「終活」や「相続」について考えていますか? 大切な人や社会のために財産を役立てたいけれど、何からやればよいか迷っているという人も多いのではないでしょうか。そんなあなたのために、遺贈寄附推進機構代表取締役の齋藤弘道さんが今すぐ役立つ終活の基礎知識やヒントを紹介します。人生100年時代と言われていますが、人はいつ死ぬかわかりません。子どものいる人でも事故や病気で突然死する可能性はありますが、おひとりさまの場合、特に気をつけておくことはあるのでしょうか。
60代のおひとりさまが突然死すると…
このシリーズでは「おひとりさま」を「子どものいない人」と定義しています。数年前、40代の女性から「叔父(おじ)の相続のことで相談に乗ってほしい」と連絡がありました。叔父は60代前半で独身。大動脈解離が原因で突然、死亡したそうです。大動脈解離とは、大動脈の内側に亀裂が入り、その裂け目から血液が流れ込んで大動脈の壁を引き剝がす病気です。突然、激痛とともに命にかかわる重大な症状が起きることが多いようです。
叔父は一人暮らし。おそらく自分で救急車を呼べず、自宅でそのまま亡くなってしまったようです。近所付き合いは少なく、親戚とも疎遠だったため、死亡後1カ月ほどたってから遺体が発見されました。
「事故物件」になった自宅 売却もできず
叔父の自宅がいわゆる「事故物件」となってしまったので、特殊清掃や遺品整理が大変でした。自宅を売却するためには、法定相続人全員による遺産分割協議で自宅を引き継ぐ人を決める必要がありますが、相続人の中に行方不明者がいて、すぐに遺産分割協議もできませんでした。
そこで「不在者財産管理人」の選任を家庭裁判所に申し立て、不在者財産管理人を含めて遺産分割協議を行いました。が、不動産の売却は不在者財産管理人の権限外行為です。家庭裁判所の許可が必要なのですが、売却の必要性などの問題から不許可となってしまい、結局、叔父の自宅を売却することができませんでした。
60代前半ですから、叔父は自分が近い将来に死ぬとは考えていなかったと思います。もし叔父が遺言書を作成し、例えば「姪(めい)に相続させる」としておけば、姪(相談者)が自宅を引き継いで売却することもできたでしょう。
また、叔父は葬儀やお墓の準備もしていませんでしたので、姪がすべて手配することになりました。叔父は自分が突然死することを想像していなかったと思いますが、結果的に姪に大きな負担をかけることになってしまいました。
60〜70代の男性の孤立死が多い東京
自分が60代で死亡すると考える人は少ないと思います。しかし、孤立死=「誰にもみとられることなく、亡くなった後に発見される死」とすると、東京都でその割合が一番多いのは60〜70代の男性です。数年前までは、70代よりも60代の方が多い傾向がありました。80代以上の年齢になると、老人ホームに入所したり在宅介護を受けたりして、周囲にケアする人がいるからなのか、孤立死の割合は減少しています。人生100年時代にあって、60代は十分若い部類に入りますが、特におひとりさまは孤立死のリスクを意識しておいた方が良さそうです。
また、東京23区内における一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数(孤立死と考えられる事例)は年々増えています。60代〜70代の男性に限らず、全体として増加傾向なのです。全国でも、一人暮らしの60歳以上の人の約50%が「孤立死を身近な問題と感じる」と答えています。
孤立死を防ぐには? さまざまな「見守りサービス」
自分自身が孤立死する前に発見されて生還する、最悪の場合でも死後数日内に発見されるためにはどうすれば良いのでしょうか。その方法をいくつかご紹介します。
自治体のサービスを利用する
・ご近所福祉スタッフなどボランティアによる見守り
・近隣住民と協力しながら地域で相互に支え合う
・事業者(新聞、ガス、電気、水道、生協等)との連携
・機器(人感センサー、福祉電話、タブレット端末等)による安否確認
企業等の訪問サービスを利用する
・宅食サービスでの安否確認
・牛乳配達時の安否確認
・ヤクルト配布時の安否確認
・ホームヘルパーによる生活状況の確認
企業の見守りサービスを利用する
・ホームセキュリティー会社の安否確認サービス
・郵便局のみまもりサービス
見守り家電製品を利用する
・象印マホービンの「見守りポット」(みまもりほっとライン)
・見守り電球「ハローライト」
・見守り冷蔵庫
・生活家電に取り付ける専用センサー
・見守りカメラ
・会話ロボット
・スマホの見守りアプリ
サービスによって、見守られる側のプライバシーに配慮する必要があるものもありますし、機能や料金もさまざまです。自分にあったものを探してみてはいかがでしょうか。
「孤立死」と「孤独死」は違う
実は孤立死や孤独死に明確な定義はありません。ただ、「誰にもみとられずに一人で死ぬこと」は共通ですが、孤独死より孤立死の方が「家族や地域住民との関係が希薄で社会から孤立した状態での死亡」の意味を含んでいます。
孤独死は誰にでも起こり得ることで防ぎようもありませんが、孤立死は防ぐことができます。上記で紹介したサービスを利用する方法もありますが、一番の対策は「多様なコミュニティーやネットワークづくり」と「社会参加する意思」でしょう。誰にも迷惑をかけない生き方も良いのですが、人生100年時代を生き抜くためには、お互いもっと人に頼って生きても良いのではないでしょうか。
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この連載について / 今すぐできる終活講座
「終活」や「相続」について考えていますか? 大切な人や社会のために財産を役立てたいけれど何からやれば良いか迷っている…。そんなあなたのために専門家が今すぐ役立つ「終活」の基礎知識やヒントをご紹介します。
からの記事と詳細 ( 人はいつ死ぬかわからない おひとりさまの「孤立死」を防ぐ方法 - 朝日新聞デジタル )
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