新車を買って10年乗るのは当たり前の時代になってきているが、 不景気やクルマの信頼性向上もあって、1台のクルマを長く乗り続ける人が増えている傾向にある。
自動車検査登録情報協会が2019年に発表したデータによれば、平均使用年数は過去最高の13.26年となっている。
しかし、そうは言っても知らず知らずのうちに、クルマにダメージを与える運転をしていては平均使用年数も短くなってしまう。
そこで、もっと愛車に長く乗りたいという人に向けて、クルマの寿命を延ばすためにはどうしたらいいのか?
そして、クルマが出すSOSサインにはどういったものがあるのか? 自動車テクノロジーライターの高根英幸氏が解説する。
文/高根英幸
写真/ベストカーWEB編集部 Adobe Stock
【画像ギャラリー】2019年乗用車の平均使用年数の推移詳細データほか
クルマの使用年数は過去最高の13.26年
クルマの寿命はどのくらいなのか? どれくらいまで持つのか、気になっている人は多いはずだ。
クルマを買い替えるのは、新たに欲しいクルマが登場した時だけではない。今まで乗っていたクルマが故障して、修理代金が嵩みそうとなって買い替えを考える人もいるし、まだ乗れるけれど家族構成などの変化で必要なクルマが変わるケースもあるだろう。
自動車検査登録情報協会が発表した平成31年版わが国の自動車保有動向によれば、初度登録年度ごとの保有台数の1年間での減少台数から算出した乗用車の平均使用年数は13.26年と過去最高となっている。
これは新車で購入したオーナーが乗り続けているだけでなく、乗り換えることで放出されたクルマを中古車として乗り継いでいる年数、廃車に至るまでの年数だ。
廃車後に海外に輸出されて乗り続けられるクルマもあるから、実際に国内で乗り潰されるクルマの車齢はもっと高いだろう。
その一方で10万kmに満たない走行距離でも、廃車されるような車両もある。事故車だけでなく、修理に結構な費用がかかることで前オーナーが修理を諦めて、買い換えることを選択するケースだ。
米国ではクルマのパワートレインに15万マイル(24万km)の耐久性が要求される。これは日本以上にクルマ社会で、クルマの故障で立ち往生すると生命の危険すらあることからクルマ、特にパワートレインの耐久性や信頼性が重要視されるのだ。
それに1年間の平均走行距離が多く、一度走行すると巡航して走行距離も伸びることから、日本と比べてゴー&ストップやクルマにかかる負担は少なく、走行距離が伸びる傾向にはあるから、同じ水準で考えることはできない。
それでも日本でも15万km、20万km走行しても好調なクルマはある。その一方で10万kmに満たないにも関わらず、エンジンやATがトラブルを起こしてこともある。その違いはどこにあるのか、分からないユーザーも多いのではないだろうか。
定期的なメンテナンスが大前提
まずメンテナンスを怠らないこと、これはクルマを好調に保つためには大前提と言えるものだ。
特にオイルや水などの液体は劣化も早く、様々な部品に影響を与えるから、メーカー指定の交換時期より早めに交換するといい。エンジンの冷却水はスーパーLLC(ロングライフクーラント)を採用しているクルマも多く、新車から7年は交換の必要がないとされている。
しかし劣化しない訳ではないし、あまりに長いのでメンテナンスフリーの感覚になって、交換することを忘れてしまうケースもある。
特に中古車で購入した場合は、前オーナー時代の整備歴が分からない場合は早めに交換するといい。
オイル交換は早めに クルマは止めっぱなしにしない
メーカーが推奨しているオイル交換サイクルは、概ねガソリン・ノンターボ車で1万~1万5000kmまたは1年、ガソリン・ターボ車で5000kmまたは6カ月となっている。
悪路走行が多い、走行距離が多い、山道など上り下りの頻繁な走行などの過酷な条件での使用するなどのシビアコンディションでの場合は、ガソリン・ノンターボ車で5000~7500kmまたは6カ月、ガソリン・ターボ車で2500kmまたは3カ月。 マツダのディーゼルは、シビアコンディションが5000kmまたは6カ月。ノーマルが1万kmまたは1年 となっている。
純正より高級なオイルを入れてやるのも良いが、交換時期はメーカー指定より早めにすることを優先すべきだろう。
ノーマルコンディションかつターボでなければ1年に1回を目安に交換としてもよいだろう。
また、オイルフィルターはオイル交換2回に1回交換と一般に言われているが、これは3000~5000㎞という短い交換サイクルを前提とした話。1万㎞前後走るならオイル交換と同時が原則だ。
走行距離が少なくても、交換後走行した時から劣化が始まるので、見た目に汚れが少なくても交換時期は延ばしてはダメだ。
車庫入れ時の据え切りはアウト!
わかっていても、ついうっかりやってしまう行為としてまず挙げておきたいのはハンドルの据え切り。
車庫入れでガンッとストッパーに当たってこれ以上回すことができない、据え切り状態まで、ハンドルを切ってしまうことがままある。
パワーステアリングが当たり前の現在、停止状態でも苦もなくハンドルが切れてしまうからだが、そんなハンドル操作を頻繁に繰り返しているとジワジワと足回りを傷め付けることなる。
油圧式のパワーステアリングの場合、油圧経路には常に高圧がかかっている。ステアリングをフルロックさせるとその圧力の逃げ場がなくなるため、さらに圧力が高まる。
そして、限界に達すればリリーフバルブが開いて圧を逃がしてくれるものの、パワーステアリングフルードは圧が高まるほどに発熱するため、頻繁に繰り返せばフルードの劣化を早めることになる。
そんな劣化したフルードを使い続ける油圧シリンダーのシールを傷め、フルード漏れなどのトラブルを誘発することになるのだ。
また、ストッパーに当たっているにもかかわらず回し続ければ、ステアリングのリンケージ類に無用の負担をかけることになる。
その結果、ホイールアライメントの狂いを引き起こす可能性がある。さらに、コンパクトカーでも車重が1トンを超え、1つのタイヤに単純計算で250㎏もの荷重がかかっているわけで、停止状態でハンドルをグリグリ切ればタイロッドエンドのガタを誘発したり、アームがしなるなどフロントサスペンションにまで負担がかかる。
近年、主流となっている電動パワーステアリングにも言えることなので要注意。とにかく、パワーステアリングはタイヤが路面から受ける衝撃を感じにくいため、知らぬうちに足回りにダメージを与えていることが多いので丁寧な運転を心がけたい。
走行中にATをDからRに入れる行為は?
さて、基本的にはやってはいけないものの、最新のモデルであれば大丈夫というケースもある。ATはその最たる例だ。
ATのセレクトレバーは電気スイッチで、実際にはコンピュータが判断してギヤを切り替える油圧バルブを作動させており、最新のATには誤った操作をした場合、重大なトラブルに発展するのを防止するセーフティ機構が備わっている。
例えば、走行中にDからRに入れたとしてもセーフティ機構が働いてNをキープするため、大事には至らずにすむ。
トランスミッションのギヤを機械的にロックするがために、走行中にやってしまうと致命的なダメージを受けるD→Pも、一定の速度以上ではただちにロックされることはない。
しかし、セーフティ機構が搭載されてない車種や低年式のクルマだったら、ATが致命的なダメージを受けることになる。
また、最新ATでも何らかの不具合が重なったり、偶然条件が揃うことでセーフティ機構が機能しないケースも考えられる。その場合の修理費は安く見積もっても20万~30万円コースとなる。
間違った操作、やってはいけない操作が、取り返しのつかないトラブルを呼び寄せてしまうのは当然の結果。
基本はクルマを停止してからATのシフトチェンジを行うこと。正しい操作を心がけるよう、くれぐれも注意したい。
クルマからのSOSのサインを見逃すな!
■走行中の「キーッ」という音
ここからは具体的にクルマから発せられるSOSサインはどんなものがあるか、紹介していきたい。
常にキーッと高音を響かせながら走っているのは、そのほとんどがブレーキパッドの使用限界まで磨耗していて、金属板のウエアインジケーターがディスクローターに接触しているのが原因だ。
その時点ではブレーキパッドは完全に摩滅している訳ではないが、使用限界を迎えているので本来の制動力を発揮できていないし、安全のためにもすぐに交換する必要がある。
このまま走っているとブレーキパッドのライニングが完全に摩滅してなくなり、ライニングが張り付いていたバックプレートがディスクローターと直接接触してしまうことになる。
そうなると金属同士で接触することになり、摩擦係数が大きく落ちて、ブレーキの利きが大幅に落ちるだけでなく、ローター表面が削れてしまうので、早く整備工場に持ち込んだ方がいい。
クルマが発してくれているサインを見逃した、あるいは無視したがために大事に至るケースもある。そのまま乗っているとライニングがなくなり、ブレーキパッドのベースの鉄板がディスクローターに接触。
金属同士で擦れ合う摩擦熱でディスクローターに深い傷が入ってしまうため、ブレーキパッドとセットで交換する必要が生じてしまう。うっかりそのまま見過ごしていたら痛い大出費が嵩んでしまう典型的な例だ。
走行中にメーター内の赤いランプが点灯もしくは点滅したときは、とにかく要注意だ。
また、ブレーキフルードの液面はボンネットを開ければ目視でチェックできるので、たまにLOWライン(下限ライン)近くまで減っていないかチェックすることをお薦めする。
■ブレーキパッドは厚みが残っていても年数が経ったら寿命
ブレーキッパッドはライニングの厚み(残)があるから大丈夫というものでもない。ブレーキパッドはライニングが摩耗することで止める力を生んでいるため、熱が加わりながら年数が経過すると硬化して摩耗しにくくなる。
すると食いつきが悪くなるため、ブレーキの効きが悪化してくるのだ。特に峠道などでブレーキを使いすぎて焼けてしまったなど、過度のブレーキングで表面を焼いてしまったときは注意が必要だ。
このため、極端な話、5年で1万㎞しか走らずに半分以上残っていたとしても、ダメなときはダメ。
つまり、残量が第一要件なものの年数や使い方で考える必要もある。摩耗末期も同様の理由で確実に効きは悪化しているので注意したい。キーッというSOSサインがなくても年数が経ったら寿命だと考えてほしい。
■加速時にだけ「ギューッ」という音が鳴く
信号待ちからのスタート時など、加速時にギューとかキューという音を響かせているクルマもよく見かける。
これは発電機やウォーターポンプ、エアコンのコンプレッサーなどの補機類を回しているベルトが滑っている状態だ。
原因としてはベルトの摩耗やテンショナーの不良、ウォーターポンプや発電機のベアリングが壊れかけて、フリクションが増えていたり、それ自体からキュルキュルと音が出ている場合もある。
■エンジン始動時や回転の上下に応じて「ガラガラ」と音が出る
エンジンを始動した途端にガラガラと音が出るのは、バルブのトラブルであることが多い。
一番多いのはバルブクリアランスを調整してくれる油圧ラッシュアジャスターの不良だ。カムシャフトとタペットの間が開いてしまって、カムがタペットを叩いてしまっているのだ。
バルブのリフト量が足りなくなっている状態のため、1気筒だけ出力が低くなり、燃費も悪化してしまう。
放っておけばタペットやカムの摩耗が進んでしてしまうことにもなる。車種やエンジンの種類によっても差はあるが、オイル管理が悪いと起こりやすいトラブルだ。
エンジンが温まってしまえば音が消えてしまう場合は、エンジンオイルが温まって粘度が下がることで流動性が上がり、ラッシュアジャスターにオイルが供給されるようになるから、ということもある。
オイルの粘度を下げたり、上げたりすることでラッシュアジャスター内部の状況が変わって、音が消えて問題が解消する場合もある。
■エンジンから「カンカン」という音が響くのは?
同じくエンジン始動からカンカンという音が響いてきたなら、それはおそらくクランクシャフトの打音だ。
クランクシャフトは、メタルベアリングによって支持されている。通常はメタルとクランクの間に油圧によって油膜が作られ、オイルのなかでフローティングしながらクランクシャフトは回転しているのだが、メタルベアリングが摩耗してクリアランスが広がってしまうと、オイルリークが増えて必要な油膜が保てなくなる。
そうなると、さらにメタルベアリングが摩耗してしまうという悪循環に陥り、前述の様にクランクが回転する度に打ち付けられて打音が発生してしまうのである。
30万kmくらい走行すれば、どんなエンジンでも起こり得る症状だが、実際にはもっと少ない走行距離で起こっていることが多い。
その原因は、やはりやはりオイル管理の悪さだろう。オイルが汚れたり劣化したまま、あるいはオイルが減っているのに交換も継ぎ足しもせずに乗り続けていると、潤滑不良を起こし、オイルポンプ自体も内部が摩耗し、油圧自体が低下してしまう。
■発進時やDレンジにシフトした時の「ゴンッ」という衝撃音
Dレンジに入れた時や発進時にゴンッと衝撃と音が響くのは、エンジンマウントがヘタッているからかもしれない。
特に前後方向の位置決めを行なうトルクロッドと呼ばれる部品のブッシュがまずヘタリ、それによってエンジンや変速機をサブフレームにマウントしているエンジンマウントだけでは支え切れず、パワーユニット全体が大きく揺さぶられることになってしまうのだ。
異音の正体は、エンジンから駆動力が伝わる瞬間にパワーユニット全体が前後に大きく動いていることなのである。
クルマの各部に使われているゴム製のブッシュやマウント類は、クルマの剛性を調整し、振動や異音を抑えるために使っている緩衝材だ。
そのため劣化したら交換しないと振動や衝撃、異音を発生するようになり、そのまま放っておけばその部品の周囲の部品にストレスがかかり、クラックや変形などのトラブルを引き起こすのだ。
■走行中、段差などを乗り越えた衝撃が「ゴツッ」と響く!
段差などを乗り越えた時にガツンッと鋭い音が響いたり、ステアリングに衝撃が伝わってくるようなことがあれば、足回りの部品の劣化が考えられる。
ダンパーやスプリングといった骨格や筋肉部分ではなく、人間で言えば関節に相当する部分にガタが生じているのだ。
サスペンションアームのブッシュ、ストラットのアッパーマウント、アームとハブキャリアを結ぶボールジョイントなどである。
ブッシュは前述のエンジンマウント同様、ゴムでできていて走行中の衝撃を吸収してくれるが、劣化してやがて変形したり、ちぎれてしまうこともある。
こうなると衝撃を受け止められずに異音が発生したり、クルマの動きが不安定になる。
しかし、まだまだ乗り続けるつもりなら、いっそ足回りをリフレッシュして、同じような箇所の修理を一気に済ませた方が安上がりだ。
同じように足回りでボールジョイントを使っている操舵系のタイロッドエンドやスタビライザーのリンクなども、ガタが出てくると、異音を発生する。
スタビライザーリンクは、左右どちらかのサスが動いた時にだけコキンッと音が出ることが多い。
クルマの寿命を延ばす秘訣は気を配る乗り方
そして意外と重要なのが乗り方だ。異音や振動などがないか気を配って走らせることだ。
昔はクルマが路上で故障することが珍しくなかったから、特に輸入車乗りは異音や臭い、振動などに常に気を配りながら運転していたものだ。
クルマの信頼性が向上し、運転も簡単になっている今は、何も気にすることなく運転している人が圧倒的に多い印象だ。
発進時や停止時、加速時などにクルマがいろんな異音を発していても、気にも留めないドライバーを見かけることも珍しくない。
もう少しクルマからのSOSに耳を傾ければ、クルマのトラブルは減って安く長く乗り続けることができるはずだ。
走らせ方も重要で、アクセルのオンオフ操作が極端だと、駆動系にかかる負担は大きくなる。
丁寧な運転をするためには、自分の中のセンサーを研ぎ澄ますことが大事だ。自分の運転が丁寧か雑か、というのは自分では意外と分からないものだ。
そんな時には友人知人に協力してもらい、3人で1台のクルマに乗車して、代わる代わる運転してみるといい。
3人で運転を評価しあいながら走ってみれば、ドライバーによってクルマの動き方が変わることにも気付くだろう。
乗りつぶすまで使ってこそ、そのクルマも本望というもの。燃費も大事だがスクラップになるクルマを減らすことも地球環境を守ることに貢献できるはずだ。
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February 15, 2020 at 07:00AM
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