これまでにテストしたフィットネストラッカーのなかで、Amazfitの製品ほどハードウェアの進化が著しいものはない。2018年に試した初期モデルは、安っぽいプラスチック製でひどいものだった。
しかし、年を追うごとに着実に、より装着しやすくなっている。テスト中の「Amazfit Balance」を見た同僚が、サムスンの「Galaxy Watch6」ではないかと尋ねてきたほどだ。これは高い評価といえるだろう。
Amazfit Balanceは、Amazfitが一般的な用途を前提に手がけたフィットネストラッカーで、「心とからだを整える」ことを謳っている。見た目は……トップのボタンこそ少し異なるものの、Galaxy Watch6によく似ている。
本来ならGalaxy Watch6と同様に、睡眠や心拍数、アクティビティの追跡に加えて、電話の着信にも対応できるはずだ。さらに、睡眠や瞑想、運動に対応する人工知能(AI)搭載のツールも豊富に用意されている。だが、現時点ではバグが多すぎるところが玉に瑕だ。特に、シームレスに動作するGarminのテスト機を反対の手首に装着していると、その違いは一目瞭然である。
軽量でデザイン性に優れる
フィットネストラッカーを扱う際には、原則としてメーカーのプライバシーポリシーをチェックし、取得した個人情報がどのように扱われるのかを確認するようにしている。たいていは簡単に見つかり、内容もグーグルのものと似ていて、データが広告に使われることはないといったことが書かれている。
ところが、Amazfit Balanceのプライバシーポリシーはなかなか見つけられない。Amazfitのウェブサイトを見ると、このプライバシーポリシーはAmazfitのトラッカーには適用されないと明記されており、開発元であるZepp Health Corporation(旧社名は華米科技=ファーミ)のポリシーも同様だ。製品マニュアルにもプライバシーポリシーの記載はない。このトラッカーに適用されるプライバシーポリシーへのリンクを教えてほしいとZepp Healthに問い合わせたが、何の回答も得られなかった。
たとえZepp Healthの対応がすべて適切だったとしても、ユーザーが自分のデータの取り扱いについて知ることは非常に難しい状況だろう。もしこの点が気になるなら、これ以上は読み進めることをおすすめできない。
とはいえ、Amazfit Balanceは非常に軽量でデザイン性が高く、存在感の薄いフィットネストラッカーだ。ケースはかなり大きめで、直径46mm、厚さ10.6mmあるにもかかわらず、150mmある手首に装着しても大きすぎたり邪魔になったりすることはなかった。
ベゼルはスタイリッシュなグレーのアルミニウムで、左側面には操作用の2つのボタンと、強化ガラスに覆われたタッチ式のAMOLED(アクティブマトリクス式有機EL)ディスプレイが備わっている。
画面は鮮明で明るく、反応も良好だ。むしろ、少し反応がよすぎるかもしれない。オレゴンの寒々とした灰色の天気のなかジャケットの袖口に手を当てるだけで、意図せずにワークアウトが開始・停止してしまうことがあった。
バッテリーの持続時間は理論上は14日間とのことだが、1日に数回の活動記録(イヌの散歩、ランニング、室内ワークアウト)をこなしたところ、この2週間で1回の充電が必要だった。とはいえ、充電スピードは比較的速く、空港で飛行機を待っている45分の間に15%から65%まで残量が回復した。
防水性能は5気圧で、水泳の際にも使用可能だ(奇妙なことに、シャワーを浴びながらは使えない)。ちなみに、個人的にお気に入りであるガーミンの「Instinct 2」は10気圧防水で、シュノーケリングやサーフィンでも問題なく使える。
最近の高機能なフィットネストラッカーのほとんどがそうであるように、Amazfit Balanceにも多数のセンサーやツールが搭載されている。環境ノイズをフィルタリングするデュアルバンド測位機能を備えたGPS、加速度センサー、ジャイロスコープ、環境光センサー、温度センサー、そして心拍数や血中酸素濃度などを測定するための生体センサーが搭載されている。さらに、マイクと非常に大音量のスピーカー、個人的にお気に入りである非常に快適なナイロン製ストラップも付属している。
測定値は競合製品と比べて不満なし
「Amazfit」は、以前は華米科技として知られていたZepp Healthのブランドで、Amazfit Balanceが利用するアプリは「Zepp Health」だ。以前のZepp Healthはイライラするほど扱いづらかったが、いまではアプリのホーム画面はかなり整理されている。
Zepp Healthアプリには、Fitbitの「今日のエナジースコア」やガーミンの「ボディバッテリー」に似た「レディネススコア」という指標が導入されたが、以前の代表的な指標であった健康評価システム「PAI」も引き続き確認できる。
PAIのスコアは、Zepp Healthがノルウェー科学技術大学のウルリク・ヴィスロフ教授の研究を基に開発したものだ。年齢、性別、安静時心拍数、過去7日間の心拍数データを使って、ユーザーに最適な活動量を算出するようになっている。
このPAIという指標については、以前から少々ばかげていると感じていた。他社のフィットネストラッカーは軒並み1から100までの数値に基づく指標を採用しているが、PAIではほとんど脈絡もなくポイントを貯めるだけなのだ。これでは家計簿アプリが、いつ、どこでお金を使うべきかを教えてくれる代わりに、ただ稼いだ金額を褒め称えるだけのようなものである。
それでも、Amazfit Balanceの測定値をGarminやスマートリングと比較してみたところ、数値はおおむね一致していた。例えば睡眠のトラッキングでは、Zepp Healthのアルゴリズムの判定がやや甘めだとしても、Garminと同じように就寝までの時間を数分以内の誤差で記録してくれる。Zepp Healthでは7時間の睡眠は十分とされるが、「Garmin Connect」では普通程度の評価だ。
心拍数センサーには、やや不安定なところがある。ゆっくり歩いただけで心拍数が150bpmまで上がっている様子を見ると、パニックに陥ってしまう。だが、これは細い手首に対してケースが大きすぎるせいかもしれない。本体の位置を調整すれば、たいていの場合は問題が解消される。
体組成測定(体脂肪率を測定してくれる機能)の結果は、正常な範囲内のようだった。キャリパー法による測定と照合したわけではないが、エラーは出ておらず、「普通の健康的な女性」であると判定されたので、その通りなのだろう。
また、Zepp HealthのパーソナライズされたAIツールも、それほど役立つとは感じなかった。「Zepp Aura」(睡眠改善のために年間50ドル)や「Zepp Fitness」(ワークアウト効果の最大化のために年間30ドル)など、それぞれ別々のサブスクリプションが必要になるのだ。これでは費用がかさんでしまうので、それぞれの機能をチェックした後は必ずトライアルをキャンセルするようにした。
また、提供されるアドバイスもあまり有用ではなかった。適応性のある健康とウェルネスのアドバイスはAIにぴったりの用途だと思うかもしれないが、実用的なアドバイスが出てくるようにするために“AIコーチ”を指導することにも疲れてしまった。
具体的な結果を得るために、どのような質問をすればいいのかわからないなら、満足のゆく答えは得られないだろう。逆に、どのような質問をすべきかすでにわかっているなら、おそらくAIコーチは不要である。
結局のところ、右手首につけたガーミンと左手首のAmazfitでは、機能性に大きな開きがあった。どちらも価格帯はほぼ同じなのだが、ガーミンのほうがセットアップがずっと簡単だったのだ。Garminのデバイスはスマートフォンとペアリングすれば、スマートウォッチの機能をすぐに使えるようになる。
セットアップに難あり
それに、理論上はAmazfit製品で電話に出たりメッセージを確認したりできるはずなのだが、これらの機能はアプリで手動で設定する必要がある。説明書の通りに操作して、スマートフォンとの接続やメッセージの確認を試みたのだが、まったくうまくいかなかった。
ほかのトラッカーではもっと簡単にできるというのに、Amazfitではトラブルシューティングに時間を費やさなければならない。しかし、時間にも限りがある。
Amazfit Balanceは本来ならユーザーの生活を楽にするためのものであって、複雑にするためのものではないはずだ。しかも、音楽を再生するにはMP3ファイルをアップロードしなければならないときている。いったいどういうことだろうか。もう一度言おう。いったいどういうことだろう。
だが、フィットビットがグーグルに買収され、グーグルの製品やサービスとの結びつきがますます強まっているいま、iOSやAndroidだけに依存しないウェアラブル端末の必要性は明らかである。ガーミンは、iOSとAndroidの両方に対応するウェアラブル端末を開発しているメーカーのひとつにすぎないのだ。
この分野には、まだまだ参入の余地がある。Amazfitは近いうちにスマートリングを発売するそうで、これは興味深い。そしてAmazfit Balanceは、前に試したモデルよりもかなり改善されている。
◎「WIRED」な点
デザイン性に優れている。睡眠とワークアウトのトラッキングは、ほぼ正確。体組成測定の機能は……興味深い。くっきりした画面表示は鮮明で情報量が多い。バッテリーのもちがいい。
△「TIRED」な点
サブスクリプションへの誘導が多すぎる。プライバシーポリシーが大雑把。特定の機能を手動で追加しなければならない(そして機能しないことがある)。あまり役に立たないAI機能。音楽を聴くためにMP3ファイルが必要。
(Originally published on wired.com, edited by Daisuke Takimoto)
※『WIRED』によるフィットネストラッカーの関連記事はこちら。スマートウォッチの関連記事はこちら。
2024-05-05 08:00:00Z
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