*2023年11月30日、[発表のポイント]イラスト・クレジット修正
2023年11月30日
東京大学
自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター
科学技術振興機構(JST)
発表のポイント
- 宇宙望遠鏡と地上望遠鏡による世界的な連携観測によって、太陽系から約100光年離れた恒星HD 110067の周りで6つのトランジット惑星を発見した。
- 6つの惑星は、全ての隣り合う惑星同士の公転周期が簡単な整数比で表される尽数関係にある。
- この惑星系は、惑星がどのように形成したかを考える上で貴重な惑星系となるほか、それぞれの惑星大気の観測が行われれば、惑星の大気獲得過程や恒星からの光が惑星大気の散逸や化学進化に与える影響の理解につながると期待される。
発表概要
東京大学大学院総合文化研究科の成田憲保教授(自然科学研究機構アストロバイオロジーセンター客員教授)、福井暁彦特任助教らのMuSCATチーム(注1)を含む国際共同研究チームは、宇宙望遠鏡と地上望遠鏡の連携した観測により、太陽系から約100光年離れた恒星HD 110067の周りで6つのトランジット惑星(注2)を発見しました。
この6つの惑星は、全ての隣り合う惑星の公転周期が2:3や3:4という簡単な整数比(尽数関係:注3)となっており、惑星が原始惑星系円盤の中でどのように形成し、移動してきたかを考える手がかりを与えてくれます。また、今後これらの惑星の大気の観測が行われれば、惑星の大気獲得過程や恒星からの光が惑星大気の散逸や化学進化に与える影響の理解につながると期待されます。
今回の発見は、アメリカ航空宇宙局(NASA)のトランジット惑星探索衛星TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite:注4)、欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡CHEOPS(CHaracterising ExOPlanets Satellite:注5)、MuSCATチームが開発した多色同時撮像カメラMuSCAT2、MuSCAT3(図1、図2)を含めた複数の地上望遠鏡が連携した観測によって実現しました。
本研究成果は、2023年11月29日(英国時間)に英国科学誌「Nature」に掲載されました。
発表詳細
大学院総合文化研究科のページからご覧ください。
用語説明
(注1)MuSCATチーム
成田教授と福井特任助教らが岡山県の188 cm望遠鏡、スペイン・テネリフェ島の1.52 m望遠鏡、アメリカ合衆国・マウイ島の2 m望遠鏡、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州の2 m望遠鏡用に開発した、3つもしくは4つの波長帯で同時にトランジットを観測できる多色同時撮像カメラMuSCATシリーズ(装置名称はそれぞれMuSCAT、MuSCAT2、MuSCAT3、MuSCAT4)を用いて研究を行なっているチーム。MuSCATはMulticolor Simultaneous Camera for studying Atmospheres of Transiting exoplanetsの略で、岡山県の名産マスカットにちなんでいます。
(注2)トランジット惑星
系外惑星がその主星の手前を通過する時、主星の明るさが見かけ上わずかに暗くなります。この現象をトランジットと呼び、トランジットを起こすような軌道を持つ惑星をトランジット惑星と呼びます。
(注3)尽数関係と平均運動共鳴
2つの天体の公転あるいは自転の周期が簡単な整数比になること。本文では公転周期同士の尽数関係を例に挙げましたが、自転と公転の周期比についても使われる言葉で、例えば月の自転周期と月の公転周期は1:1の尽数関係にあると言うことができます。2つの天体の公転周期が尽数関係を持つ場合は、2つの天体が平均運動共鳴の状態にあると言われます。
(注4)TESS(Transiting Exoplanet Survey Satellite)
TESSはマサチューセッツ工科大学の研究者が中心となって立案したトランジットによって系外惑星を探すNASAの衛星計画です。TESSは2018年4月18日に打ち上げられ、2年間でほぼ全天のトランジット惑星を探索するという計画を実施してきました。現在は第2期延長計画が実施されており、少なくとも2024年まで観測が続けられる予定です。これまでの5年間で、6千個を超えるトランジット惑星候補を発見しています。
(注5)CHEOPS(CHaracterising ExOPlanets Satellite)
CHEOPSはスイスの研究者が中心となって立案し、ESAによって2019年12月18日に打ち上げられたトランジット惑星の観測専用の宇宙望遠鏡です。主に既知のトランジット惑星のトランジットを高精度に観測し、そのトランジットが起きた時刻や惑星の半径を精度良く決定することを目的としています。当初は3.5年の計画でしたが、第1期延長計画が認められ、少なくとも2026年まで観測が続けられる予定です。
論文情報
Rafael Luque*, Hugh P. Osborn, Adrien Leleu, et al., "A resonant sextuplet of sub-Neptunes transiting the bright star HD 110067," Nature: 2023年11月29日, doi:10.1038/s41586-023-06692-3.
論文へのリンク (掲載誌)
関連リンク
2023-11-29 17:32:35Z
https://news.google.com/rss/articles/CBMiOWh0dHBzOi8vd3d3LnUtdG9reW8uYWMuanAvZm9jdXMvamEvcHJlc3MvejAxMDlfMDAxMDEuaHRtbNIBAA?oc=5
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