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Sunday, May 7, 2023

「好きなゲームが日本語で遊べるならお金を払うプレイヤーはいます」“ゲーム翻訳ファンディング”nicolith氏インタビュー【有志日本語化の現場から】 - Game*Spark

「好きなゲームが日本語で遊べるならお金を払うプレイヤーはいます」“ゲーム翻訳ファンディング”nicolith氏インタビュー【有志日本語化の現場から】 - Game*Spark

nicolith氏の代表作『I will blow up THE EARTH MUAHAHAHAHAHAHAHA!!!』

海外のPCゲームをプレイする際にお世話になる方も多い有志日本語化。今回は数多くのビジュアルノベルを手がける有志翻訳者に話を訊きました。お金を出してでも日本語化して欲しいと考えるプレイヤーと、翻訳者やデベロッパーとの間の橋渡しをするゲーム翻訳ファンディングという試みにも注目です。

日本語化とは海外のゲームを日本語で遊べるようにすることです。その中でも、デベロッパーやパブリッシャーによる公式の日本語化ではない、ユーザーによる非公式な日本語化を有志日本語化(有志翻訳)と呼びます。一般的にボランティアで行われ、成果物は無償で配布されます。

有志日本語化には、デベロッパーやパブリッシャーが許可する範囲内で行われるものと、無許可のものがあります。最近はインディーゲームを中心に有志日本語化が公式日本語版として採用される例も出てきています。


連載第23回は、数多くのビジュアルノベルの翻訳を手がける英日ゲーム翻訳者で、ゲーム翻訳ファンディングの発起人でもあるnicolith氏に話を訊きました。

nicolith氏の代表作『q.u.q.』

好きなゲームを広めるために

ビジュアルノベルのテキスト品質はマリオのジャンプ制御と同じくらい重要です

――自己紹介をお願いします。

nicolith氏(以下、敬称略)英日ゲーム翻訳者のnicolithです。公式翻訳として『q.u.q.』『上に天井がある。』など、有志翻訳として『She Vomited Guns』などを手がけています。

――ビジュアルノベルを数多く翻訳していますが、海外のビジュアルノベルにはどんな魅力がありますか?

nicolith海外のビジュアルノベルは日本の00年代前後のビジュアルノベルや『RPGツクール』製ゲームに影響を受けたものが少なくありません。今の日本ではあまり味わえない当時の雰囲気を持った作品も多く、少人数で作られているため制作者の色がわかりやすく表に出やすいのが魅力です。ビジネスとしての成功よりも作品を見て欲しいという情熱がある制作者も多いですね。

――当時の雰囲気を持った作品とはどんなものですか?

nicolithグラフィック、音楽、テキストの三要素がほぼすべてという作品です。ゲームとしてシンプルで、凝った演出や複雑なメカニクスを持ちません。また、ネットミームの多用や、悪ふざけに近い展開なども特徴です。

nicolith氏の代表作『q.u.q.』

――有志翻訳に携わるようになったきっかけはなんですか?

nicolith年末年始に入院したのですが、ベッドでひたすら『VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action』(以下、『VA-11 Hall-A』)をプレイして、「好きなゲームを広めることに貢献できたらなあ」と考えました。そこで以前から好きだったゲーム『Hello Charlotte』シリーズを翻訳しようと思ったのですが、大作かつ作者との連絡がつきにくかったため、『VA-11 Hall-A』の制作者の一人ですぐに連絡のつくKiririn51さんの『She Vomited Guns』が有志翻訳者としてのデビュー作になりました。

――『VA-11 Hall-A』をプレイして好きなゲームを広めたいと思ったのですね。

nicolith自分がプレイしたゲームについて日本語でもっと語り合いたい気持ちと、制作者の懐が少しでも温かくなって欲しい気持ちの両方がありました。大好きな『VA-11 Hall-A』はすでに公式翻訳されていてどちらも関係ないのですが……。

――有志翻訳を始める際に影響を受けた人物はいますか?

nicolith大きな影響を受けた方は3人います。ashi_yuriさん、陽炎01型さん、武藤陽生さんです。

まず、ashi_yuriさんが昨年末に書いた「一から始める海外ゲーム有志翻訳事始め」が大きなきっかけになりました。このブログ記事を読んで「自分にもできるかもしれない」と思ったのです。その後、ashi_yuriさんが有志翻訳した『Momotype』をプレイしたのを機に、ashi_yuriさんには直接助けてもらっています。

一から始める海外ゲーム有志翻訳事始め(はてなブログ)

nicolith陽炎01型さんには「Helltakerほんやく後記」で有志翻訳という世界があることを教えてもらいました。また、陽炎01型さんが翻訳した『連海カジノ』というゲームにドはまりして、「このゲームを広めたい」という気持ちになり、初めてSteamでレビューやガイドを書きました。同作では有志によるLQA(翻訳をゲームに実装して確認する工程)にも参加しています。これらもまた有志翻訳を始める大きな転機になりました。陽炎01型さんには今でも翻訳者としての相談に乗ってもらうなど、お世話になっています。

Helltakerほんやく後記(note)

nicolith武藤陽生さんは『VA-11 Hall-A』の公式翻訳者です。この作品は自分がそもそもインディーゲームに入門したきっかけで、同作のテキストは自分の大きな目標になっています。武藤さんの書いたゲーム翻訳についてのブログは何度も読み返していますし、先日YouTubeで行われた翻訳講座でもお世話になりました。講座は武藤さんが解説しながら講評する形式で行われ、自分を含めて4人の受講者が課題に取り組みました。武藤さんが公開している他の動画もプロの翻訳者の世界を垣間見る良い機会になっています。

ゲーム翻訳おじさんムトウの翻訳ゲーム実況(YouTube)
nicolith氏の代表作『The Coffin of Andy and Leyley』

――公式翻訳も手がけているのに、なぜボランティアで有志翻訳をしているのですか?

nicolith特に理由はありません。もともと翻訳の動機が「好きなゲームを広めたい」ですから。自分の中では「有償・無償」「公式・有志」「プロ・アマ」という区分はすべて独立していて、「有志だから無償」「プロだから有償」という風には考えていません。

――有志が有償で翻訳しても、プロが無償で翻訳しても構わないという意味ですね。

nicolithそうです。もちろん個々人によってポリシーはあるでしょうから、それは好きにすれば良いと思います。この辺をごちゃまぜにして語ると話が見えにくくなるので、自分はこう分けているということです。それに、ゲームをプレイするユーザーからしたらどうでもいいことです。

――これまで実際に有志翻訳を有償で手がけたことはありますか?

nicolith今のところはないですね。機会があれば手がけたいと思います。翻訳者からしたら、お金はどこから出てこようとお金ですから。

――では、有志翻訳に限らず、翻訳に一番必要な能力はなんだと思いますか?

nicolithテキストの意味をきちんと理解して、適切にアウトプットする能力だと思います。具体的に言うと、ゲーム内に存在するすべてのテキストについて、「どうしてこう訳したんですか?」と訊かれたときに答えられる状態にする能力です。

――その状態にするためにはなにが大切ですか?

nicolith自分の意思をもって翻訳することです。原文の理解、キャラクターの人格、ゲームの雰囲気、使われている場面、日本語としての表現、すべてについてです。この辺はビジュアルノベルならではかもしれませんね。ビジュアルノベルにおいてテキストの品質は、『スーパーマリオブラザーズ』におけるマリオのジャンプ制御と同じくらいゲームの楽しみの根幹に関わる重要な要素です。ジャンプの高さが日本だけ妙に低かったらゲームとして話になりませんよね。

nicolith氏の代表作『q.u.q.』

手段としての翻訳

アイデアだけなら、たぶん考えていた人はたくさんいます

――ゲーム翻訳ファンディングという試みを始めたそうですね。デベロッパーと翻訳者とプレイヤーをつなぐ仕組みだそうですが、具体的にはどんなものですか?

nicolith小規模な収益しかない海外インディーゲームデベロッパーは日本語へのローカライズコストを捻出することができず、無償の翻訳に頼るしかない状況です。一方で、世の中にはたとえ食べていけるような報酬ではなくともゲームを翻訳したい翻訳者がいます。また、自分の好きなゲームを日本語でプレイできるならお金を払うプレイヤーもいます。そこで、デベロッパーと翻訳者とプレイヤーの誰もが読み書きできるGoogle スプレッドシートに、翻訳して欲しいゲームタイトルと払っても良い金額を書けるようにしたのが現時点でのゲーム翻訳ファンディングです。

ゲーム翻訳ファンディング(Google スプレッドシート)

――ゲーム翻訳ファンディングを始めたきっかけはなんですか?

nicolithホラーゲームのススメさんが、第三者の立場から投資して『flesh, blood, & concrete』の日本語版を作ったのが直接的なきっかけです。ホラーゲームのススメさんは気になっていたゲームを日本語でプレイしたいと思ったものの英語力も時間もなかったため、制作者と交渉して許諾を得た上で翻訳者を有償で公募し、結果的に日本語版のリリースにこぎつけました。こちらがその時の公募記事です。

有志ゲーム翻訳者様の募集(ライブドアブログ)

nicolith自分としては非常に面白い試みでした。自分は「英語力も時間も能力もないが、お金を出すことでゲームの世界に貢献しよう」という考え方で生きてきましたし、こういうアイデアは考えていました。アイデアだけなら、たぶん考えていた人はたくさんいます。それを実行したのが、素晴らしい試みだと思いました。

nicolith氏の代表作『上に天井がある。』

――ゲーム翻訳ファンディングで想定しているのはプロの翻訳者ですか?

nicolithプロ、アマを問わず翻訳者全般です。有志翻訳者コミュニティには「ゲーム翻訳をしてみたいけれど、どのタイトルを翻訳すれば良いのかわからない」という人が少なからずいるようで、そういう方も想定しています。もちろん、プロで仕事が欲しい方も想定しています。

――対象となるゲームはビジュアルノベルだけですか?

nicolith特に限定していませんが、ゲーム翻訳ファンディングを始めたときに念頭にあったのは自分が翻訳することなので、小規模ビジュアルノベルをイメージしていました。

――プレイヤーがゲームタイトルと支払える金額を書いたあと、デベロッパーや翻訳者とはどのように連携するのですか?

nicolith正直なところ具体的なことはなにも考えていませんが、自分が間に入ってデベロッパーと翻訳者をつなぐ形を想定しています。翻訳者が自分なら話は早いですが、必ずしもその形だけを考えているわけではありません。

――単にスプレッドシートを見てもらって終わりではないのですね。

nicolith見て上手くやってもらえれば良いのですが、海外のデベロッパーが見てくれるとは思えませんからね。また、パブリッシャーがこのスプレッドシートを見て仕事をしてもらっても構いません。自分一人が独占するつもりも、しているつもりもありませんので。今ローカライズされない作品がよりローカライズされるならなんでも良いのです。

――ゲーム翻訳ファンディングに対してどんな反響がありましたか?

nicolithなにも考えずに10分で作った代物ですが、かなりの反響をいただきました。プロの翻訳者や編集者の方が書き込んだり、AUTOMATON誌から取材が来たり、ダイレクトメッセージやメールで応援の声をいただいたりと、今のところ概ねポジティブな反応をいただいています。「誰かが自腹を切ってでも翻訳してもらいたいくらい面白い未翻訳ゲームのリスト」として活用している方も少なくないようです。

「Steamで日本語対応してほしいゲームと、その費用に払ってもいい金額シート」が作成され、さっそく盛況。作成者に聞いた“本当の狙い”(AUTOMATON)

――ネガティブな反応はありましたか?

nicolith記憶している限りはないですね。自分の中では色々なリスクを思いついているので、ネガティブな反応も少なからずあるかと思っていました。一種のお祭りとして盛り上がっていただいたのだと思いますし、だからこそなにか成果につなげたいと考えています。

nicolith氏の代表作『She Vomited Guns』

――金銭が関係するだけにトラブルも予想されますが、万が一トラブルが起きた場合の解決策は考えていますか?

nicolithこの辺りがまさに具体的に考えていない部分ですね。翻訳品質と出資者の期待をすり合わせる必要があって、解決策は以前のインタビューでトマトジュースさんが述べていた投げ銭の考え方に近いものになると思います。まずはトラブルを起こさないことが大事なんでしょうね。

――完成した翻訳が出資者の期待を下回るとトラブルが起きると考えているわけですね。

nicolithその通りです。パブリッシャーやエージェンシーを別にすれば、通常はデベロッパーと翻訳者の間だけで契約が成立しており、なにがあろうと二者間で話し合えば済むわけです。ゲーム翻訳ファンディングの場合はそこに出資者という形で第三者が入ってくるため、出資に対するリターンを明確にした方が良いでしょう。これは金銭という意味でも、権利という意味でもです。

――既存のクラウドファンディングの仕組みを応用することは考えていますか?

nicolith既存のクラウドファンディングの流れに乗せる方が良いものもあると思います。特に小口で大量の出資者がいるケースですね。既存の仕組みが使えるなら使った方が良いと思いますし、デベロッパーやパブリッシャーがクラウドファンディングを行えば、ほぼ同じことがスムーズにできると思います。

――ゲーム翻訳ファンディングが最終的に目指しているものはなんですか?

nicolith基本的には、今ローカライズされないゲームがよりローカライズされることです。副次的な効果として、翻訳者の待遇改善や言語の壁をより薄くすることなども考えられますが、あくまで副次的な効果です。

――ゲーム翻訳ファンディングをビジネスにすることは考えていますか?

nicolithぼんやり考えています。上手くいけばビジネスになるでしょうし、ビジネスにしないと上手くいかない気もします。自分はゲーム翻訳者として生計を立てていく予定ですが、別に翻訳だけをやりたいわけでもないので、もう少し上の工程に関わりたいという気持ちがあります。翻訳はあくまで好きなゲームを広める手段と言った方がわかりやすいでしょうか。ゲーム翻訳ファンディングもあくまで手段です。

――好きなゲームを広めることが最終目標なのですね。

nicolithゲーム翻訳ファンディングは思いつきで始めたことなので、これをビジネスにする意図があったわけではありませんし、誰かがこれでビジネスをするのを妨げるつもりもありません。繰り返しますが、パブリッシャーや翻訳者がこれをもとに営業をしても構わないのです。

nicolith氏の代表作『HOPE LEFT ME』

開発者との二人三脚

有償だから、プロだから、公式だから品質が高いという考え方はしていません

――有志翻訳であれ公式翻訳であれ、翻訳を始める際、デベロッパーからはどのように許諾を得ていますか?

nicolithメール、Twitterのダイレクトメッセージ、公式Discordサーバー、Steamのスレッドなど連絡しやすいところで許諾を得ています。たいてい公開されている場所で許諾をもらっているので、少し調べればその時のやり取りが出てくるはずです。例えば、『shita ni』はSteamのスレッドで翻訳の可否を尋ねたので、誰でもその様子を見ることができます。

――許諾は簡単に得られますか?

nicolith自分は断られたことがありません。『tomorrow won't come for those without ██████』だけはまだ許諾を得られていませんが、これはそもそも制作者のetheraneさんに連絡がつかないという事情があります。また、パブリッシャーはたいてい反応してくれないので、あてにしていません。

――デベロッパーとのやり取りで苦労したことはありますか?

nicolithありません。連絡がつかなくて苦労するくらいですね。強いて挙げれば、世界各国のデベロッパーと同時にやり取りしているので、時差で死にそうになることはあります。基本的にテキストでやり取りしているので無理せず対応すれば良いのですが、午前1時や2時に相談が来るとつい答えて盛り上がってしまいます。

――公式翻訳を手がけて考え方が変わったことはありますか?

nicolith公式だと責任が重くなると言う方もいますが、自分はスタンスが変わっていません。翻訳の品質や速度、リリース後の修正対応などは、「有償・無償」「公式・有志」「プロ・アマ」の区別とは関係なく、個別の事情に応じてデベロッパーと翻訳者の間で合意があればそれで良いと考えています。言い換えると、「有償だから品質が高い」「プロだから品質が高い」「公式だから品質が高い」という考え方はしていません。

nicolith氏の代表作『She Vomited Guns』

――パブリッシングの支援も行っているそうですが、どんな活動ですか?

nicolithストアページ、デモ、プレスリリースは基本的に無償で翻訳しています。そのほか、日本のユーザーからのフィードバックをデベロッパーに伝えたり、逆にデベロッパーから日本のユーザーへのアナウンスをしたりといった活動です。

――支援するのは自分が翻訳に関わった作品だけですか?

nicolith前者については関わったかどうかに関係なく支援しています。

自分が関わる小規模ビジュアルノベルは、日本市場でどれだけ収益が見込めるかの予測が難しく、予算を立てにくいという事情があります。もちろん、比較的ローカライズコストの高いジャンルでもあります。そのため、海外のデベロッパーや翻訳者から「これ、日本で売れるかな?」と相談を受けることがあります。

――そんなときはどう答えるのですか?

nicolith自分も数字で答えられるわけではないので、「とりあえずストアページ、デモ、プレスリリースを翻訳して反応を窺おう」と提案することが多いです。ここでお金の話を始めると話が進まなくなるので、まずは無償で行うことにしています。

――そのような理由で無償なのですね。

nicolith海外のビジュアルノベル制作者は日本のビジュアルノベルが好きな場合が多く、日本語への翻訳には特別な感情がある人も少なくありません。だからと言ってお金はお金ですし、制作者に無理な負荷を強いたくもありません。だから、少しづつ一緒にリスクを背負うことにしています。

nicolith氏の代表作『Cat Named Spirit』

――ビジュアルノベルを翻訳する上で特に難しい表現はありますか?

nicolithこれと言った表現はありませんが、キャラクターの性別や年齢などは常に強く確認するようにしています。brotherやsisterの訳し分けはわかりやすい例ですね。

――セリフの語尾はどのように翻訳していますか?

nicolith口に出してみて違和感がないこと、いわゆる役割語を使わず自然なセリフにすることを大事にしています。役割語というのは、「なの」「だわ」などの女性語や、「じゃ」のような老人語で、その言葉を使うことでキャラクターの属性を端的に示せる言葉です。

――翻訳がゲームに正しく反映されているかのチェック(LQA)はどうしていますか?

nicolithゲームに翻訳を組み込んで実際にプレイするLQAをしています。LQAをせずに痛い目を見たこともあります。自分が扱う小規模ビジュアルノベルは十中八九ゲームエンジンにRen'Pyか『RPGツクール』を利用していますが、これらは翻訳を自分で簡単に組み込めるので翻訳の途中でも死ぬほどLQAを行っています。

――テキストの量が膨大なビジュアルノベルで実際にゲームをプレイするのは難しくありませんか?

nicolithこれには一長一短あって、量は膨大ですが確認が難しいテキストは滅多にありません。スキップ機能もありますし、面倒なのは分岐でセーブデータを分けることくらいです。『ゆめにっき』スタイルの『shita ni』はそもそもクリアが難しすぎて大変でした。

――翻訳にはどんな辞書やツールを利用していますか?

nicolith辞書はLongman DictionaryUrban Dictionaryなどオンラインで済ませています。ツールはVisual Studio CodeGoogle スプレッドシートなどです。

――翻訳を行う上で機械翻訳はどんな役割を果たしていますか?

nicolith機械翻訳は基本的に使っていません。機械翻訳に反対する立場ではありませんが、ビジュアルノベルだとほぼ使えないのです。『q.u.q.』は原語がロシア語で、ロシア語から英語に翻訳されたテキストを自分がさらに日本語に翻訳したのですが、ロシア語の原文をざっと読むのに機械翻訳を使っています。気になるところは辞書と文法書とにらめっこして確認しました。

――翻訳をしていて一番嬉しいことはなんですか?

nicolithプレイヤーからのフィードバックを制作者と共有して一緒に盛り上がるのがいつも一番嬉しいです。『shita ni』のときは一緒にプレイ動画の配信を見たこともありました。個人開発者と直接取引しているので、他の翻訳者に比べて距離感がかなり近いのだと思います。リリース後も普通に知り合いとして話したり、ちょっとした翻訳をしたりしていますしね。一方で、ローカライズ予算をどう捻出するかはいつも開発者と一緒に苦労しています。

nicolith氏の代表作『上に天井がある。』

――これから有志翻訳を志す方へ一言アドバイスをお願いします。

nicolith自分も有志翻訳を始めて2ヶ月ちょっとですが、まあ気楽にやりましょう。たとえ品質が悪かろうが、速度が遅かろうが、有志なら翻訳されないよりはいいので。先人の知恵も、コミュニティもあるので、気軽にご相談ください。困ったらやめればいいんです。

――有志翻訳者としてゲーム開発者やゲーム業界に伝えたいことはありますか?

nicolithゲーム業界は翻訳者をクレジットに入れて言及許可を出すようにしてください。ゲーム開発者は元気に仲良く自分を大事にやっていきましょう。あなたの作るゲームよりも、あなた自身が大切なのですから。誰にとっても。

――本日は貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。


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2023-05-07 09:30:03Z
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