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Sunday, June 30, 2024

遠く離れた天体の質量は、どうやって測っている?「あの星は太陽質量の10倍です」と天文学者が言える理由(浅田 ... - 現代ビジネス

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時空の歪みとして捉えられた謎の重力波の存在。世界に衝撃を与えたこの観測事実から宇宙誕生に迫る最新の宇宙論を紹介する話題の書籍『宇宙はいかに始まったのか ナノヘルツ重力波と宇宙誕生の物理学』。よく天文学の話題では「あの天体は太陽質量の10倍です」というような言われ方をします。でも、何光年も離れた星の質量をどうすれば測ることができるのでしょうか?宇宙物理学者がその疑問を解説します。

*本記事は、『宇宙はいかに始まったのか』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

単独で存在する星の質量は測れない

天体の質量を測ることは大変難しいことです。とくに単独で存在する場合、その質量が周りの天体の運動に影響しないため、その質量がわからないことがほとんどです。

そこで、天文学で「あの天体の質量は、太陽質量の10倍です」というような場合、どのようにその星の質量を見積もっているのか、その方法を紹介します。

遠く離れた天体の質量を知るにはどうしたらいいのでしょうか。その問題の解決に、「連星パルサー」が大変役に立ちました。ここで、パルサーとよばれる星は、強力な電波を周期的に放っていること、連星とは2つの星が重力でお互いに引きつけ合いながら、互いの周りを公転する天体系と考えてください。

連星系の概念図(図版作成:酒井春)

そこで、1974年に電波天文学者のラッセル・ハルスとジョセフ・テーラーが発見した連星パルサーで行われた推定を元に、パルサーの質量を知った方法を紹介したいと思います。

連星の公転運動が作るドップラー効果に注目

前述のように、連星とは2つの星が重力的に結合した連星系を作っているものです。この連星パルサーは、その後の観測の結果、パルサーからの周期的な電波パルスが規則的に変動していることがわかりました。

また、その変動周期は約8時間でした。つまり、このパルサーは、公転周期およそ8時間で、互いの星をまわっていることになります。

その公転運動によるドップラー効果のため、電波パルスの振動数が変化したのです。

ここで、ドップラー効果とは、観測者もしくは光(あるいは音)の発信者が運動するときに、光(あるいは音)の振動数が変動する現象のことです。日常生活で我々もドップラー効果を体験しています。代表例は、救急車やパトカーなどの緊急車両のサイレンの音です。緊急車両が近づくとき、そのサイレンの音は高く聞こえ、遠ざかるときに低い音として聞こえます。

同様に、連星パルサーからの電波パルスの振動数の変動の大きさは、そのパルサーの公転速度で決まります。

ドップラー効果(図版作成:酒井春)

よって、測定された振動数の変動の大きさから、その公転速度が求められ、その結果は、なんと最大で秒速500キロメートルほどにもなりました。これは、光速のおよそ0.1パーセントです。

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