とんねるず木梨憲武(61)が、明るくもはかない“お父さん”を演じている。奈緒(28)とダブル主演を務めるカンテレ、フジテレビ系「春になったら」(月曜午後10時)が現在放送中。1月に発売された「みなさんのおかげです 木梨憲武自伝」(小学館刊行)では初の自伝を執筆し、3月には歌手新浜レオンにプロデュースした楽曲「全てあげよう」が発売予定。還暦を超えてなお、多岐にわたって衰え知らずの活躍を見せる木梨がインタビューに応じ、撮影や自身の家族について語った。【望月千草】

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お笑いから音楽やアートまで、多彩な顔を持つ木梨が24年ぶりに主演俳優としてお茶の間に顔を出している。出演を後押ししたのは妻の(安田)成美。「『やるかやらないかは言わないと向こうも困るから。てかやりなさい』と」。家族行事のお正月のハワイ旅行は先延ばし。還暦過ぎでの挑戦に「『本番、よーい』と言われた瞬間、『最初のセリフ何だっけ?』みたいなのも含めて現場が楽しい」と苦難すら笑いに変える姿には、充実感がにじむ。

今作は奈緒(28)演じる娘と、木梨演じる父の家族愛を描く。自身はバラエティー畑が軸だった。「台本のない仕事を中心として、コーナーの説明のペラ1枚で続行しているバラエティーだったんですよ。今みたいなフリースタイルを中心として。(ドラマは)順番に物を言ってストーリーを作って行く。そこに動きが入る」。共演者の演技、制作スタッフの技術。連日、瞳には新鮮な景色が映る。

作中の役は余命3カ月。もし、自分なら? 「いつ何を言われてもおかしくない年代。死んじゃうまでにハワイにいるとか、お葬式じゃなくて『みんなありがとう』っていうパーティーを。あいさつしてまわったら面白いなと」と、役と自身を重ねて“最期”に思いを巡らせた。

木梨も実生活では3人の子を持つ父。木梨家について、成美のことを「うちのリーダー。一家の柱」という。「子どもたちは成美さんに全て相談して、(木梨が)それを少しだけ聞いているというのが現実。成美さんが号令かけて『ご飯だよー』と言ったときは5人がキュッと集まります」と笑う。もし自身の娘が、作中同様に売れない芸人と結婚するとしたら…。「売れてても売れてなくても、いいやつかどうなのかぐらいは成美さんに確認しようと思います」。お笑い界のスターでも“リーダー”の言うことはゼッタイのようだ。

◆木梨憲武(きなし・のりたけ)1962年(昭37)3月9日生まれ、東京都出身。80年に石橋貴明とお笑いコンビ「とんねるず」を結成。フジテレビ系「オールナイトフジ」などにレギュラー出演しブレーク。同局系「とんねるずのみなさんのおかげでした」は人気長寿番組となった。音楽活動では96年に「NHK紅白歌合戦」に出場。音楽、執筆活動の他、アトリエを持ち画家としても活動。現在は、キナシコッカ株式会社代表を務める。妻は女優の安田成美。子どもは2男、1女。

◆春になったら 3カ月後に結婚する娘の椎名瞳(奈緒)と、3カ月後に世を去る父雅彦(木梨憲武)が「結婚までにやりたいことリスト」と「死ぬまでにやりたいことリスト」を実現していく、ハートフル・ホームドラマ。母を亡くし、反発しながらも支え合ってきた父娘のかけがえのない3カ月を描く。脚本はNHK連続テレビ小説「まんぷく」「龍馬伝」などを担当した福田靖氏が手がける。