高校スポーツにとって華やかな季節がやって来た。下野新聞でも例年、年末年始はサッカーやラグビー、バスケットボール、バレーボールなどの全国大会に記者を派遣し、栃木県勢の活躍を報じているが、取材が圧倒的に「難しい」スポーツがある。駅伝だ。何が難しいのか-。取材経験者の一人として、その裏側を紹介したい。
「試合会場」が広過ぎる
最初から理由を明かしてしまえば、駅伝取材の難しさは、他競技と比べて「試合会場」が広いことに尽きる。
「都大路」の呼び名でも知られる全国高校駅伝は、京都市の中心部を舞台とした男子7区間42.195キロ、女子5区間21.0975キロで争われる。発着点のたけびしスタジアム京都(西京極陸上競技場兼球技場)から男子折り返し地点の国際会館前までは、直線距離でもおよそ10キロは離れている。
多くの地方新聞社では、全国大会の取材に割ける人員は、カメラ撮影を含めて各競技1人から多くても3人程度。きわめて限られた人数で、県勢を追いかけなければならない。
選手や監督へのインタビュー取材は、閉会式までの時間にスタジアム周辺で行えるので、焦る必要はない。一方、ランナーの力走やたすき渡しの瞬間に撮り直しは効かないので、どこでカメラを構えるかが重要になる。
乗り換え攻略が鍵
順位が確定するゴールシーンは外せない。男女ともエース区間である1区も撮りたいし、好成績が期待される区間のたすき渡しも押さえたい-。
担当記者は、県勢の区間配置とインターネットの乗り換え案内をにらみながら、どのように動くべきか頭を悩ませる。
鉄道を使う場合、スタジアム最寄りの西京極駅から阪急京都線に乗ることになる。3駅先の烏丸駅から京都市営地下鉄烏丸線(地下鉄では四条駅)に乗り換えると、駅伝コースに近づける。
地下鉄烏丸線は8、9分、西京極に停車する阪急京都線は10分程度の間隔で動いている。本数は少なくないが、数分単位のロスも惜しい。乗り換えのスムーズさによっては動ける範囲も違ってくる。
「王道」はスタジアムと男子の第1中継所を往復するコース。男子の第1中継所は、エース区間の1区から2区へのたすき渡しであり、鞍馬口駅を出てすぐの「駅近」スポットだから、地方紙記者の人気も高い。何より、余裕を持ってゴールに間に合う。
鞍馬口駅から戻る際、丸太町駅で降り、第4中継所で4区から5区へのたすき渡しを撮影することもできる。ただ、ゴールに間に合うかは微妙なライン。西京極駅からスタジアムのゴール付近までは徒歩10分近くかかるため、状況次第ではアンカーとの“競走”になる。
タクシーを貸し切ればいいのでは、という声も聞こえそうだが、渋滞と経費が通るかが心配で、なかなか使えない。
ランナー目線を味わって
ほとんどの中継所は鉄道で近づくことができるが、それが難しい場所がある。女子の第1中継所だ。最寄りの駅から遠い上、西京極駅からの乗り継ぎがきわめて困難。ここに限っては、タクシーで駆け付けるしかない(スタート前であれば渋滞の心配はない)。
女子のゴールに間に合うためには再びタクシーに乗るしかないが、ゴール撮影を同僚記者に任せて、女子の第3中継所→男子の第1中継所へと歩いて回るコースもある。
高校駅伝ファンならお分かりかと思うが、これは女子2区とまったく同じコース。西大路通りから北大路通り、堀川通り、紫明通り、烏丸通りへと続く、下り基調の4.0975キロだ。
とりわけ2キロ先の女子の第3中継所には、20分ちょっとでランナーが来るので時間がない。カメラやパソコンが入った重たいリュックを背負いながら、須磨学園高(兵庫)で3年連続区間賞を獲得した小林祐梨子さんのような「2区のスペシャリスト」になった気分で攻める。
男子がスタートし、第1中継所に来るまでには時間的猶予がある。とはいえ、この間も女子の区間記録をチェックしたり、コンビニで昼食を買ったりと、休まる暇はない。
今年は25日号砲
今年の全国高校駅伝は25日。栃木県からは男子が佐野日大(5年ぶり19度目)、女子は宇都宮文星女(3年連続5度目)が出場する。
高校生ランナーたちの一世一代の晴れ舞台。その裏では、今年も地方紙記者たちによる“勝負”が繰り広げられているはずだ。
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