで遊んでいただけるようになりました。ご要望については、貴重なご意見として承らせていただきます。
──任天堂は、過去に「任天堂ゲームセミナー(※)」を開催し、またNintendo Switch向けには『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』も発売したが、こうしたゲーム開発に興味を持ってもらえるような活動について教えてほしい。また、本日出席している開発者が、初めてゲーム開発に触れたきっかけを教えてほしい。
古川氏:
ゲーム開発に興味を持っていただける可能性のある商品の一つとしては、ご発言にあった『ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング』を展開しており、引き続き多くの方に同タイトルに触れていただきたいと考えています。
取締役 専務執行役員 高橋伸也氏(以下、高橋氏):
私は小さな頃から絵が好きで、描くことをずっと続けていました。また、中学校や高校時代は数学や理科も好きでした。⼤学生のころにファミリーコンピュータや3DCG(3次元コンピューターグラフィックス)に出合いましたが、3DCGは絵を描くことや数学、理科が合わさったものとして感じられました。3DCGとゲーム開発は近い関係にあると考え、任天堂の採用に応募して、今に至ります。
「ものづくりが好き」という感覚は今もずっと続いていて、任天堂の開発陣も全員がそう感じ
て働いていると思います。今後もソフトウェアに限らず新しいものを作っていきたいと考えています。
(※)2005年から2014年まで開催していた、ゲーム制作を学生の方々に体験していただくことを目的とした実践的セミナー
──Wiiは介護の現場でも活用され、お年寄りに楽しい時間を提供していた。医療やリハビリなどの分野で任天堂のコンテンツを活かせるのではないかと思うが、今後そういった取り組みを行う考えはあるか。
古川氏:
普段ゲームをされない方にとって、コントローラーを使ってゲームを遊ぶことはハードルが高いのですが、『Nintendo Switch Sports』のように直感的に遊んでいただけるようなタイトルは、幅広く多くの方に楽しんでいただきやすくなっています。
普段からゲームを遊ばれる方はもちろん、あまりゲームに関心がない方を含めて、幅広い年代の方に気軽に手に取っていただけるタイトルを引き続き作っていきたいと考えています。医療やリハビリなどの分野での当社ゲームの活用に関しては、貴重なご意見として承らせていただきます。
──任天堂のビジネスモデルについて聞きたい。手に取りやすい価格でハードウェアを販売することで、世界中で普及を拡⼤し、そのハードウェアで遊べるソフトウェアをたくさん発売するということが任天堂の利益の源泉だと考えている。
今すぐ新しいハードウェアを発売するよりも、すでに全世界で1億台以上販売されているNintendo Switchに注力し、今後発売される『スーパーマリオブラザーズ ワンダー』や『スーパーマリオ RPG』のようなソフトウェアの販売の最⼤化に取り組むことが、任天堂のビジネスにとって最も効果的ではないか。
また、いずれ次世代機が発売されると思うが、その際は世界中でゲームを楽しみたいお客様の手に商品が渡るように、転売対策をしっかりとってほしい。
古川氏:
Nintendo Switchはすでに発売から7年目に入りましたが、当社はお客様への受けいれられ方や開発してきたソフトウェアの内容などを考慮して、十分Nintendo Switchでお客様にユニークなご提案ができるだろうという判断のもとに、これまでNintendo Switchに集中してゲーム専用機ビジネスを行ってきました。
先日のNintendo Directでも発表しましたように、今年もNintendoSwitch向けに多種多様なソフトウェアを開発しておりますので、これらのソフトウェアをなるべく多く販売することでビジネスの最⼤化を目指していきたいと考えております。
また、新しいハードウェアを発売する時の転売対策に関しては、まずはお客様の需要を満たせる数を生産して出荷することが最重要だと認識しています。その上で、それ以外にも何か可能な対策がないか検討していきます。
──発売から7年目に入ったNintendo Switchのハードウェアのスペックは、開発者が思い描くゲームのアイデアをすべて実現できるものなのか、開発現場の生の声を聞かせてほしい。
高橋氏:
ゲームソフトの開発者として、Nintendo Switchの性能が足りているか足りていないかと聞かれれば、足りていないとは思っていません。ただ、ゲーム開発者は基本的に欲張りで、ハードの限界を超えてたくさんの要素を取り入れたくなるものです。
ですが、ある程度制限のある箱の中に、それらの要素をどう収めるかということについては、ファミリーコンピュータの時代から取り組んできましたし、その中で面白いものをどうやってつくっていくかが私たちの仕事で、制限があるからこそできる面白さがあり、実際にそのような面白さを実現できていると思っています。
取締役 上席執行役員 塩田興氏:
Nintendo Switchに関しては、⻑い間ゲームソフトの開発が行われていますので、その中でいろいろな工夫をして性能の壁を乗り越えたようなこともございました。現在でも、システムを開発しているメンバーがゲーム開発者の声を聞いて、少しでもスムーズに、また⻑くNintendo Switchでソフトウェアを開発できるよう、継続的な取り組みを行っています。
──今年度、従業員の基本給の増額を発表していたが、これは、優秀な従業員の定着のために非常にポジティブな取り組みだと考えている。一方で、従業員の基本給を増額するということは配当金の原資を減らすことにもつながるため、機関投資家からは何かネガティブな意見があったのではないかと想像する。
今回の賃上げに対して、機関投資家や従業員、同業他社などからどのような反応があったかを聞かせてほしい。
古川氏:
当社が今後も高い競争力を維持していくためには、これまでさまざまなヒット商品を生み出し、ブランドを築き上げてきた優秀な人材を⼤切にしていくことが最も重要だと考えています。現在、世界規模で例を見ない物価上昇が続いており、日本においても、日々の生活の中で金銭面の負担感が増してきていると認識しています。
そこで、⻑期的かつ継続的な環境変化に対応するために、当社では2023年4月より、契約社員・嘱託社員・アルバイトを含む全社員の基本給を定期昇給とは別に10%増額しました。また、採用の競争力を強化し、中⻑期的に会社の総合力を高めるために、新卒社員の初任給も合わせて約10%の引上げを行いました。
今回の基本給の増額に対してはさまざまな反応があり、配当の原資を減らすというコメントもいただきましたが、中⻑期的な視点で人材戦略を重要視する機関投資家からはポジティブな反応もありました。
なお、ゲーム業界においても人材の獲得競争が活発化しており、当社にとどまらず、さまざまな企業がさまざまなかたちで、賃上げによる初任給の引上げなどを行っていると理解しています。
──最近、1つの空間の上で不特定多数の人が楽しく遊べるメタバースという概念が出てきているが、それに対する考えについて聞かせてほしい。
古川氏:
メタバースについては、一時ほどではないかもしれませんが、世界中の多くの企業が注目をされており、可能性を秘めたものだと考えています。ただ当社としましては、可能性を感じつつも、具体的にどのような驚きや楽しみをお客様にご提供できるか、わかりやすく定義するのは簡単ではないと考えています。多くの方にわかりやすくお伝えできる任天堂らしいアプローチの仕方が見つかれば、何か考えることもあるかもしれませんが、現時点におきましては難しいものだと捉えています。
──任天堂の株主の中にはファンの方も多くいると思うので、ファンが喜ぶようなオリジナルの株主優待を導入してはどうか。
古川氏:
株主優待を実施されている企業もございますが、当社には法人の方を含めさまざまな株主様がおられますので、すべての株主の方々に平等に利益を還元できるものとしては、配当金がふさわしいのではないかと考えています。今後も適切な株主様への還元のあり方については検討していきます。
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