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Monday, November 1, 2021

お世話になっている「週間天気予報」どうやって出しているか知っている?(古川 武彦、大木 勇人) - 現代ビジネス

「来週、子どもの運動会なんだよな」「今度の週末、バーベキューに誘われていて」そんな時は、どうしたって先の天気が気になるもの。天気予報アプリやテレビとにらめっこしては、当日までハラハラ・ドキドキですね。

昨今の天気予報では、1週間予報や長期予報が当たり前になっていますが、こうした長期的な予報はどのようにして行なっているのでしょうか? 長期予報のメイン手法である「アンサンブル予報」について見てみましょう。

解説してくださったのは、気象コンパス・代表の古川武彦さんと、サイエンスライターの大木勇人さんです。

小さな違いが大きなハズレにつながる!?「カオス」

天気予報の手法のうち、ニュートンの運動の法則や熱エネルギーの保存則、気体の状態方程式、質量の法則などといった高等学校の物理で学ぶ基本的な方程式と、大気の状態の数値だけをもとにして、将来の大気の状態を数値としてはじき出そうとする予報を「数値予報」といい、現在の天気予報の中核をなす手法です。

(数値予報については、〈ビッグデータ駆使のコンピュータ天気予報 その黎明からの歩みと、目指すところとは?https://gendai.ismedia.jp/articles/-/87895)〉も、ぜひご覧ください)

数値予報では、中学校や高等学校で学んだ連立方程式のようにすっきりと解くことはできず、短い時間ごとの変化を数値で計算して加算していく「積分」的な手法で予報の数値を導きますが、すっきり解けないのは、それらの式が「非線形」──方程式中に変数どうしのかけ算の項がある式──だからです。

このように非線形の方程式で表される現象にはカオスが現れます。カオスとは、一般語としては「混沌」を表す言葉ですが、気象においては単に混沌という以上の意味があります。大気現象には「カオス」とか「初期値敏感性」と呼ばれる性質、つまりわずかな初期値の違いで結果が大きく変わってしまうという性質があるのです。

【図】初期値敏感性初期値敏感性(『図解・天気予報入門』より)

10分後の数値計算では初期値のわずかな違いによる結果の違いは小さいですが、それを数十回数百回繰り返すと、結果が大きく違ってきます。1週間後の天気を予報する際には、初期値のわずかな不正確さが増幅してしまい、予報が大きく外れてしまう可能性を示唆しています。数値予報のこの問題を克服して、実用に耐えるように改善した方法があり、アンサンブル予報と呼ばれます。

アンサンブルという手法

せいぜい1週間程度といわれている高・低気圧などの消長に対する予報期間の限界を、通常の数値予報モデルを用いながら大幅にのばそうとする手法がアンサンブル予報です。

アンサンブルという言葉は、全体や全体的効果を意味し、音楽では合奏曲を、服飾では一揃いの婦人服を、また理数関係では集団や集合を表す言葉です。アンサンブル予報は、集団的な初期値を用いることからこの言葉が使われています。

アンサンブル予報は、数値予報の本計算を行う際に、観測誤差と同じ程度の小さな誤差をわざと人為的に与えた多数の初期値の組からなる集団(アンサンブル)を設定します。そして、それぞれの初期値ごとに独立して一定期間(例えば34日間)の予測計算を行い、集団の全予測値の単純平均を求め最終的に発表する予報とするものです。

個々の初期値とそれに対応する予測結果を「メンバー」、また全メンバー(集団)の単純平均を「アンサンブル平均」と呼びます。

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