地下水汲み上げが地球の傾きを変えていたと判明!
私たちの地球は太陽の周りをおよそ23.4度傾いた状態で回っています。
この傾きがどんな理由で決まったか正確な理由は謎ですが、傾いた回転軸(地軸)のお陰で地球には四季がうまれ、多様な生態系の維持に役立っています。
ただ地球は正確な球体ではないため、地軸はおよそ10mの幅でぐらつきを起こします。
ぐらつきを起こす要因は主に地球内部の鉄でできたコアの振動や、氷の融解、海流の変化、さらには台風など、地球で起こる質量の移動となっています。
しかし地軸のぐらつかせる質量移動の中には年単位の周期的なものだけでなく、取り返しのつかない変化も含まれています。
たとえば温暖化によってグリーンランドや南極の氷の融解が起きた場合、地球を冷やさない限り、一度動いてしまった質量を元の状態に戻すことはできません。
地球は非常に巨大なため、氷の融解で起きる質量移動などは大した影響がないようなイメージを持ってしまうかもしれません。
しかしその影響は軽微ではありません。
たとえば指の上でバスケットボールやコマを回す場面を想像してください。
ボールが指の上で安定して周り続けられるのは、回転軸に対してボールやコマの質量分布がおおむね均等であるからです。
ですがもしボールやコマの一部に質量を加えたり、逆に取り除いた場合、変化した重量が極微量であっても急速にバランスを失い、大きな軸のぐらつきに繋がります。
実際地球でも、GPSなど極めて高精度の観測機器の登場により、人間の活動による僅かな質量変化が地軸の傾きに明確な影響を与えている様子が次々に明らかになってきました。
そこで今回テキサス大学の研究者たちは、人類による地下水のくみ上げに着目しました。
地下水のくみ上げによる質量移動は地球全体の重さと比べればわずかな量です。
しかし地下水くみ上げによる影響を元に戻すには、(原理的には)同じ量の水を地下に戻すという「非現実的」な作業が必要となり、事実上地軸の傾きに与える影響は半永久的なものになりえます。
調査では1993年から2010年までの極の動きに対して、氷の融解やダム建設、貯水池など地球表面の水の動きが与えた影響を正確に予想する計算モデルが作成されました。
しかし氷の融解やダム建設などによる質量移動だけでは、実際に起きた極の移動を十分に説明できませんでした。
簡単に言えば、「氷の融解やダム建設による影響により極が1m動いているハズなのに、実際の移動は2m起きていた」といったように、シミュレーションと実際の観測結果にズレが生じたわけです。
そこで次に研究者たちは、1993年から2010年の間に地下から汲み上げられた、およそ2150ギガトンに及ぶ水の質量移動をモデルに付け加えました。
すると計算モデルと実際の観測結果が見事に一致することが判明します。
また計算モデルによるシミュレーションを続けると、地下水のくみ上げは地球の深い場所にあった水を地球表面に移動させるといった単純な上下の質量移動で終わらず、地表に移動した水が海に流れ込んでいたことが判明。
そして最終的に地下水のくみ上げは1993年から2010年にかけて地球の地軸をアイスランド島の方向に80cmほど偏らせる効果を発揮し、年に0.3mmのペースで海面上昇を引き起こしていたことが示されました。
(※なお地下水のくみ上げより極移動に大きな影響をもったのは、氷の融解により重りがなくなったあとの「陸塊」の跳ね上がりでした)
また興味深いことに、地下水のくみ上げが極移動に与える影響は中緯度付近がもっとも多く、極地や赤道付近では比較的小さいことがわかりました。
(※極地や赤道ではトルクの関係から質量移動の影響が低くなっているからです)
現在、インド北西部や米国西部などの中緯度付近では活発な地下水くみ上げが行われており、計算モデルでもかなりの影響を与えていることが示されました。
研究者たちは地下水くみ上げによる影響が地球環境や天候、季節などに影響を与える可能性は「現段階では」低いと述べています。
しかし80cmのズレは決して小さなものではなく、GPSなどでは、細い道ならば簡単にはみ出してしまう大きさになります。
研究者たちは今後、地球の極の計算モデルを応答することで、さまざまな質量移動の影響を検知するツールにできると述べています。
2023-06-21 09:00:30Z
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