子どものじんましんはどれくらい発症するか
じんましんは大人になれば誰しもが経験したことがある病気ですが、子どもでも珍しくありません。
たとえば、韓国に住む子ども(4歳から13歳)4,076人に対するアンケート調査によると、22.5%がじんましんを経験していました。また、アンケート調査をした時点から1年以内に急性じんましんになったことがある子どもは13.9%、慢性じんましんになった子どもは1.8%いたとされています[2]。
すなわち、2割の子どもが1回はじんましんを経験するということです。
ここで出てきた慢性じんましんとは、じんましんが6週間以上続いたものです。
以前の日本の定義では、じんましんを発症してからの期間が1カ月以内のものを急性じんましん、1カ月以上経過したものを慢性じんましんとしていましたが、2018年のガイドラインからは、海外のガイドラインに合わせ「6週間」に変更されました。
急性じんましんになった人のうち、どれくらいが慢性じんましんになるか
日本で行われた研究があります。急性じんましんと診断された386人のうち、症状が改善したのは1週間後で73.2%、4週間後で85%、1年後で93.3%という結果でした。そして20歳以下における改善率は20歳以上よりも高く、おおむね90%の人はひと月以内に改善すると考えられています[3]。
よく原因がわからない(特発性)のじんましんでも、治療を行っていく過程で6週間以内に9割の人は改善する一方で、1割ほどの人が慢性じんましんとなってしまうことになりますね。
子どものじんましんの原因とは
食べ物や温度差などの刺激が原因となることがあります。しかし、じんましんの原因ははっきりしないことが多く、「特発性じんましん」と呼ばれています。ただ、特に子どもでは風邪などに伴うものが多いとされています。
たとえば急性じんましんになった5歳未満の子ども83人に関して調査したところ、上気道感染症(いわゆる風邪)が半数にあったそうです[4]。
筆者の経験としても、風邪をひいていること以外とくに原因らしいものがない子どもをよく見ます。そういうお子さんでは、風邪が治ってくれば、自然にじんましんも治ってくるケースも多いと感じています。
原因不明(特発性)のじんましんと聞くと不安になると思いますが、風邪を伴うものあれば、ゆっくり身体を休ませて見守ってあげると良さそうですね。
急性じんましんの治療とは
さて、風邪をひいていてもそうでなくても、急激なアレルギー反応(アナフィラキシー)を除き、急性特発性じんましんは『抗ヒスタミン薬』で治療が行われることがほとんどです。
「ヒスタミン」とはどんなものか
からだの中には、「肥満細胞」という細胞がさまざまな場所にひそんでいます。
肥満細胞は、顕微鏡で見るとそのお腹に多くの物質を抱え込んでいて「太っているように見える」のでその名(太っている=肥満しているということです)で呼ばれています。その肥満細胞がなんらかの刺激でお腹の中に溜め込んでいた物質をばらまいて、じんましんが起こるのです。
その物質のひとつが「ヒスタミン」です。
そしてこのヒスタミンの作用を妨害する薬が、「抗ヒスタミン薬」です。抗ヒスタミン薬は、古い薬剤を第一世代、新しい薬を第二世代と呼んでいて、最近は第二世代を使うことが多くなっています。そして、以前は子どもに対して、もともと眠気が強い第一世代や、第二世代の中でも眠気の強いタイプしか保険で使用できなかったのです。
しかし1994年に発売されたエピナスチンという抗ヒスタミン薬を皮切りに、「眠気の少ない(副作用の少ない)タイプの第二世代の抗ヒスタミン薬」が生後6ヶ月から使用できるようになりました。
慢性じんましんになったらどうするか
「じんましんが6週間以上続いた場合は慢性じんましん」ということになります。そうなったら治療はどのように行うのでしょうか?
治療の基本は、やはり抗ヒスタミン薬です。しかし、慢性特発性じんましんの子どもの約1/3は、一般的な治療では十分コントロールできないことがわかっています[5]。
こんな場合は皮膚科専門医やアレルギー専門医に診ていただくと良いでしょう。特殊なじんましんでないかどうかの鑑別も必要になるからです。
*専門医は各学会のホームページから検索できます。
*専門医がいる医療機関はこちらでも検索できます。
そして、通常量の抗ヒスタミン薬での効果が不十分だった場合は、他の抗ヒスタミン薬に変更したり、2倍量で使用したり、2種類の抗ヒスタミン薬を組み合わせたり、さらには別の内服する薬剤を使用する場合もあります。
さらに、12歳以上の小児にはオマリズマブという特殊な注射薬を使用することもあります。オマリズマブは高価な薬剤で繰り返し使う必要がありますが、有効性が高いことがわかっています[6]。
慢性じんましんは治るのか
慢性じんましんがいつ頃治るのかが気になるところでしょう。ある調査では、4-15歳の慢性じんましんの子ども92人に関して、その改善率は1年後18.5%、3年後54%、5年後67.7%と報告しています[7]。時間はかかるものの、成長するにしたがって治る人の割合は着実に増えているのがわかります。あせらず根気よく治療を継続するのが大切ということですね。
まとめ
今回のじんましんに関する話をまとめましょう。
- 急性じんましんは子どもでも珍しくはなく、2割程度は1回は経験する
- 急性じんましんの多くは原因がよくわからない『特発性』だが、半数は風邪に伴うもののようである
- 6週間以上じんましんが続いた場合は慢性じんましんといい、通常量の抗ヒスタミン薬の効果が不十分ならば専門医の受診が望ましい
- 慢性じんましんの改善率は、1年後で2割、3年後で5割、5年後で7割とゆっくりなので、焦らずに治療を継続する
本コラムが、お子さんのじんましんに悩む親御さんの役に立てば、嬉しく思います。
※本ページの記事は、医療・医学に関する理解・知識を深めるためのものであり、特定の治療法・医学的見解を支持・推奨するものではありません。
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December 01, 2020 at 08:59AM
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