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Sunday, December 3, 2023

ポケカはどうやって作られてるの?クリーチャーズ開発チームにカードゲーム作りの裏側を聞きました | のっちはゲームがしたい! 第15回(後編) - 音楽ナタリー

ポケモンカードでのバトルに初挑戦した前編に続いて、後編ではプランニングディレクターの塚本啓太さんと、前編にも登場していただいたゲームディレクターの小林康平さんに、のっちさんがインタビュー。どんなことを考えてポケカの開発をしているのかなどを聞きつつ、読者の皆さんから募集した開発チームへの質問にも答えてもらいました。

取材 / 倉嶌孝彦・橋本尚平 / 橋本尚平 撮影 / 上山陽介 ヘアメイク / 大須賀昌子 題字 / のっち

「今遊んでいる人たちが遊びやすいデザイン」を考える

のっち 今日は初めて覚えることがたくさんで、好奇心でいっぱいです。ポケカって難しそうだなと思っていたけど、ルールを覚えたら簡単に遊べるゲームなのかなっていう印象に変わりました。それに、とにかくカードがかわいい! 今日はさまざまなイラストのカードをたくさん見せてもらいましたけど、ポケモンが進化するごとにストーリーが進んでいく絵を見せてもらって、それだけで楽しかったです。

小林 ポケモン好きの人なら誰もが楽しめるようなイラストにしているので、パックを剥いているだけでも楽しめるのがいいところかなと思っています。

のっち 剥いているだけで楽しかったです。「強いカードが出てうれしい」だけじゃないんですよね。ななっぷるさんと一緒に引いたときに出てきた、色鉛筆タッチのポッポがシュールで(笑)。「かわいいカードが出てうれしい」もあるんだなって。ところでお二人は、この会社でどういうお仕事をされているんですか?

左から小林さん、塚本さん。

左から小林さん、塚本さん。

塚本 私はプランニングディレクターをしております。

のっち プランニング?

塚本 企画を考えたり「年間にどういった商品を出すのか」みたいなことを決めたりする役割です。

小林 私はゲームディレクターとして、ワザやHPなど対戦に必要な要素を決めたり、遊び方を作ったりしています。「どうやったら初心者にわかりやすくなるか」「ここを変えるとどういうゲーム環境になるか」というようなことを考えて。

のっち 「クワッスは頭の毛をジェルで固めてるから、ワザの名前は『ジェルかけ』にしよう」とかもですか?(笑)

小林 それも自分が監修しています(笑)。ゲームをデザインするチームは10人弱いて「このポケモンはこういうワザにしよう」みたいなアイデアを出し合うんです。

のっちさん

のっちさん

のっち ほかにはどんなチームがあるんですか?

小林 イラストを作るイラストチーム、パッケージやトンマナを作るデザインチーム、企画を考えるチームとか、合わせるといっぱい人数がいて、それぞれ役割分担してカードを作っています。

のっち 企画というのはどういうことを考えているんですか?

塚本 例えば新しいパックの中にどのポケモンを入れようとか、イラストはこういう方向性にしようとか、何をするべきかを話し合って最初に旗を振る役割ですね。ポケモンカードゲームは長年ずっと新しいものが出続けているので、「いつ何を出すか」について常に議論をしています。新シリーズである「スカーレット&バイオレット」の目玉は伝説のポケモンのコライドンとミライドンだけど、そのあとはどのポケモンをパッケージにしようか、とか。

小林 ポケモンカードは発売開始からもう27年経つんですが、「スカーレット&バイオレット」シリーズは、今後10年も20年も続けていけるスタンダードなものをもう一度作ろうというコンセプトで再設計したんですよ。なるべく見やすいデザインに直したり。

のっち デザインっていうのはイラストのことじゃなくて?

塚本 イラストももちろんですが、カードに描かれている文字の部分も含めたデザインですね。過去のカードと見比べるとわかりやすいと思うんですけど、これがポケモンカードゲームBWのときのカードです。

左からマメパト、パフュートン。左のマメパトは2010年から2013年にかけて販売されたBWシリーズのカード。

左からマメパト、パフュートン。左のマメパトは2010年から2013年にかけて販売されたBWシリーズのカード。

のっち これだ! 私が見覚えのあるポケモンカードはこれだ!

塚本 印象は似ているんですけど、よく見ると実はいろんな部分が変わってますよね。例えば背景の色味は文字が見やすいように明るくなってますし、HPの文字サイズも大きくなってます。

のっち ホントだ! わかりやすくて助かります!

塚本 昔のものが間違っているというわけではなくて、「今遊んでいる人たちが遊びやすいデザイン」を考えて、その時代に合わせて作ることを心がけています。

ゲームにもアニメにも出てこなかった一面が垣間見れるんですね

のっち 例えば「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」のテラスタル(ポケモンのタイプをテラスタイプに変化させる現象)とか、「ポケットモンスター」シリーズの新作が出るごとに新しいシステムや特殊な効果といったものなどが増えることもあるじゃないですか。そういうのもカードに反映させてるんですか?

小林 テラスタルのカードはリザードンがわかりやすいですね。本来リザードンは炎タイプなんですけど、この「リザードンex」というカードは悪タイプなんですよ。

左から塚本さん、のっちさん。

左から塚本さん、のっちさん。

のっち 強そうー! 悪タイプなのに炎エネルギーが2枚必要なんですね。じゃあ、ダイマックス(「ポケットモンスター ソード・シールド」に登場する、ポケモンが巨大化する現象)を表現したカードもあるんですか?

塚本 HPやワザのダメージを大きくすることで、体が大きくなったことを表現しています。

のっち 新作が出たときに「今回はカードにするのが難しそうだな」って思ったりしますか?

塚本 毎回思いますね(笑)。

のっち さっき言ったクワッスの「ジェルかけ」とか、ポケモンのゲームには出てこないワザも多いんですね。

塚本 ディスプレイのあるデジタルなゲームと違って、駒を動かしたりカードを使ったりするアナログゲームを面白いものにするためには、いかにプレイヤーの想像力を掻き立てるかが大事だと考えています。ゲームに没入すると、カードに描かれているポケモンが本当にそこにいて、動いているような気がしてくる、みたいな。だからポケモンのことをイメージしてもらいやすくするために、「ピカチュウといえば10まんボルトだよね」みたいなお決まりのワザだけではない、カードゲームオリジナルのワザも考えています。

のっち 確かに、このキャタピーのカードの「はっぱをたべる」は、「たいあたり」よりもイメージが浮かびますね(笑)。なるほど……あれ? イラストじゃなくて写真のカードもあるんだ!

塚本 それは粘土などで立体作品を作って撮影したものですね。

このコイルのカードに写っているのは、立体造形家の森井ユカさんが樹脂粘土で作った作品。

このコイルのカードに写っているのは、立体造形家の森井ユカさんが樹脂粘土で作った作品。

のっち えー! 遊び心! 絵じゃなきゃダメって思ってました! このコイルのカード、電気室みたいなところで撮影してるんですね。

塚本 そうですね。当時のオフィスで、電気室に入れてもらって撮りました。

のっち へええ! 面白い(笑)。

塚本 編みぐるみのカードもあるんですよ。これは背景のセットも作ってもらってます。

このマルマインのカードに写っているのは、イラストレーターの伊東亜沙子さんが作った編みぐるみ。

このマルマインのカードに写っているのは、イラストレーターの伊東亜沙子さんが作った編みぐるみ。

のっち めっちゃくちゃかわいい! 背景もフェルトだ! イラストじゃなくて写真にするカードはどういう基準で決めてるんですか?

塚本 長い歴史の中で、同じポケモンのカードをたくさん出してきたので、「今回のコイルはこうしてみたら面白いんじゃない?」みたいに話して選ぶことが多いですね。

のっち そっか。ずっと昔からいるポケモンも、新鮮味を感じてもらいたいですもんね。

塚本 みんなによく知られているポケモンの新しい一面を見せられるのが、カードのいいところだと考えています。

のっち ゲームにもアニメにも出てこなかった一面が垣間見れるんですね……! 昔からずっと遊んでいる人は、集め甲斐があって楽しいだろうなあ。統一感はそこまで重視していないんですか?

のっちさん

のっちさん

塚本 統一感よりも「表現を広げていこう」みたいなことを気にしていますね。皆さんが好きなポケモンってけっこうバラバラですし、それぞれにいろんな「好き」があるので、そんな「自分はこれが一番好き」に全部応えるために、描き方や表現の種類もたくさんあったほうが楽しめるんじゃないかなって。

のっち 「このポケモンは人気あるのに、なんでもっと前面に出さないんだ?」みたいに思う人もいるかもしれないけど、どのポケモンにもファンがいるから、ってことなんですね。

塚本 そうですね。「なんで?」と思われている一方で、「このポケモンを出してくれたのすごくうれしい」と思ってくれている別の方もいるので。人気があるポケモンって国によってもちょっと違うんですよ。カードゲームを作る側の扱いが偏ったせいで、人気が特定のポケモンに集中しちゃうと、そういう面白さがなくなっちゃうかなと。

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ポケカ開発者たちが、ポケモンのゲームをプレイしながら考えていること

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