世界中のビジョナリーや起業家、ビッグシンカーがキーワードを掲げ、2024年の最重要パラダイムを網羅した恒例の総力特集「THE WORLD IN 2024」。ハーバード大学で地球外文明の証拠を探索するプロジェクトを主導するアヴィ・ローブは、太陽系外から飛来してきた隕石に注目し、太平洋で本格的な調査を進めるという。
わたしたちには、天の川銀河に隣人が住んでいる可能性を無視して暮らす傾向がある。とはいえ、大半の星は太陽より数十億年も前にかたちづくられているのだ。地球に似た何十億という惑星で技術開発が進んだ可能性に賭けるなら、この100億年の間に少なくともひとつの文明に宇宙船を製造する力があったとしてもおかしくはないだろう。もしそうした文明が、(人類がそうであるように)軍事ではなく宇宙探索に毎年2兆ドル(約300兆円)を費やしていれば、1世紀のうちに何度か、太陽を含む天の川銀河のすべての星に向けて探査機を打ち上げることができたはずだ。
多くの科学者たちのあいだで主流になっているのは、知的な地球外文明の存在を主張することは「常軌を逸して」おり、「常軌を逸した証拠」が見つかるまで真剣に研究する価値はないという考え方だ。そう考える科学者たちは証拠の探索に着手していないので、地球外生命体がいないという言い分は自己成就的予言のようになっている。
物理学者エンリコ・フェルミが指摘したパラドックス「地球外生命体が存在する可能性は高いのに、なぜ遭遇しないのか?」に対する答えはこうだ。「隣人の存在を調べるには、望遠鏡を使うか、通りから飛んできたものが裏庭にないか調べればいい」。
わたしがハーバード大学で過去2年にわたって主導したガリレオ・プロジェクトでは、まさにそれを実行した。詳細は8つの査読済み論文にまとめている。
太陽系に飛来した謎の天体
天文学者らはすでに、太陽系外から飛来してきたふたつの天体を発見しており、それらはわたしたちのよく知る小惑星や彗星、隕石には似ていない。2017年10月に発見された、サッカー場ほどの大きさの恒星間天体「オウムアムア」の円盤状の形状と、重力を無視した加速がその例だ。
実際に、初めて認識された恒星間天体は14年1月に地球に落下している。ガリレオ・プロジェクトの今後の太平洋での調査目的は、この隕石「IM1」が地球外文明の宇宙船由来の遺物かどうかを調べることにある。この50cmほどの物体がつくりものだと考えられたのは、 米航空宇宙局(NASA)の地球近傍天体研究センター(CNEOS)のカタログに掲載されている272個のどの隕石よりも物質強度が高いうえに、22年3月1日にアメリカ宇宙コマンドがNASAに送った公式書簡のなかで、99.999%の確率で太陽系外にその起源があると正式に認められたことが理由だ。
宇宙の隣人に関するニュースは、米国政府の諜報機関や国防機関から発信されることもある。敵国がドローンや偵察バルーン、弾道ミサイルを飛ばしてきた場合に備え、空から降ってくる物体を識別する任務を負っているからだ。つまり政府機関は、地球外技術文明からわたちたちの宇宙の裏庭に送られた物体に関する、未確認空中現象(UAP)の驚くべき形跡に気づく可能性があるということだ。
わたしの予想では2024年に、地球外文明の技術的遺物に関する議論の余地のない証拠が見つかると思う。そうした証拠は、ガリレオ・プロジェクトが発見するかもしれないし、米国政府が発見するかもしれない。もしそうなれば、バイデン大統領の24年の一般教書演説に、この驚くべき新事実が盛り込まれることを心から願っている。
アヴィ・ローブ|AVI LOEB
天文学者。ハーバード大学ブラックホール・イニシアチブ創設者兼所長。ハーバード・スミソニアン天体物理学センター理論計算研究所所長。21年に始動した、地球外文明の証拠を探索するガリレオ・プロジェクトを主導している。
TRANSLATION BY ERIKO KATAGIRI , LIBER/EDIT BY ERINA ANSCOMB
雑誌『WIRED』日本版VOL.51
「THE WORLD IN 2024」
アイデアとイノベーションの源泉であり、常に未来を実装するメディアである『WIRED』のエッセンスが詰まった年末恒例の「THE WORLD IN」シリーズ。加速し続けるAIの能力がわたしたちのカルチャーやビジネス、セキュリティから政治まで広範に及ぼすインパクトのゆくえを探るほか、環境危機に対峙するテクノロジーの現在地、サイエンスや医療でいよいよ訪れる注目のブレイクスルーなど、全10分野にわたり、2024年の最重要パラダイムを読み解く総力特集!詳細はこちら。
2024-01-12 06:00:00Z
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