たまたま人間には見えないだけ。
残念ながらというか当たり前というか、人間の眼は「可視光」と呼ばれる波長の電磁波しか見えませんけど、もし紫外線もキャッチできたら火星がディスコボールのように輝いて見えることでしょう。
NASAの火星探査機MAVENが紫外線撮像分光器を使って上層大気を観測し続けた結果、火星は春と秋の夜だけ、しかも毎晩かっきり3度だけピカピカピカと光っていることがわかったそうです。
思わずテンションがアガるリアル『太陽系デスコ』の映像はこちら。人間の眼には見えない世界がこんなにも美しかったなんて…!
この映像はただ美しいだけじゃなく、火星の上層大気を詳しく分析する上でも重要な手がかりとなります。
学術誌『Journal of Geophysical Research: Space Physics』に掲載された論文によれば、紫外線撮像分光器を通してこれまで誰も見たことのなかった大気の循環パターンが明らかになってきたそう。
火星の大気は地球と比べると非常に薄く、今でも毎年数千トンのガスが太陽風にあおられて宇宙へ吹き飛ばされています。それだけ流動的な火星の大気圏では、地球では起こらないことがいろいろと起こっているようです。
なぜ光るの?
火星の夜を彩るサイケなピカピカは正式には「大気潮汐(たいきちょうせき)」と呼ばれるもので、火星の大気の中間圏で起こる窒素(N)と酸素(O)原子の化学的な結びつきが原因だそうです。
その発生メカニズムは次の通り。まず太陽から降り注ぐ紫外線が、火星の大気中の二酸化炭素と窒素ガスを炭素・酸素・窒素の原子に分解します。こうしてバラされた原子は火星全体を巡る大気循環に乗り、太陽から見て裏側(すなわち夜側)へと運ばれます。やがて夜側にたどり着いた原子は、冷やされた空気とともに急下降し、比較的大気の密度が濃い部分に突入します。その際、窒素と酸素原子がくっついて一酸化窒素となり、紫外光子を放出するためにピカッと光るのだとか。
紫外発光の多くは火星の地表から64kmあたりの高度で起こり、時には直径965kmの巨大な光の模様を描くそうです。
こうやって紫外線を使って観測することで火星の大気循環の動きがより明確になり、季節によって(ということは太陽との位置関係によって)風の動きに変化があることがわかりました。また、どでかいオリンポス山を含む火星の地形学的な要素にも影響されていることがわかってきたそうです。
ちなみに、火星の北極冠あたりでも不可思議な光の渦巻きが発見されていますが、こちらはどうやって発生しているのかまだ解明されていないそうです。なぜきっかり3度光るのかも謎です。
大気循環が火星を形作っている
この研究は、コロラド大学ボルダー校のNick Schneider教授率いるチームが、火星で言えば2年間、地球で言えば約3年9ヶ月分の紫外線データをもとに分析したもの。
Schneider教授は「火星の大気の中間層は下層と上層とを結ぶ重要なエリア。MAVENから送られてきた画像は、その中間層でなにが起きているのかを火星全体のスケールで解明する初めての試みにつながった」とNASAのプレスリリースで語っています。
2014年から稼働しているMAVENは、これまでにもいくつか重要な発見に貢献してきました。「MAVENは火星の大気流出と気候変動に関する研究において大きな功績を挙げてきた。これらの発見は大気循環がいかに火星の成り立ちに影響しているかを物語っている」と研究の共著者、Sonal Jain氏も話しています。
それにしても。
人間がいつか火星に降り立ったとしても、大気のピカピカはまったく見えないわけですよね。もし紫外線だけを通すフィルターでリアルタイムに観賞できたなら、さながらオーロラウォッチングみたいな絶景になること間違いなしです。
しかし、研究者の話によれば火星のピカピカは時速290kmという驚異的な速さで夜空を駆け抜けていくのだとか。オーロラの幻想的な光に癒される…というよりは、パーリーピーポー向けのアトラクションかもね。
2020-08-17 13:00:00Z
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