海洋研究開発機構(JAMSTEC)や九州大などの研究チームは、2020年に探査機はやぶさ2が地球に持ち帰った小惑星りゅうぐうの砂試料に、塩をつくる物質の一つであるナトリウムイオンが多く含まれていたとの研究結果を18日付の英科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。分析の中心メンバーで、JAMSTEC生物地球化学センターの高野淑識(たかのよしのり)センター長代理(47)=栃木県矢板市出身=は「地球上で生命に不可欠な塩がりゅうぐうに確実に存在することを示している」と意義を強調した。
高野さんは今後の研究に向け「初期太陽系の物質進化をひもとき、地球や海、そして生命誕生の謎に迫る鍵となる発見だ」と期待を込めている。
高野さんが所属する国際共同研究グループはりゅうぐうの砂試料について、複数の方法で液体に溶ける成分を抽出し分析した。りゅうぐうの異なる2地点から採取した砂試料約10ミリグラムを110度の熱水で煮詰めて抽出した成分に、ナトリウムイオンが多く含まれていることが判明した。
この結果は、一部が塩の結晶としてりゅうぐうに存在することを示すと考えられる。小惑星が集積し原始の地球が生まれた際、小惑星そのものから海の塩の元となる物質がもたらされたとの学説に合致するという。
また研究チームは、地球上では確認がほぼ困難な有機硫黄分子群の発見も報告した。大気に触れると変質してしまう同分子群の発見は、はやぶさ2がりゅうぐうから採取した試料に地球上の不純物の混入がないことを示しているという。
今回の発表は21年6月〜22年5月に行われた初期分析の成果にあたる。国際審査などを経て、18日付の科学誌掲載に至った。
はやぶさ2は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機。14年12月に打ち上げられ、19年にりゅうぐうへ着陸。ガスや岩石試料を採取し、20年12月に地球へ帰還した。
りゅうぐうは地球と火星の公転軌道の近くを回る大きさ約900メートルの小惑星。地球が誕生する約46億年前に太陽系の天体にあった物質を構成する元素や化合物の情報を現在まで維持しているとされる。
高野さんは研究を振り返り、「分からなかったパズルが一つ一つ埋まっていく喜びを日々実感している」と語った。
2023-09-19 02:31:55Z
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